第106回 機器・部品メーカー懇談会
部品運営委員会では、11月19日(水)に標記懇談会をハイブリッドで開催しました。
「開会挨拶」として部品運営委員会 森克彦
委員長(ニチコン(株)社長)から、今回の講演は、人材育成がテーマであり、自分自身および各会社様にもお役に立てることを期待しています。関西万博が盛況のもとに終了しましたが、今後、この関西の盛り上がりを世界に繋げて行きたい、と述べられ懇談会がスタートしました。
今回の講演では、人材育成を共通テーマとして、学(北岡氏)、産(安藤氏)、官(林氏)のお立場で3つの講演に関連性を持たせてご講演をいただきました。
大阪大学の産学官連携と人材育成の取り組み
大阪大学 共創機構 機構長補佐 イノベーション戦略部門
部門長(兼)大学院工学研究科教授 北岡康夫 氏
関西地域におけるイノベーション推進と若手人材育成の現状と、その課題克服に向けた取り組みに焦点を当てられました。北岡氏は、関西には若者が挑戦できる環境や企業とスタートアップ間の連携が不足しており、企業ではイノベーションを生む仕組みや文化が整っていないことから、優秀な学生が東京へ流出している現状を指摘されました。しかし、近年の学生は、給与だけでなく社会価値の創出や起業を目的としてキャリアパスを多様化させているため、大学側はこれに応える形でアントレプレナーシップ教育を強化しています。大阪大学では、共同研究講座の開設、量子コンピューターや核融合といったディープテック分野での大学発ベンチャーを積極的に支援し、多くの博士人材が産業界で活躍できる場を提供しています。北岡氏は、今後も産学官の強力な連携を通じて研究拠点とビジネス環境を関西に集積させ、社会課題解決に貢献し優秀な人材を創出し、経済界とも連携することで若者が活躍できる関西、さらに日本へと繋げて行きたいとご講演されました。
新規事業創出と若手の人材育成
株式会社村田製作所 執行役員 技術・事業開発本部
事業インキュベーションセンター長 安藤正道 氏
安藤氏は、新規事業創出を成功させるためには、技術、戦略、タイミング、そして情熱(ハート)の四要素が不可欠であり、これらが一つでも欠けると、たとえ黒字であっても事業を中断すべきだと話されました。また、ご自身の経験談として、透明スピーカーから圧電性ポリ乳酸商品事業を立ち上げたプロセスを紹介し、顧客から初期の「いいね」を超えて「で?」の壁を乗り越えることの重要性を強調されました。
大企業における若手育成に関しては、多くの若者が安定志向を持ち、基礎知識や実践的なスキル、そして失敗を恐れるメンタルブロックを抱えている現状を指摘されています。安藤氏は、事業インキュベーションの定義を「継続して利益を生み出す仕組み」と定め、人材育成としては、自ら取り組まれているイータープロジェクトで具体的な実例を挙げて説明されました。質疑応答では、特にメンタルブロックの解消法や、市場のタイミングを捉えることの難しさについて議論が交わされました。
次世代人材が拓くイノベーションの未来
~シリコンバレーの現状と日本の次世代人材の育成~
経済産業省 中国経済産業局 局長 林揚哲 氏
金融業界でのクレジットアナリスト、関西電力での新規事業開発、外交官、ジェトロサンフランシスコ所長、経済産業省と様々なキャリアを通して深い知見での講演をしていただきました。シリコンバレーでは破壊的なイノベーションが求められ、失敗への寛容性が高い一方、日本企業の完璧主義や野心の低さが海外進出の足かせとなっていると指摘されています。特にバイオやヘルスケア分野では、日本の研究者に対する高い期待があるものの、全体として日本は世界のインナーサークルから遅れをとっているとの危機感を表明されました。シリコンバレーと日本企業のマインドセットの違い、シリコンバレーでの産学官の連携の実例を挙げ、日本が競争力を高めるためには、若手へのリスクテイクの推奨と産学官連携の強化が必須であると説明されました。
機器・部品メーカー懇談会開催後に、参加者へアンケートをお願いし集計しました。
講演全体としての満足度は、4段階(大変満足、満足、少し不満足、不満足)で、大変満足が73%、満足が27%と、非常に満足度が高い結果となりました。
自社での活用については、4段階(大変活用できる、活用できる、あまり活用できない、活用できない)で、大変活用できるが30%、活用できるが60%、あまり活用できないが10%と、講演内容によってばらつきがありましたが、自社での活用度が高い結果となりました。
従来の機器・部品メーカー懇談会では、技術的なテーマの講演会が中心でしたが、今回は、人材育成の共通テーマでかつ3講演に関連性を持たせた内容としたことで、多角的な示唆を得た、気づきの多い講演会であった等の意見が多く寄せられました。