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プレスリリース
WSC

第7回「世界半導体会議(WSC)」共同声明
半導体産業における公正かつ効果的なアンチダンピング措置
- 世界半導体会議(WSC)の原則及びWSCの政府・当局に対する提言 -
(2003年5月15日)


1. 序文
WSCのメンバーは、国内の法的手続、政府・業界の協定、WTOなど、さまざまな場所や状況におけるADの問題について豊富な経験を持っている。また、AD問題は、WSC 設立合意書でも取り上げられるなど、WSCの後援を受けて検討されてきた。WSCは、半導体にとってAD問題が常に重要であるとともに、その重要性がますます大きくなっていることを認識し、1998年4月17日にカールスバッドで開催された会議において、JSTCにアンチダンピングタスクフォースを設立することに合意し、JSTCに以下を委任した。

  • ダンピングの原因評価
  • 世界各国政府に対して半導体産業における公正かつ効果的なAD対策を求める提言をまとめること

WSCは、JSTCの提言にもとづき、以下の基本原則を了承する。

  • GATT 第VI 条及び WTO AD協定に沿って国内・地域法で取り組まれている不正なダンピングは、有害かつ不当な貿易行為であり、非難されるべきものである。企業は競争力を改善するために不正なダンピングを利用してはならない。
  • JEITA、ESIA、KSIA及びSIA(またはその前身団体)で締結されたデータ収集協定からも明らかなように、業界は、不正なダンピングの回避、及び国内AD法の迅速かつ効果的実施の重要性を認識している。
  • 1996年の日米半導体“共同声明”からも明らかなように、それぞれの政府も、不正なダンピングの回避、及びGATT第VI条やWTO AD協定と整合性がある国内AD法の迅速かつ効果的実施の重要性を認識している。
  • 将来を見据えた場合、AD法が、政府・当局、特に開発途上国の政府・当局に誤用されないことが重要である。

半導体の製品と生産工程には次のような独自性がある。

  • 半導体は世界各地で生産され貿易されている。
  • 半導体製品はライフサイクルが短い。
  • 半導体には多くの研究開発や資本投資を必要とする。
  • 半導体は比較的廉価で簡単に輸送されている。

WSCは、政府・当局に対して行う提言が半導体のみに関連するものであるべきか一般的に適用できるものであるべきかにかかわらず、独自に半導体に注力する。

WSCは、ドーハの閣僚宣言は、GATT第VI条及びWTO AD協定で規定された“規律の明確化と改善を目指して”AD問題の交渉に当たりつつ、“これらの協定、その手段や目的の基本概念や原則、有効性を維持すること”をWTO加盟諸国に求めるものであったと認識している。ドーハ閣僚宣言は、“貿易歪曲的行為に関する規律”に関するこの委任交渉に盛り込まれている。WSCは、WTOの閣僚宣言とJSTCに対するWSCの委任が目指している目的には整合性があると考えている。

以上述べた事柄、WSCのメンバーの経験、並行するWTO加盟国の行動、カールスバッドで出されたWSCの指示を背景として、JSTC加盟各社の代表者で構成され、顧問弁護士が支援するタスクフォースは、半導体産業に関係がある公正かつ効果的なAD対策に関する以下の原則及び提言について合意に達し、ここに各国政府・当局に提言する。


2. 原則及び政府・当局に対する提言
2.1市場原理に基づく競争: WSC設立合意書にも記載されている通り、市場における成功を決める主たる要素は、半導体生産者の競争力であるべきで、貿易歪曲的行為であってはならない。
 
2.2半導体産業の独自性: 序文でも言及しているように、政府・当局の行うAD調査においては、半導体製品と生産工程の独特の特徴を考慮すべきである。
 
2.3WTO協定上の権利・義務との一致: WTO加盟国の政府・当局は、WTOを設立するマラケシュ協定の署名者として、自国の国内法、規則、行政手続きが、AD協定などのWTO諸協定で定められた権利・義務に即したものであるようにすべきである。
 
2.4国家主権の尊重: WTO/GATT制度の根本原則は、WTOルールと合致する範囲で、国家・地域当局が自らの法規の形式や内容を決定する能力を維持することであり、この原則は維持すべきである。
 
2.5公正性と有効性
  
 
2.5.1本書でも述べられているように、アンチダンピング・ルールは、半導体産業の独自性を考慮し、公正の原則を強化するように改善及び明確化がなされるべきである。
 
2.5.2ダンピングに対する効果的な救済が確保されなければならない。
 
2.6ルールの明確性: 政府・当局によるAD決定の基準と手続きは明確かつ予測できるものであるべきである。
 
2.7ルールの透明性: 政府・当局によるAD決定の基準と手続きは透明であるべきである。
 
2.8ルールの客観性: 政府・当局によるAD決定は、客観的基準をもとに行うべきである。
 
2.9救済措置の迅速性: AD手続の所要日程は、半導体産業のダイナミクスに即したものとすべきである。
 
2.10所要日程の短縮: 暫定的及び最終的救済が認められるか否かの決定は 迅速に行われることが望ましい。調査の所要日程は短縮すべきであるが、全当事者が対応し参加できる時間的余裕は確保しなければならない。政府・当局には、所定の期間内に最終決定を行うために必要な資源の確保が望まれる。原則として、最終決定が出るまでの所用期間は9ヶ月を目標とする。調査のみではなくレビューを行う場合、所要期間の短縮が望ましい。
 
