SDV時代の到来:電装機器、半導体・電子部品の市場展望
~電子情報産業の世界生産見通しの公表~
自動車はこれまでエンジンなどのハードウェア性能が競争の源泉でした。近年、自動車の電装化により、基本性能をソフトウェアが制御するようになり、今後はソフトウェアの性能が競争力を左右することになるでしょう。また、通信技術の高度化により、搭載ソフトウェアがインターネット経由でアップデートされるようになり、走行性能や安全性能が向上することが可能となりました。更に、電装機器構造は進化し、搭載される半導体や電子部品は高性能化し存在感が高まっています。これに伴い、自動車のSDV化が進むと見込まれています。今回、自動車SDV化を指標化するため、調査統計委員会では、電子情報産業の動向と併せて新車生産台数に占めるSDV台数規模を2035年まで推定し、搭載される電装機器、半導体および電子部品に関する見通しをまとめました。調査結果については2024年末の津賀JEITA会長記者会見にて広く内外に発信すると共に、講演会を企画し、政府の取り組み紹介などを通じて、重要性の理解に向け、積極的なアピールを行いましたので、その一部をご紹介いたします。
電子情報産業の世界生産見通し講演会
2025年1月24日(金)に電子情報産業の世界生産見通し講演会が開催されました。今回は、電子情報産業の主要分野に関するマーケット市場や自動車SDV化に関心のある学生にも聴講していただいた結果、合計参加者数は240名にのぼりました。また、我が国を代表する統計機関や経済見通しを検討する政府、関連団体の参加も多数得て、当業界の市場規模と方向性をアピールする絶好の機会となりました。終了後の来場者アンケートでは、98%の方から満足と回答していただきました。

講演会会場の様子(JEITA会議室)
特別講演
政策動向として「モビリティDX戦略について」と題し、経済産業省 製造産業局 自動車課 モビリティDX室長の伊藤建氏よりご講演いただきました。伊藤室長からはモビリティに関する「SDV領域」「サービス領域」「データ利活用領域」についてロードマップ解説のほか、政府としての実証支援事業、SDV開発に必要なソフトウェア人材の需給見通し・人材確保の強化などについて、熱くご講演いただきました。

講演中の伊藤建モビリティDX室長
(モニター画面:~モビリティDX戦略について~)
特別講師への質問状
「特別講師への質問状」は、事前に意見・質問を募集し、講演時に特別講演の講演者より回答いただくコーナーです。プレゼンタである小川秀穂調査統計委員長と、回答者である経済産業省伊藤建モビリティDX室長による「セキュリティ対策」「ソフトウェアの開発効率」「人材確保の問題」などについて、活発な質疑応答がなされたことも大変好評でした。

「特別講演講師への質問状」
プレゼンタ(右)小川秀穂調査統計委員長、回答者(左)伊藤建モビリティDX室長
電子情報産業の動向
世界生産見通しについては、調査統計委員会の小川秀穂委員長より報告いたしました。電子情報産業の2024年世界生産額は、対前年比9%増となる3兆7,032億ドルと見込まれています。電子機器ではAI用途によるサーバ・ストレージが好調に推移、電子部品・デバイスは高性能な半導体需要の伸張が見込まれています。ソリューション・サービスは自動車・産業部門を中心としたデジタル化の進展やデータ利活用の高度化が期待されています。2025年も継続してサーバや半導体が好調に推移、各国でのデジタル化の動きが進み、電子機器や電子部品・デバイス、ソリューション・サービスの需要拡大が見込まれることから、世界生産額は対前年比8%増の3兆9,909億ドルと見通しました。なお、電子部品・デバイスは、調査開始以来、初の1兆ドル越えとなる見通しです。
注目分野に関する動向
注目分野に関する動向調査結果については、調査を担当したインフォーマインテリジェンス合同会社(OMDIA)南川明氏より報告いたしました。世界の新車自動車生産台数のうちSDVは2025年の290万台から、2035年には6,530万台、SDV比率は66.7%と市場は急速に拡大すると見通しました。日本市場も2025年の3万台から、2035年には430万台、SDV比率は62.0%に拡大する見通しです。また、2035年における、SDV搭載の電装機器世界需要額は2,307億ドル、半導体世界需要額は1,186億ドル、電子部品世界需要額は118億ドルまで市場が拡大していくと見込まれています。
世界生産見通しおよび注目分野に関する動向調査 概要
調査統計委員会では、2006年より、電子情報産業の世界生産見通しを取り纏め、出版物として発行するとともに、講演会を実施してきております。また、2015年からは、電子情報産業の世界生産見通しに加え、年毎注目されている分野にフォーカスをあて、見通し調査も実施しています。
<電子情報産業を代表する主な品目>
薄型テレビ、映像記録再生機器、撮像機器、カーAVC機器、携帯電話、サーバ・ストレージ、パソコン、プリンター、イメージスキャナ/OCR、電子タブレット端末、電気計測器、医用電子機器、電子部品、ディスプレイデバイス、半導体、ソリューション・サービスなど。
今回の登壇者
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開会の挨拶
JEITA専務理事
長尾 尚人 -
モビリティDX戦略
経済産業省 製造産業局 自動車課
モビリティDX室長
伊藤 建氏 -
世界生産見通し(赤本全体)概要報告
調査統計委員会
小川 秀穂委員長
パナソニックオペレーショナル
エクセレンス株式会社 -
ソリューション・サービスの動向
ソリューション・サービス事業委員会
込宮 信治副委員長
沖電気工業株式会社 -
半導体の動向
半導体統括委員会
近森 謙志郎委員
ローム株式会社 -
電子部品の動向
電子部品部会調査統計委員会
橋本 隆志委員
ニチコン株式会社 -
注目分野に関する動向調査結果
インフォーマインテリジェンス
合同会社(OMDIA)
南川 明氏 -
司会
調査統計委員会
山本 潤副委員長
株式会社日立製作所
刊行物のご案内
「電子情報産業の世界生産見通し2024」

- ■発行年月:
2024年12月 - ■価格:
・冊子版/PDF版
※A4判40ページ
※「注目分野に関する動向調査」冊子付き
会員3,300円、一般6,600円
・ダウンロード版
※PDF版および過去データ付き
会員16,500円、一般33,000円
・詳細版
※研究者向け、各社アンケート集計結果
会員110,000円、一般220,000円
「注目分野に関する動向調査2024」

- ■発行年月:
2024年12月 - ■価格:
・冊子版/PDF版
※A4判8ページ
会員2,200円、一般3,300円
・ダウンロード版
※PDF版および掲載データ付き
会員11,000円、一般22,000円
「JEITA 調査統計ガイドブック ~Executive Summary~」

- JEITAでは電子情報産業の幅広い製品分野の市場動向をタイムリーに把握するため、さまざまな調査統計事業を実施しています。これらを内外に広く紹介するため、「業界統計」や「分野別市場動向」、「統計分類・市場規模」、「調査統計イベントスケジュール」などを分かりやすくまとめた『JEITA 調査統計ガイドブック~Executive Summary~』を毎年発行しています。
※各詳細はJEITAホームページ「刊行物」にてご確認ください。
https://www.jeita.or.jp/japanese/public