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プレスリリース
EECA-ESIA JEITA KSIA SIA TSIA

第7回「世界半導体会議(WSC)」共同声明
(2003年5月15日:フランス、ニース)
欧州半導体産業協会(ESIA)
(社)電子情報技術産業協会(JEITA)
韓国半導体産業協会(KSIA)
米国半導体工業会(SIA)
台湾半導体産業協会(TSIA)


    本日、欧州半導体産業協会(EECA-ESIA)、(社)電子情報技術産業協会(JEITA)、韓国半導体産業協会(KSIA)、米国半導体工業会(SIA)及び台湾半導体産業協会(TSIA)のメンバーは、ニース(フランス)にて「第7回世界半導体会議(WSC)」の会議を開催した。本会議は、1999年6月10日に開催された第3回WSC会議で承認された「新世界半導体会議設立に関する合意」に基づき開催された4回目の会議となる。

    WSCは、情報通信製品・サービスの世界市場拡大、公正な競争の促進、技術革新の促進、健全な環境・安全対策の推進といった半導体産業における世界的な関心事項に取り組むことを目的として、環境対策、安全・保健、知的財産権保護、貿易と投資の自由化及び市場開発等の分野における協力を推進している。WSCの活動は、世界貿易機関(WTO)ルールとWSCメンバーを構成する業界団体の国・地域で定められた法律に基づき、公正であることと市場原理を尊重することを前提として実施している。また、WSCでは、市場は開放されかつ競争的であるべきことを確認した。本会議には、独占禁止法弁護士も出席した。

    会議は、インフィニオンテクノロジーズ AG(EECA-ESIA)のウルリヒ・シューマッハ氏によって議事が進められ、各国業界団体を代表して、NECエレクトロニクス株式会社・戸坂馨氏(JEITA)、三星電子の李潤雨(ユン・ウ・リ)氏(KSIA)、マイクロンテクノロジーのスティーブン R. アプルトン氏(SIA)、TSMCのモーリス・チャン氏(TSIA)から開会の挨拶があった。

    会議には下記事項に関するレポートが提出・検討され、これらに関する活動が承認された。

    1. WSCメンバー
    WSCは、中国半導体行業協会(CSIA)へWSCへの参加を呼びかけており、条件が整った段階で直ちにCSIAが参加することを歓迎するものである。

    2. 世界的な環境保護を目指した協力体制
    WSCは、健全かつ科学的根拠に基づく積極的な環境対策を推進することを表明している。また、半導体業界は、地球環境の保護に多大な貢献をしており、WSCメンバーも地球環境保護に向けて積極的に活動している。

      (2a)PFC排出削減

      WSCメンバー企業は、引き続き、PFC排出削減に向けた努力を行う。そのためにJEITA、EECA-ESIA、SIAは1995年を基準年として、KSIAは1997年を基準年として、TSIAは1998年(1997,1999年の平均)を基準年として、PFCの排出を2010年で少なくとも10%削減することを確約している。WSCは、プログラムの開始以来、目標値を下回っており、所定の約束を果たすことを目指している。

       
      (2b)省エネルギー

      2002年WSC会議で、省エネルギー分野の作業の道筋を示す「省エネルギーコンセンサスペーパー」が採択された。このペーパーは、半導体業界がこれまで成功してきたことの理由の一つが、消費者に対するコストを大幅に減らすと共に環境により優しく、より優れた製品を供給出来たことにあるとの認識を示したものである。エネルギー資源の効率的な使用は、半導体製造メーカ及びサプライヤー双方の製造コストを継続的に低減する上で重要な要素である。WSCは、省エネルギー問題を世界の半導体分野における環境問題の重要課題として取上げ、世界の半導体製造メーカ間における協力を推進し、情報を共有することを決定している。

      エネルギー削減という目標の達成においては、半導体業界の戦略的サプライヤーが重要な役割を果たすことになる。そのため、本件についてはサプライヤー間での検討が継続される。また、半導体業界は、エネルギー削減の共通の測定基準を採択し、各工業会からデータの収集を開始している。

       
      (2c)化学物質の管理

      WSCは引き続き、化学物質管理の活動を継続する。WSC環境・安全(ESH)タスクフォースでは今後の課題を検討してきた。化学物質のリスク評価、汚染防止及び環境・安全の法制化に関する調査等がその内容である。ESHタスクフォースは、汚染防止に向けた努力として、まずは対象とすべき化学物質を明らかにしている。