2.11措置の遡及的適用: 政府・当局は、適用可能である場合には、AD協定第10条6項の基準が満たされる範囲で措置を遡及的に適用すべきである。
 
2.12将来的な損害の回避: ダンピングに対する対抗措置は、以下の事実が証明された場合に実施することができる。即ち、ダンピングにより国内産業に実質的な損害を生じたか、実質的な損害が生じるおそれがあるか、あるいは国内産業形成を実質的に遅らせている場合である。
 
2.13非市場経済国
 
 
2.13.1効果的なAD措置: 非市場経済国からの貿易を取り扱う場合、AD措置を有効たらしめるためには、非市場経済国のコスト計算に当たって、現行のWTO加盟国に認められている、代替国(第三国)の要素コスト及び価格を使用する権利を維持する必要がある。
 
2.13.2市場経済志向部門: 政府・当局 が、非市場経済の一部門を市場経済志向である(ひいては非市場経済国のADルールの適用外となる)と考える場合、政府・当局には、その部門の企業の生産コスト計算に当たって、それらの企業に供与された措置の対象となる補助金を分析し計上することを認めるべきである。
 
2.13.3市場経済への移行: 経済全体が市場経済に移行したと認識された場合、 政府・当局には、それまで企業に供与された措置の対象となる補助金を分析し計上することを認めるべきである。
 
2.13.4二重計算の禁止: 全ての場合において、相殺関税及びAD案件における補助金の二重計算は避けなければならない。
 
2.14損害の脅威: 半導体産業は独自であり、特に急速に生産能力拡大時には、将来の損害を回避するよう政府・当局 が特に注意をする必要がある。
 
2.15第三国に関する効果的な世界的救済措置: 第三国市場における半導体のダンピングに対する公正かつ効果的な救済策が必要である。
 
 
2.15.1政府は、政府・当局がAD協定第14条に則って第三国におけるダンピング調査を実施するのに必要な枠組みを整備すべきである。
 
2.15.2(要請を行っている第三国でダンピングや半導体産業に対する損害が証明された場合)政府・当局は、調査を開始し関税を課すために、AD協定第14条にもとづいて第三国の政府・当局が行うAD措置を求める要請を前向きに検討しなければならない。AD協定では、要請対象国の産業に損害があるとする判断は必要とされない。
 
2.15.3WTOにそのような手続を持ち込む義務はないものとすべきである。
 
2.16迂回防止: 迂回は、救済の効果を損ねるため回避されなければならない。AD措置の迂回に対応する公正かつ効果的な救済策が必要である。迂回に関する基準は、現実の市場や生産環境に従って明確かつ公正に定義されるべきであり、また迂回の調査や迂回への対応に当たってのいかなる手続きも、政府・当局によって透明な方法で適用されるべきである。
 
2.17同種製品の定義: AD調査における政府・当局による同種製品の定義は明確であるべきである。
 
2.18AD目的からの原産地: 半導体デバイスが、HS コード 85.42.10, 21及び85.42.29に該当する場合、AD分析という目的の為にはウエハー製造(拡散工程*)で原産国を決めるべきである。前述のHSコード製品は比較的単純であるが、その他の半導体製品が非常に複雑多岐にわたっている事を考慮すると、これらの製品に関する原産地が組立方式かウエハ製造工程(拡散工程)か、とのリコメンデーションは行なわない。AD当局は適宜原産地規則を組立又はウエハ製造工程(拡散工程)か自由裁量により設定できる。

(注)「ウエハ製造工程」の言葉は材料準備段階からメタライゼーションの工程を示す。「拡散工程」はウエハ製造工程の1つの工程であり、種々の原産地関連事項では、往々にして「ウエハ製造工程」と同義語として使用されている。

 
2.19会計基準: 特に実際の生産コストの決定についてはWTOルール(特にAD協定2.2.1.1.)を採用すべきである。
 
2.20質問事項の統一: AD手続における当事者の事務的な負担を最小限にするため、国・地域で所定の質問事項の統一について検討することが望ましい。これには、共通の製品コード、識別内容、メモリの輸出/輸入/販売量のメガビット換算などが含まれる。将来AD案件が生じた場合、適切であれば、当事者またはWSCのメンバーが、そうした項目の統一を政府・当局に提案することができる。
 
2.21WTOの紛争解決手続の透明性: 条件として、全て迅速に公表すべきである。対象手続の当事者は全員、各国政府・当局の指示に従うことを前提として、全面参加が認められるべきである。
 
2.22第15条で規定されている自由裁量: 政府・当局は、半導体産業の特殊な事情(特に多額の資本投資)を考慮し、いかなる国に対してもAD協定第15条を適用するか否かの判断においては全面的な自由裁量を維持すべきである。
 
2.23機密情報の取り扱い: ADに関する手続ルールは、機密情報の保護及び競合他社や第三者への非公開を確保するものでなければならない。また、機密情報として提出された情報のAD手続範囲外での無断使用は一切禁止しなければならない。政府・当局は、相手方政府・当局によるAD協定第6条5項の守秘義務違反があった場合には、その結果について交渉に努めるべきである。
 
2.24結果の開示: 政府・当局は、提出する情報の極秘性を正当に尊重しつつ、ダンピングのマージン、及び損害がある場合には損害の判断に関連して行った計算について、AD手続の各当事者に開示すべきである。政府・当局は、かかる計算の事務的な間違いを迅速に是正する妥当な手順を整備すべきである。
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