Activity
活動報告関西支部

第104回 機器・部品メーカー懇談会

関西支部・部品運営委員会では、11月19日(火)に大阪・西梅田の毎日新聞ビルにおいて標記懇談会をハイブリッドで開催しました。はじめに坂本真治 委員長(パナソニックインダストリー株式会社 社長)より、「EVの話ではスマート化の話と電動化の話が混在しがちだが、スマート化の方がインパクトは大きいとみており、今日はそのあたりもお聞きできるかと楽しみにしていますので、よろしくお願いします」と挨拶ののち、「中国情勢」、「EVの最新動向」、「先端技術動向(量子コンピューティング)」の3講演を行いました。

中国の最新事情・今後の見通し、
日系企業の動向や米中関係等について

日本貿易振興機構 調査部 中国北アジア課 課長
清水 顕司 氏

2024年の中国経済は、5%程度の成長が見込まれていますが、不動産市場の低迷、民間投資の不振、消費意欲の減退、人口減少といった構造的な社会課題が持続的な発展を阻害しています。中国政府は経済の安定化に努めていますが米中対立の長期化と複雑化が今後の見通しを不透明にしています。中国からのEV輸出は、米国やカナダで追加関税が課せられているためASEANやメキシコ経由での輸出が増加しています。中国国内では、家電製品の買い替え政策が実施されていますがマクロ経済へのプラスの影響は限定的です。自動化やスマート化に関連する分野が特にこの政策の恩恵を受けています。特に、トランプ次期大統領の動向に注目が集まり不透明性が高まっています。
EUも不公正な貿易慣行の是正に動いており、中国は対外開放路線を堅持しつつ、先端技術をはじめとする「国産化」を加速する方針です。中国は依然として日本企業にとって重要な市場ですが日系企業の「拡大」意欲は過去最低となっています。多くの企業が「脱中国」を検討する一方で、中国内外のビジネス環境の変化、中国の政策変化、中国企業の競争力向上などを考慮しポートフォリオやサプライチェーンの調整・再考を迫られています。
中国の政策決定プロセスにおいては、情報がトップに届きにくくなっている可能性も指摘されています。中国は法律を整備し規制を強化する傾向にあり、特にデュアルユース品目の輸出管理を強化しています。日本企業は、アメリカの輸出規制を遵守しつつ中国からの報復を避けるという難しい状況に置かれています。
中国に進出している日系企業は、事業拡大よりも現状維持を志向する傾向が強まっており、一部では縮小や撤退の動きも見られます。特に自動車関連企業では、生産ラインの縮小や人員削減が進んでいます。しかし、中国市場の重要性は依然として高く、現地法人との連携強化やロビー活動、販売サポートによって、日本企業はまだまだビジネスチャンスはあるのではないかと考えます。

「電動化」と「知能化」が
自動車産業にもたらすインパクト

デロイトトーマツコンサルティング合同会社
Autoユニット ディレクター
柴田 信宏 氏

現在の自動車業界は、CASE、MaaS、カーボンニュートラルといったトレンドにより、100年に一度の大変革期を迎えています。新車販売は頭打ちとなっており、成長は新興国に依存する状況です。そのような中、近年自動車は「走るコンピュータ」へと進化しており、成長が見込まれるCASE関連と、徐々に衰退する従来のコンベ関連の二極化が進みソフトウエアによる車両制御がますます重要になっています。電動化と知能化は、サプライヤーのビジネスモデルを根本から変えるほどの影響を与え、自動車業界を取り巻く環境変化は、作る場所が変わる、作る部品が変わる、作り方が変わる、売り方が変わる、稼ぎ方が変わる、といった自動車OEMおよびサプライヤーのビジネスにとって大きな変換点となり、部品を供給するサプライヤーも新たな技術やビジネスモデルへの対応が必要となります。また電動化と知能化=スマート化への移行は別の概念ですが、議論の中で混同されやすいという指摘もあります。EV化によって発生する需要と、スマート化によって発生する需要を区別して考える必要があり、自社の取り扱い部品の強みを活かした新たなビジネスモデルを既存・新規参入プレイヤーの動向を踏まえつつ構築し、今後のサプライチェーン構造変化に対応していく必要があります。

量子コンピューティングの産業化に向けた
産総研の取り組み

国立研究開発法人産業技術総合研究所
量子・AI融合技術ビジネス開発
グローバル研究センター
副センター長 吉田 良行 氏

量子コンピュータは、従来のコンピュータとは異なる原理で動作する全く新しいタイプのコンピュータです。量子力学という物理学の分野で生まれた「重ね合わせ」や「もつれ」といった概念を活用することで、従来のコンピュータでは不可能だった複雑な計算を高速に行うことができます。その方式はゲート型とアニーリング型の大きく2つの種類があり、ゲート型は汎用的な計算が可能ですがアニーリング型は特定の種類の問題を高速に解くことに特化しています。その高い計算能力から、新薬開発、新素材開発、人工知能など、様々な分野で革新的な応用が期待されています。しかし、量子ビットの安定性や大規模化といった課題も残っており、実用化にはまだ時間がかかるでしょう。それでも今後、私たちの社会を大きく変える可能性を秘めた技術として注目されており、日本政府は量子コンピュータの研究開発を積極的に推進しており産総研などの研究機関が中心となって量子コンピュータの産業化に向けた取り組みを進めています。今後、私たちの社会を大きく変える可能性を秘めた技術として注目していただきたいと思います。

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