       
      (2d)他の環境・安全(ESH)問題

      WSCは、環境保護のために数値目標を設定することを確認し、実施可能な目標を絞り込んで2004年2月に確立するようESHタスクフォースに指示した。

    3. 自由で開放された市場
    WSCは、設立以来、市場は差別なく開放され、オープンであること、また企業と製品の競争が産業の成功と国際貿易を決定付ける重要な要因であることの重要性を認識している。また、WSCは、世界市場における知的財産の適切な保護の必要性を積極的に支持してきた。こうした原則は2003年の会議でも確認された。

    経済発展に半導体を利用したIT製品の利活用が活発になっている。IT製品は生産性を向上させ成長を促すものである。このため、ドーハ開発アジェンダは、半導体やIT製品をより入手しやすくし、これらの分野への投資を促進するものでなければならない。政府/当局は、知的財産の全面的保護、政府の施策と規制の完全な透明性の確保、全ての市場における外国製品の差別撤廃、技術移転を条件とした投資制限の抑制を実施し、世界中の消費者が情報技術(IT)の恩恵を享受できるよう、情報技術協定(ITA)未加盟の国々にも加盟を促すべきである。WSCは中国とエジプトが情報技術協定(ITA)加盟し、合計で59カ国となったことを歓迎する。

      (3a)全ての製品に対する内国民待遇

      世界貿易機関(WTO)は、製品に対する内国民待遇を保証しており、あらゆる企業はこれを基本として世界の市場で公正かつオープンに競争している。今日、中国は世界で最も急成長している半導体市場の一つである。ITAへの参加及び半導体その他情報技術(IT)製品に対する関税の撤廃など、中国はWTO加盟の一環として市場開放に向けて大きく歩み出した。しかし、中国が現在行っている増値税(VAT)では、17%のVATが全ての半導体に適用されている。しかも、国内の半導体の設計及び製造企業には支払ったVATから多額のリベートが還付され、VATの負担はわずか3%と、VTAの負担から実質的に逃れている。差別によって市場参入が制限され、貿易と投資のパターンが歪められており、中国がWTOに加盟した時点で確約した恩恵が相殺されてしまっている。WSCは中国に対して、原産国を問わず全ての半導体に対するVATを3%に引き下げるよう求めるものである。

      WSCは、2003年11月にカリフォルニア州で開催が予定されているGAMS(半導体に関する政府/当局会議)においてWSC提言を各国政府/当局に対する正式な要請として提出する予定である。SIAから提出されたVAT慣行に関する文書を参考までに添付する。

       
      (3b)公正かつ効果的なアンチダンピング措置(添付資料参照

      このペーパーは、半導体産業の特性及びアンチダンピング問題に関する半導体業界の豊富な経験を勘案し、特にドーハ開発アジェンダの中で進行中のルールに関する交渉の一環として、国際貿易協定の原則及び具体的提案について政府や当局に助言する内容になっている。この原則及び提案は、「公正かつ効果的なアンチダンピング措置とは何を意味するか」という国際的な共通理解を基に、現行のアンチダンピング体制の欠点を指摘し、アンチダンピング救済措置の所要時間の短縮、アンチダンピングという観点からウエーハ製造(拡散工程)を公認の原産地と定め、またはアンチダンピングに関する質問状の内容の調整等具体的な措置を求めるものである。

      WSCは「半導体産業における公正かつ効果的なアンチダンピング措置に関するペーパー」を採択した。WSCは、2003年11月にカリフォルニア州で開催が予定されているGAMS(半導体に関する政府/当局会議)においてWSC提言を各国政府/当局に対する正式な要請として提出する予定である。

       
      (3c)知的財産の全面的保護

      半導体メーカは、売上の大半を研究開発に投じなければならず、研究開発から生まれる知的財産は企業の命である。知的財産が適切に守られないと半導体業界は大打撃を受けるが、ICその他半導体の模倣例は増加する一方である。チップを直接光学的に不当にコピーし、それをもとにマスク(レイアウトデザイン/トポグラフィ)を作り込み、これを基に半導体の組み立てが行われ、別会社の名前で販売されている例がある。また他のケースとして、チップをリバースエンジニアリングなどの方法でコピーして物理的に同じチップを作り、許可なく製造元の企業名と商品名で販売されている場合もある。いずれの違法な模倣も迅速に対応して中止させなければならない。

