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活動報告事業推進部

IEC TC100CAG中国・厦門会議報告

TC100概要
IEC TC100(AV・マルチメディア、システムおよび機器の技術分野に関連する国際標準):1995年10月に設立-2004年1月より日本が幹事国を務めており、現在、国際幹事:上原まひる氏(ソニーグループ)、国際副幹事:佐久間正剛氏(東芝)、田中宏典(パナソニック)、国際幹事Pメンバー(投票権を持つ国):21カ国、Oメンバー(オブザーバーの国):25カ国、傘下に10のTA(Technical Area)がある。なお、TC100の受託審議団体はJEITAであり、TC100国内委員会を運営している

2025年5月12日~5月15日に中国・厦門で、IEC(国際電気標準会議) TC100(AV・マルチメディア、システムおよび機器)Chairman Advisory Groupおよび傘下グループの会議が開催され、活発な議論が交わされました。以下では会期中の審議・決議の中から重要な議案について紹介します。

A. 主な規格化提案

1. TC100/TA5:PWI

日本から、IEC60728シリーズの新たな国際規格の提案を行いました。今回の規格提案はギャップフィラーシステム(以下、GFシステムという)に関するものであり、GFシステムの運用において、受信点で受信した放送信号を、送信点まで光ファイバで伝送するための伝送方式、規格値、測定法等を規定するものです。
欧米の放送形態のトレンドとしては、地上放送からIP放送やIPストリーミングに移行しつつあります。しかし、日本では、多くの小さな離島があり、また山間部には多くの小さな村が散在していることなどから、全国的に早急なデジタル高速通信網の敷設は難しいため、このような地域には下図のような難視聴対策向けのGFシステムの設置が進められています。また、GFシステムは途上国においても、ローコストで設置できるシステムであり、大変有効な規格であると考えられます。

【難視聴エリアでのGFシステムの運用例】

2. TC100/TA6:ストレージ

現在、テザー撮影等のワークフローにおいて、撮影中または撮影後の素材にPCでメタデータを付与または変更しても、カメラ、他のPC、クラウド等にある同じ内容の撮影素材には反映されないため、手作業で整合性をとる必要があります。この問題に対し、複数個所に存在する同じ撮影素材を管理する仕組みとメタデータを同期して追加・変更する仕組みを定義するTS文書の作成を進めています。

【テザー撮影におけるメタデータ同期】

本件CAGレビューを経てNP投票を通過し、IEC TS 63625 ED1として登録された旨報告されました。OSD環境でドラフト作成を開始します。
また、UADF(Universal Archive Disk Format)のIS文書作成についてはPWI 100-65として登録され、NP提案に向けて技術検討を進めていることが報告されました。

3. TC 100/TA 15:WPT(ワイヤレス給電)

Liaison Aの関係を締結したNFC Forumから、NFC Wireless Charging等に関する規格開発がFast Truckにて提案されています。TC100内関係者の知見を活用し、議論を進めていきたいと思います。


