一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が主催する展示会「CEATEC」が2024年で25周年を迎えます。歴史と伝統を積み重ねてきたCEATECは、時代的背景から、「デジタル家電の祭典」のイメージを強烈に社会に発信していた時期が長く続きましたが、2016年に「脱・家電見本市」を宣言して大きく舵を切り、現在は「IoT」と「共創」の2つを大きな柱に据えて、Society 5.0の実現を目指す、デジタルイノベーションの総合展として開催されています。
ところで、CEATECは何の頭文字をとった名称かご存じでしょうか。ご存じの方は相当のテクノロジー通かもしれません。答えは「Combined Exhibition of Advanced Technologies」。その名の通り、CEATECは「最先端技術の複合展示会」として生まれ、発展してきました。最新テクノロジーを活用することで、いかに人々の暮らしを豊かにできるかを世の中に提示し続けてきたCEATEC。前身となった展示会も含めて歴史を紐解きながら、最新テクノロジーと暮らしの変遷をみていきましょう。
1960~90年代:
総合展としての伝統が始まる
CEATECの源流は、1962年に始まった「日本電子工業展」にまでさかのぼります。技術水準の公開と販路の拡大を目的に開催されました。東京・晴海にあった東京国際貿易センターを会場に、「テレビ・ラジオ等の音響機器」「電子応用機器を含む無線機器」「測定器」「電子部品」の4部門で構成された展示会でした。第1回のキャッチフレーズは「エレクトロニクスの限りない夢をあつめて」。207社が出展し、10日間の会期で約15万人が来場しました。一大総合展として、パーツから完成品までを広範囲に展示した日本電子工業展の特徴は、現在のCEATECにも脈々と受け継がれています。 第2回は、関西産業界の熱心な誘致により大阪で開催されます。以降、東京と大阪での隔年開催が恒例化されました。 1964年の第3回から名称を「エレクトロニクスショー」に改称して開催。特に第25回の「1986年エレクトロニクスショー」には、過去最多としての記録が残る44万3,500人が来場し、活況を呈しました。
CEATECのもう1つの源流が、1972年に始まった「データショウ」です。汎用コンピュータの周辺機器や端末機器の普及促進を目的とした展示会で、1996年には208社が出展、26万8,900名が来場しています。1997年に「コミュニケーションTOKYO」および「JPSAコンベンション」と統合、情報・通信の総合展示会「COM JAPAN」に生まれ変わりました。以降、IT産業の発展およびITによる豊かな社会の実現をリードする展示会として歴史を彩りました。
2000~2014年:
CEATEC JAPANが誕生
2000年、エレクトロニクスの総合展である「エレクトロニクスショー」と情報と通信の総合展示会である「COM JAPAN」が統合して、「CEATEC JAPAN」へと生まれ変わりました。日本を代表する2つの展示会はいずれも、最先端の技術と製品を国内外に向けて情報発信する場であったことから、映像・情報・通信とデジタル・ネットワークというすべてを網羅する総合展示会としてCEATECが誕生したのです。ここから最先端技術の“複合”展示会としての新たな歴史が始まります。
時代はまさにデジタル家電の最盛期でした。2000年にBSデジタル放送が始まり、2003年の第4回にはプラズマテレビと液晶テレビの新製品が会場に多数並びました。2006年の第7回では次世代DVDの規格争いで2つの陣営が火花を散らしました。2007年には20万人が来場しています。 その後も、スマートフォンや3D(3次元)テレビ、4K/8Kといった高画質ディスプレイなどがCEATECで披露されています。
「最先端IT・エレクトロニクス総合展示会」として開催されてきた当時のCEATECは、時代の流れに合わせる形で「デジタル家電の祭典」として発展し、そのイメージを強烈に発信していたのです。当時の印象を強く持たれていれば、CEATECの「CE」は「Consumer Electronics」の略だと思われていた人もいるかもしれません。
2015年~:
IoTの総合展へシフト
しかし、世界情勢や業界動向の変化を受け、CEATECの出展者数や来場者数は一転して伸び悩みます。2015年には、CEATECとして開催された過去16回の歴史において、来場者数は最少になってしまいました。 この年、新しい主催者企画が動き出し、CEATECの出展者の様相が変化し始めます。「NEXT ストリート」と名付けられた企画展示に、初めて出展したのが近畿日本ツーリストと楽天です。CEATEC初のサービス産業の参画は大きな話題を呼びました。
翌2016年には、規模をさらに拡大し、「IoTタウン」に進化しました。この主催者企画には、IT・エレクトロニクス業界以外の“IoTのフロントランナー”が続々と出展しています。2017年、2018年には15万人を超える来場者がCEATECを訪れるなど、CEATECはIoTの基幹となる電子部品やデバイスから完成品、実装される機器、それらを活用するさまざまなサービスまでを含めた、すべてが一堂に会するIoTの総合展に生まれ変わりました。
2020年~:
完全オンライン開催、
そしてハイブリッド形式へ
2020年の新型コロナウイルスの感染拡大を受け、CEATECは幕張メッセでの開催見送りを決定、完全オンラインによる開催を決断しました。結果として、2020年は延べ15万名以上、2021年も延べ8万名以上がオンライン会場を訪れ、高い関心が寄せられました。オンラインならではの可能性を感じる感想が寄せられた半面、対面ならではのコミュニケーションを望む声の高まりを受け、2022年からはハイブリッド形式に移行、以降オンラインを活用しつつ、対面を中心とした開催を続けています。
そして、2024年。時代を反映して進化を続けてきたCEATECは25周年を迎えることになりました。変化を続けながらも、一貫して変わらぬこともあります。最新のテクノロジーを活用することで人々の暮らしがいかに豊かになるかを社会に問うこと、そして、そのために幅広い業種・業界のプレーヤーたちが集結するということ。「Combined Exhibition of Advanced Technologies」の名の通り、最先端技術の複合展示会であるCEATECの伝統は、今後も色褪せることなく受け継がれていくことでしょう。
(2024年8月1日更新)