      WSCは、2003年11月にカリフォルニア州で開催が予定されているGAMS(半導体に関する政府/当局会議)において各国政府/当局に提出するWSC提言を用意する予定である。但し、この提言は半導体業界に新しい法的義務を課すためのものではない。

       
      (3d)市場をベースとした競争

      WSCは1999年6月10日にEC及び日米韓政府によって発表され、2001年5月に再度発表された「半導体問題に関する共同声明(Joint Statement Concerning Semiconductors)」に盛り込まれた市場競争原理を改めて確認する。この市場競争原理とは、半導体メーカは通商の妨げとなるような手段が講じられることなく、全ての市場で競争することが出来るということである。

    4. 「インターネット社会」の成長を支えるために
    半導体は情報技術(IT)革命実現の鍵を握る技術であると共に、インターネット社会が成長・拡大するためには不可欠なものである。インターネットを支える情報技術(IT)の成長は、教育を改革し、新しい産業を創造し、既存産業を改革している。さらに、コミュニケーションのスピードを加速している。通信技術の普及は当業界の成長の主な牽引役を果たしている。この分野における取引は、可能な限りオープンであるべきであり、国際的な規則、国内的な規制がオープンで競争的な市場を促すものであることが極めて重要である。

    政策によっては、インターネットという主要分野の成長が支えられる可能性も阻害される可能性がある。世界貿易機関(WTO)ドーハ閣僚宣言では、「電子商取引は、通商の新しい挑戦と機会を創出しており...(WTOメンバーは)電子商取引の将来における発展に望ましい環境の創出と維持の重要性を認識している」と述べられており、WSCはこれを支持する。一般的に、予知可能かつ透明性の高い規制を確立すると同時に、可能な限り産業界の責任に委ねることがこの分野の施策を策定する政府/当局の最善の策である。そのためには、WTOの電子商取引に関する作業計画には下記の点を盛り込むことが必要であると考える。

    • ドーハ閣僚会議では2003年の次回WTO閣僚会議まで電子商取引に対する関税を一時停止することが決定されたが、これを恒久化すべきである。


    • 電子商取引においては、物理的な形で配送される商品と比べて不利な扱いを受けるべきではなく、最も制限の少ない扱いがなされるよう国際的な合意が形成されるべきである。


    • 政府は電子商取引を阻害するような通商関連施策は控えるべきである。規制が必要な場合には、政府は透明で、差別のない規制とすべきであり、かつ最も通商上の制約が少ない手段を採用すべきである。

    この点について、WSCは以下を採択した。

      (4a)著作権の賦課金に関するWSCペーパー(添付資料を参照

      WSCは、インターネット社会の成長を促す取り組みを明確に示すため、デジタル環境における「著作権料の賦課の危険に関するペーパー」を採択した。

      具体的に、「デジタル機器に対する著作権料の賦課が蔓延することは、インターネット社会の発達を阻害するものであるとともに新しい貿易障壁の急速な台頭であるとして、これに取り組むべきである」と考える。本来、著作権料の賦課は、一般市民による営利目的以外の“個人的複製”に対して著作権所有者を補償するためにアナログの記録媒体に課せられたものであった。しかし、現在、多くの諸国では、この“個人的複製”に対する賦課金をコンピュータ、ソフトウェア、周辺機器のみならず、一般消費者向けデジタル電子機器にまで拡大し、(賦課金は、著作権侵害ではなく合法的な個人的複製に対する補償のために設けられているにもかかわらず)“個人的複製”及び著作権侵害による収入の減少に対して著作権所有者を補償しようとしている。賦課金は、用途に関係なく全ての技術に不公正かつ無差別に課せられている。技術製品の販売先の大半は企業や公的機関であり、そこに賦課金を適用するのは明らかに不適切だが、賦課金は全ての技術製品に適用されている。賦課金が製品のコストを上回る場合すらある。また、コンテンツ提供者と技術業界は、消費者がデジタルコンテンツを活用する一方でアーティストに対する補償も直接行われる、新しく柔軟性に富んだ素晴らしい方法を共同で開発しているが、賦課金はこの努力を台無しにするものである。