引用:https://nfc-forum.org/learn/what-nfc-does

4. TC100/TA17:車載マルチメディア

韓国からIEC 63479-2 Infotainment Services for Public Vehicles (PVIS) - Part 2: Requirement とIEC 63479-3 Infotainment Services for Public Vehicles (PVIS) - Part 3: Frameworkについて報告がありました。CDV投票にてコメント無かったため、直接発行ステージに進む事が確認されました。
韓国からPWI TR 100-54 External Visual Systems of external Human-Machine Interfaces (eHMI) for Automated Vehiclesについて報告がありました。今回の会合で、本プロジェクトは(TR) Part 1: General、(IS) Part 2: (仮題)Multimedia system process for eHMI、(IS) Part 3: (仮題)Multimedia system requirements Recommendationの3部構成で開発することになりました。Part 1のドラフト提出を進める事が確認されました。
中国からPWI 100-61 Requirements for In-Vehicle Back-seat Display Systemsについての報告がありました。本プロジェクトは(TR) Part 1: Introduction、(IS) Part 2: Display、(IS) Part 3: Interactionで構成されます。また、PWI 100-62 In-vehicle audio: Objective test methods for audio system performanceについての報告もありました。このプロジェクトは(IS) Part 1: General、(IS) Part 2: Reference listening materialで構成されます。本年10月に実施予定の米国でのTA17会議の前段階で、PWI 100-61ならびにPWI 100-62のための臨時会議を中国にて実施する予定となりました。
韓国から新プロジェクトMultimedia metadata description methods for vehicle interior sensingの提案がありました。カメラによるAI認識を用い、眠気、飲食、通話、危険なふるまい、忘れ物、社内の傷や汚れ等の状況をメタデータで記述する方法に関するものです。互換性向上、実装コスト低減、新サービスを短期間で導入、プライバシー保護が期待されます。本提案はCAG(Chair's advisory group)で審議の上、承認された場合にPWIとなる予定です。

5. TC100/TA20:オーディオ

昨年11月に行われたTA20高松会議でUSから提案があったImmersive Audio Model & Format(以下、IAMF)ですが、中国・厦門で行われたTA20会議で進展があり、IEC 61937-2 Digital audio - Interface for non-linear PCM encoded audio bitstreams applying IEC 60958 - Part 2: Burst-infoにIAMF提案を盛り込む方向で進める方針となりました。現在、この方針の提案についてQ文書の回覧中であり、Pメンバーからの合意が得られればIEC 61937-2の2nd AmendmentとしてIAMF提案を盛り込む方向で進める予定です。
尚、この新規規格化は日本としても3Dオーディオ規格として重要な規格提案であるため、日本のエキスパートも参画しながら今後議論を進める予定です。

B. Workshop

本会議の主催国である中国より、将来のTC100での議論に向けた新たな話題について発表がありました。
Xin JIN教授(Eastern Institute of Technology, Ningbo)より、AIGC(AI-generated Content)の影響、新たな生産性と創造性、効果的な利用と管理の重要性について、技術と標準の両面から説明されました。
CVTE(Guangzhou Shiyuan Electronic Technology Company Limited)より、マルチメディア会議システムのマイクとカメラの進化、マルチモーダルAIによる話者追跡、分散された複数機器の処理について説明されました。
SUCA(Shenzhen 8K UHD Video Industry Cooperation Alliance)より、音声、動画、制御情報、電源を1本のケーブルで伝送する新規格GPMI(General Purpose Multimedia Interconnection)について、賛同企業同席の元、説明されました。
次回10月会議に向けて、次回Workshop開催を検討することになりました。

C. 今後の予定

TC100国際幹事より、今後の予定について、下記のような説明がありました。
2025年10月:Plenary会議:米国・モンタナ
2026年5月:CAG会議:ハンガリー
2026年11月:Plenary会議:ドイツ

D. 国内対応

TC100にて審議しているIEC規格は、AV&IT標準化委員会及び傘下の対応PGにて審議・対応を行っています。

E. その他


ソニーグループ:上原まひる氏
IEC活動推進会議第35回総会が5月21日(水)TKP品川にて開催され、上原まひる氏(ソニーグループ)がIEC活動推進会議議長賞を受賞しました。

AV&IT標準化委員会

1)企業数:21社

2)事業概要
・マルチメディア(AV&IT)機器・システム分野の標準化推進とIEC TC100対応
・IEC TC100規格・ISO規格・JTC1規格の作成、提案、審議 国際会議対応など
・JEITA規格・JIS規格・国内関連規格の作成、提案、審議など
・上記分野の標準化方針、ビジョン、基本政策の策定と関連委員会への周知
・傘下の委員会間の課題解決調整、情報交換共有
・委員会、委員会の対外課題への対応と解決調整

3)関係リンク先
・AV&IT標準化委員会 https://home.jeita.or.jp/cgi-bin/about/detail.cgi?ca=14&ca2=384
・IEC TC100 https://iec.ch/tc100

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