CEATEC 2025 出展レポート
「命の電源、未来へつなぐ」~災害時における在宅医療継続を支援する取り組み~
近年、大規模自然災害による電力供給の途絶が、在宅医療を受けている患者様の生命を脅かす深刻な問題となっています。この課題に対し、ヘルスケアインダストリ部会 極限環境医療機器等に関するWGは、災害時における医療継続支援の重要性を啓発し、具体的なソリューションを提示するため、CEATEC 2025に「災害時医療継続支援」をテーマとして出展・コンファレンスを実施しました。医療機器の安全利用と安定した電源確保に向け、2025年4月に発行した「災害時における医療機器の安全利用に関する調査報告書」の内容を広く周知し、社会全体の防災・減災能力向上に貢献することを目指しました。
調査報告書ダウンロード
災害時における医療機器の安全利用に関する調査報告書の発行について

災害時における在宅医療継続支援の背景と課題
大規模自然災害が多発する中、停電時の医療機器の安全な利用と安定した電源確保が喫緊の課題となっています。特に、在宅にて人工呼吸器などを必要とする医療的ケア児に代表される、災害時に自ら避難することが困難な方々を救うための対策は重要です。自宅で日常的に医療機器を必要とする児童は約1万2千人と推定されており、成人を含めた在宅人工呼吸療法推定患者数は約2万2千人にのぼります。
当ワーキンググループでは、災害時における医療機器の利用に関する調査報告書をまとめ、医療機器の取り扱いとリスク軽減策を提言してきました。しかし、この調査報告書の存在や内容が一般市民や医療関係者、自治体等に十分に認知されていないことや、ポータブル電源からの給電活用が実際にどのように役立つのか具体的なイメージがもてないといった課題があります。また、薬機法による利用制限など、法制度に関する障壁も存在しています。
CEATEC 2025 出展目的と内容
CEATEC 2025への出展は、これらの課題に対応し、災害時における医療機器の安全利用と給電活用に関する具体的な情報と手順を広く周知すること、そして災害時における在宅医療継続への具体的な解決策を示すとともに、一般市民、医療関係者、自治体関係者、そして関連産業界など、幅広い層へ災害時における医療継続支援の重要性を啓発し、具体的なソリューションを提供することを主な目的としました。
パートナーズパーク暮らしのDXパビリオンに出展
CEATEC
展示ブースでは、報告書の内容をパネル展示し(医療機器給電試験回路イメージや試験結果など)、評価した医療機器および検証で使用したポータブル電源のうち一部の機種を実機展示することにより、分かりやすく今回のソリューションを紹介しました。この調査から、医療機器の定格出力を超えた容量をもつといった一定程度の品質を有するポータブル電源であれば、今回選定した医療機器への電源給電が可能であることが確認されました。ただし、複数の医療機器を接続した際には動作停止するケースもあり、医療機器を稼働させる場合には、一般電気製品も含め接続機器の数には十分注意すべきとのメッセージを発信しました。
また、一般社団法人日本自動車工業会(JAMA)との連携により、モビリティを活用したさまざまな取り組みとして、電動車から医療機器への給電による具体的な方法をまとめたマニュアルを紹介しました。(写真1)
【写真1:マニュアル紹介】
コンファレンス
会期中の10月17日(金)には、パートナーズパークの特設ステージにて、コンファレンス「命の電源、未来へつなぐ~ポータブルバッテリー・電動車による、災害時の電力途絶下でも医療を止めないための具体策~」を実施しました。
コンファレンスでは、JEITAとJAMAがこのテーマに取り組む背景や、調査報告書の概要・ポイントを説明しました。加えて、病院関係者である医療法人稲生会 理事長土畠先生やイッツ・コミュニケーションズ株式会社取締役会長の市来様から、医療・介護現場からの声や患者さんのリアルな状況、災害医療の視点から見た在宅医療の課題、企業から見た災害対策などが共有されました。
【試験で用いた医療機器とポータブル電源】
パネルディスカッション

パネルディスカッションでは、災害時の医療継続を巡る具体的な課題と、それを解決するための「平時からの連携と準備」の重要性が浮き彫りになりました。
解決への提言として、議論を通じて得られた最大のポイントは、「平時から地域コミュニティで交流し、地域の実情を知っておく」ことです。これが、災害時に「あの家に医療的ケア児がいるから声をかけよう」という具体的な行動につながり、実践的な災害対策の基盤となると結論づけられました。
【試験結果一覧】
今後の展開
CEATEC 2025への出展とコンファレンスは、医療機器産業と自動車産業という異業種間の連携を通じて、災害対策における新たなソリューションを提示し、社会貢献を果たすこと、そして防災意識の向上に大きく貢献する機会となりました。
本活動を契機に、災害時の不安を抱える在宅医療患者様を守るため、電源供給サポートを一層強化していただくよう自治体等に働きかけ、また、メーカーに対しては、災害時対応住宅や給電対応製品の開発を後押しし、これらの連携を通じて、「医療を止めない」 安心・安全な社会の実現を目指してまいります。
本件の
お問い合わせ
一般社団法人電子情報技術産業協会
ヘルスケアインダストリ部会
E-mail:healthcare@jeita.or.jp