Media over IPコンソーシアムを発足
~多様なステークホルダーによりネットワーク環境下でのコンテンツ制作の効率化と放送環境のDX化を推進~
放送環境のIP化に向けた連携
放送業界のネットワーク化とDX化を加速させることを目的に、放送局、機器メーカー、通信事業者など多岐にわたるステークホルダーが参加する「Media over IPコンソーシアム(略称:MoIPコンソーシアム)」を発足しました。2025年3月7日に開催された設立総会には、放送・通信・ITなどの多様な企業・団体が参加し、今後の具体的な活動方針が示されました。
放送業界の構造変化とIP化の潮流
映像制作現場では、従来のSDIベースからIPネットワークを用いた伝送方式「Media over IP(MoIP)」への移行が急速に進んでいます。これにより、放送設備や制作フローの柔軟性が高まり、遠隔制作やクラウド連携といった新しい制作手法が可能になります。一方で、機器間の接続性や運用ノウハウ、人材獲得といった課題も浮き彫りになっており、業界全体での共通基盤の整備と人材育成が急務となっています。
コンソーシアム発足の背景と目的
こうした業界のニーズに応える形で、JEITA(一般社団法人電子情報技術産業協会)の主導により、「Media over IPコンソーシアム」が2025年3月7日設立総会を開催し発足いたしました(会員数54社、2025年4月現在)。本コンソーシアムは、放送と通信、IT、そして教育・行政分野にわたる多様な関係者が連携し、MoIPの実装促進と課題解決を目指します。設立総会では、理念・活動方針の説明に加え、会長・副会長・監事による挨拶と主査からの活動内容の説明が行われました。
幹事・正会員企業に業界の垣根を越えた顔ぶれ
MoIPコンソーシアムには、TBSホールディングス、日本テレビホールディングス、フジ・メディア・ホールディングスをはじめとする放送局に加え、ソニーマーケティング、NEC、パナソニック コネクト、池上通信機、東京エレクトロン デバイス、ネットワンシステムズ、Zabbix Japanなどの機器ベンダー、ICT企業が幹事会社として参加しています。また、テレビ朝日、テレビ東京、WOWOW、ヤマハ、KDDIなど、業界の垣根を越えた企業も正会員として参画していることや、総務省、経済産業省、NHK技術局も客員として参加しており、政策・技術の両面での支援体制も整っています。
5つの重点活動でDXを支援
MoIPコンソーシアムは、次の5つの重点活動を柱として、放送業界におけるIP化とDX推進を目指します。
1. MoIPプラットフォームの提案
国際標準に準拠した安全かつ効率的な基盤構築
2. マルチベンダー間の相互接続検証
機器間の相互運用性確保と技術的な課題の洗い出し
3. ワークフローの提案
制作現場の業務効率化と新しい運用モデルの提案
4. 人材育成セミナーの開催
放送技術者やICT人材向けの教育プログラム提供
5. 広報・情報発信
会員企業への情報提供と業界内外への普及活動
実務に即したワーキンググループ体制
各活動は、4つのワーキンググループ(WG)により実行されます。WGごとに幹事企業が主査を務め、実務に即した検討と成果創出が行われます。
・プラットフォームWG(主査:ネットワンシステムズ)
→ システム構成例の提示や接続検証、セキュリティ検討など
・ワークフローWG(主査:TBSテレビ)
→ IPによる放送現場に即した制作・運用フローの提案
・IP人材育成企画WG(主査:東京エレクトロン デバイス)
→ 技術習得を支援する講座やトレーニングプログラムの実施
・普及広報WG(主査:Zabbix Japan)
→会員への情報提供や交流の促進、地方局への説明会の開催
会長・副会長が語るMoIPコンソーシアムの意義
設立総会では、MoIPコンソーシアムの初代会長に就任したTBSホールディングスの奥田晋氏が、「MoIPはネットワーク技術との親和性が高く、映像制作の未来を担うキーテクノロジーである」と強調しました。その一方で、「従来の放送局が培ってきたIP技術とは異なる特性を持ち、高い信頼性や可用性を実現するには、新たなノウハウや技術基準を越える必要がある」と指摘。だからこそ、「この課題は放送局、メーカー、SIer、通信事業者といった個別の立場を越え、日本の映像業界全体として取り組むべき重要テーマである」と述べ、「本コンソーシアムを通じて、日本発の優れたコンテンツを世界へ届けるための共創の場としたい」との抱負を語りました。
副会長を務めるソニーマーケティングの小貝肇氏は、「本コンソーシアムのキーワードは“メディアのIT化”と“DXの実現”」であるとし、ST2110などの標準プロトコルを活用しながら、「MoIPを手段として、コンテンツ制作の高度化を最終的な目的とする」と位置づけました。また、「放送局や機器ベンダー、ネットワーク事業者のみならず、幅広い分野の知見を持つ参加者が集っており、多様な視点からの取り組みが可能になる」と述べました。「この共創を通じて、国内外に通用する魅力あるコンテンツを数多く生み出せるよう尽力したい」と、今後の展望を力強く語りました。
技術と人材の両面から変革を推進
Media over IP技術は、将来的に放送のクラウド化、リモート制作、AI活用といった新たな映像制作環境の実現を可能にする重要な技術です。MoIPコンソーシアムでは、単なる設備普及にとどまらず、導入による放送局のDX化や競争力の強化も視野に入れた取り組みを進めてまいります。

左:濱崎 監事、中央:奥田会長右:小貝副会長
今後の取り組みにつきましては、随時発表いたします。
Media over IP コンソーシアム 事務局(一般社団法人電子情報技術産業協会 市場創生部)
Web:https://moip.jp/
E-mail:mediaoverip@jeita.or.jp