IEC TC40 東京会議報告
2024年11月18日(月)から21日(木)、IEC TC40(電子機器用コンデンサ、抵抗器、サーミスタおよびバリスタ)の国際会議が、東京大手町のAP東京丸の内で開催されました。2019年以前は、毎年10月から12月にかけて対面で開催されていましたが、2020年~2022年の3年間は、コロナ禍の影響により、対面での開催は困難であったため、Zoomを利用したWeb会議を開催、2023年からは対面会議とWeb会議を組み合わせたハイブリッド会議で開催されています。このハイブリッド会議は、世界中どこからでも参加可能となり、約200名(延べ人数)の参加がありました。
国際幹事:R. Drenthen氏(オランダ)
国際議長:M. Schwerdtfeger氏(ドイツ)
Pメンバー:投票権がある参加国 14カ国(日本含む)
Oメンバー:投票権がない参加国 16カ国
WG(ワーキンググループ)数:4
JWG(ジョイントワーキンググループ)数:1
AG(アドバイザリーグループ)数:1
エキスパート数:164名
日本での審議団体:JEITA
国内委員長:中林 種広(株式会社村田製作所)
実装部品包装: WG36(Packaging)
TC40/WG36では実装部品の容器包装の標準化とその推進を行っています。国際会議では次の案件について報告を行いました。
①IEC 60286-3の提案について
米国よりIEC 60286-3(表面実装用部品のテーピング)とEIA-481の整合(テーピングにおける部品の1ピンマーク位置の定義)について提案があり、それに対する日本の案を説明しました。各国、各地域によって1ピンの概念が異なり、完全な規格統一は難しいことから他の規格(IEC 61188-7)と同じようにレベルA、Bに分けて公開することを提案しました。国際会議では両国の提案内容をそれぞれ回覧して協議を継続することが決定されました。
②IEC 60286-5(マトリックストレイ)のESD評価について
現行の規格は静電気の評価に関して、ペレット(材料状態)での表面抵抗値の測定しか記載されていません。実際に成形されたトレイとペレットでは表面抵抗値に大きな違いがあり、同一トレイ内でも場所によってESDの分布に差があることが確認されています。これに対して、当委員会では新たな評価方法を確立するため、国内外の有識者を集めアドホック会議にて検討を行っており、その近況を報告しました。
コンデンサ: WG40(C, L & Filters)
TC40/WG40は、コンデンサ、インダクタおよびフィルターに関わる国際標準化を担当しています。東京会議では多くの規格の制定および改正についての審議を行いました。日本は、進行中の規格だけでもIEC 60384-4および-18(アルミ電解コンデンサSS)、IEC 62391-2(電気二重層コンデンサSS)、IEC 62813(リチウムイオンキャパシタ)など多くの規格のプロジェクトリーダーを務めています。
トピックスとしては、IEC 60940(電磁障害防止用部品の安全規格)について活発な審議が行われました。この規格は安全にかかわる規格となることが企図されており、もしこの規格が発行されれば将来世界各国の電気電子製品安全法の技術基準になり得る可能性があります。日本からは、CD(委員会原案)に記載されている電源回路上のXおよびYコンデンサの置換ルールに対して問題提起を行い、その対策の具体案を提示しました。審議の結果、日本が提示した全ての案は各国の同意を得ることができました。今後はこれらを具体的に規格に反映していくため各国のエキスパートが集まり会議を開催し、その中で日本の意見を反映した規格づくりを進めていきます。

TC40/WG40の会議の様子
抵抗器: WG41(Resistors)
TC40/WG41では、固定抵抗器、可変抵抗器などを含めた抵抗器に関わる国際規格を担当しております。
会議では、昨年発行されたIEC 60115-8(表面実装用固定抵抗器)で規定された推奨試験基板の温度測定結果をまとめたテクニカルレポートを新たに日本から提案を行いました。他国からより良いテクニカルレポートにするために、ラウンドロビンテストを幅広く行うべきとインド・フランスなどがデータ取りに協力を得ることが出来ました。また、近年の品目別通則の改訂が終わり、改めて親規格であるIEC 60115-1(固定抵抗器の品目別通則)に新たな用語や技術的内容を反映することが必要となり、日本がPLとして改訂を行うことが決定しました。
最後に、今回のWG41では、活動をより活発に行うために、WG secretaryを設定することが提案され、そのポストに日本のエキスパートが選出され、承認されました。これにより、日本の意見をより反映した規格づくりが可能となると思っております。
総務/企画: AG42(General Items)
TC40の企画、総務又は広報部門にあたるAG42の現在の中心的課題は、TC40規格作成のガイダンス文書の発行であり、その内容に何を盛り込むかを東京会議で議論しました。
ISO/IEC専門業務用指針は国際規格作成プロセスのルールブックですが、その内容は膨大である一方でTC40の製品規格に特有の内容の構成の仕方までには記述は及んでいません。従ってTC40の中で必要な規格作成のルールをISO/IEC専門業務用指針から抽出し、かつTC40の製品規格に特有の規定の作成のルールおよび規定文の定型表現も加えてガイダンス文書を作成することを企図しています。
まとめ
今回の国際会議は、東京開催ということで、いままで参加経験のないメンバーや、Web会議でのみ参加されていたメンバーも対面会議に参加され、Web会議では決して読み取れない相手の表情や、場の雰囲気の理解、相互のコミュニケーション改善を経験することができました。また、休憩や食事時間の雑談など、人脈作りにも大変役立つ会議でした。来年2025年度は、フィンランドでの開催となりますが、今回の経験を活かし、積極的に国際会議に貢献してくれるメンバーが増えると思っています。

TC40メンバー写真

TC40全体会議の様子