      政府/当局は、デジタル機器や空の記録媒体に対する著作権料の賦課を認めないように確約すべきであるとWSCは考える。また、WSCは、賦課金に反対する文言を新しい貿易協定に盛り込むこと、またWTOの仕組み(電子商取引に関する作業部会やITAなど)を利用して賦課金を貿易障壁として扱うことを呼びかけている。また、賦課金はどこに支払われているのか、いくら支払われているのか、何を補償するためのものなのか、一般市民に分かるよう、賦課金方式に関する適切な説明責任や透明性を確保することも政府/当局に呼びかけている。

      WSCは、2003年11月にカリフォルニア州で開催が予定されているGAMS(半導体に関する政府/当局会議)においてWSC提言を各国政府/当局に対する正式な要請として提出する予定である。

    5. 法規制問題
    半導体等の先端技術製品は、世界中の市場において様々な規制の対象となることが増加しつつある。消費者や環境を保護するために、製品に対する何らかの規制が必要であれば、それは差別的なものではなく、科学的な根拠や公開された技術情報に基づくべきもので、市場の効果的機能を害するものであってはならない。現行のWTOルールに則って、貿易規制は最低限度にとどめるべきである。

    この点について、WSCは、特にEUの化学薬品に対する施策及びEUのRoHS(有害物質規制:Restriction on Hazardous Substances)指令のプロセスについて検討した。

    6. 半導体市場データ分析
    WSCでは、半導体の市場規模、市場の成長等半導体の市場動向について報告を受け、意見交換を行った。長期的に見れば、半導体業界は依然として堅実であり、技術の進歩により世界中の消費者及びビジネスに利益をもたらし続ける産業である。半導体市場は、中国を含むアジア太平洋市場の急速な拡大により、更に成長が促進されるだろう。

    7. 将来の半導体技術の開発
    生産性の向上は半導体技術の進歩によるところが大きい。これが更に継続されれば今後とも多大な利益をもたらすこととなる。2010年までには、メモリーのコストは現在の20分の1まで削減され、マイクロプロセッサのスピードは10倍となろう。これらによって、ストリーミングビデオの配信、遠隔医療、他の重要な意味をもつ先端的応用が可能となる。WSCは、これらの発展のためには、投資の拡大と広範な技術が必要であると認識している。これらの課題に適切に取り組むには、国際的な協力と努力が必要である。このため、WSCでは引き続き、「半導体技術に関する国際フォーラム(IFST)」と「半導体技術の国際ロードマップ(ITRS)」の活動を支援していく。

    新しい材料、新しいリソグラフ技術、新しいデバイスの構造などの導入を含めて、現在の技術進歩を今後とも継続するためには、多くの挑戦が必要であることをITRSは示している。これらの挑戦によって半導体業界の成長・発展が促進されること、またそのために追加の資源が必要とされていることについて、WSCメンバー全体の意見は一致している。例えば、157nm以降のEUV技術やその他の先端リソグラフ技術の開発は複数のWSC会員地域においてプロジェクトが進行中である。しかし、開発には莫大な費用がかかる上に作業が複雑であるため、単一地域では対応しきれないという問題もある。WSCは、非競争分野における技術開発について、あらゆる地域の研究者がより協力するよう呼びかけるものである。

    8. 各国政府/当局への報告
    本日の結果は、2003年11月に米国で開催されるWSC代表者と関連各国政府及び当局との年次会合に提出される。政府及び当局へ提出されるレポートは、以下の点が含まれる。

    1. 業界のエキスパートが作成した半導体市場に関する最新レポート
    2. アンチダンピングなどの通商問題に関する提言、知的財産保護、電子商取引の促進、内国民待遇、著作権料の賦課などWTOその他の手段を通じて対応できる市場開放策と提言
    3. 環境・安全に関する協力活動のレポート及び法規則に関する提言

    9. 次回会合
    次回WSC会議は、2004年5月に韓国半導体産業協会(KSIA)の主催によって開催される。

    10. 主要な文書とWSCホームページ
    WSC関連の文書は、WSCのwebsiteに掲載されている。

    WSC参加メンバーの情報については、下記ホームページ参照。

以上

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