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活動報告事業推進部

JEITA国際戦略・標準化セミナー報告
イノベーションの継続的な創造に向けての政策と標準化動向
~イノベーション・マネジメントシステム(IMS)の認証規格ISO56001の概要と企業の導入への取り組み~

JEITA標準化政策部会配下の標準化運営委員会では、ISO/IECなどで取り組まれている国際標準化課題について、日本としての対応を検討しています。2024年9月にISO56001イノベーション・マネジメントシステム( IMS)の認証規格が制定されました。今回は、このことを受け、2024年12月10日にIMSの認証規格の概要と実際にIMS導入に取り組んでいる企業事例を「JEITA国際戦略・標準化セミナー」にて紹介しました。


左からOKI野中氏、OKI青木氏、KOA坪木氏、JIN紺野氏、経産省小太刀課長、相薗委員長、千村副委員長

第一部 イノベーションに関する政策動向

経済産業省 イノベーション・環境局
国際電気標準課
小太刀 慶明 課長

経済産業省では、2024年7月1日にイノベーション、GXの推進に向けた体制整備策として、産業技術環境局からイノベーション・環境局へ改称しました。具体的には、イノベーション、スタートアップ支援を担う課を新設しました。継続的なイノベーションの創出のためには、①新たな「技術・アイディア」を生み、②その事業化による「新たな価値の創造」を通じて、③これを「社会実装して市場創造・対価獲得」することが重要であり、こうして実現したイノベーションの成功モデルが、次なるイノベーションを生む「循環」が大切です。
経済産業省では、研究開発の量および質の拡充、事業化・付加価値創出のためのイノベーション資源(人材、技術、設備等)の流動化、「技術・アイディア」から「新たな価値」「市場創造・対価獲得」に至るまでの横断的な取り組みを進めていきます。
そのためには、スタートアップと大企業のそれぞれの強みを生かした連携のための政策が欠かせません。また、昨年度に作成した「日本型標準加速化モデル」を具体化するための各種施策(標準化人材育成・活用、OCEANプロジェクト(特定新需要開拓事業活動計画の認定制度)の創設、認証産業活用の在り方の検討など)を推進しています。
イノベーションを推進する上で、IMSが共通言語としての役割を果たすことが期待できます。また、IMSを通じ、企業や組織において継続的にイノベーションが起こり得る仕組みが構築されていることを外部に客観的に示すことができると言った効果も期待されます。
経済産業省としましては、これらイノベーション促進のための施策により、我が国企業の競争力、ひいては産業全体の持続的な競争力の強化に向けて取り組んでまいります。

【継続したイノベーション成功モデルの実現が必要】

第二部① イノベーションの継続的な創造に向けての政策と標準化動向

イノベーション・マネジメントシステム(IMS)の認証規格ISO56001の概要と企業の導入への取り組み

一般社団法人 Japan Innovation Network(JIN)
紺野 登 代表理事

一般社団Japan Innovation Network(JINジェイ・アイ・エヌ)は、経済産業省の「フロンティア人材研究会」の委員が主となり2013年にイノベーション経営の振興を狙いに発足しました。JINは、ISO/TC279の日本代表として参加し、国内審議委員会の委員長と事務局を担当しています。
イノベーションとは、技術革新やインベンションではなく、新しい価値を具現化することです。コロナ禍以降、イノベーションを経営の最優先事項に置く企業が世界で増えています。いくら新しい技術を開発、導入しても組織が古い行動規範のままではイノベーションは起きません。イノベーションを持続的に起こしていくには、社内のエコシステム即ちイノベーション・マネジメントシステムが必要です。イノベーションのための組織文化や規範を育むためにも、こうしたシステムは欠かせません。
ISO56002は、イノベーション・マネジメントをシステマティックに行うためのガイダンス規格であり、2019年に制定されました。これを基に2024年9月に認証規格ISO56001がグローバルに発行されました。ISO56001によりIMSを導入・実践している企業を外部機関が判断、認証できるようになります。
また、イノベーションの実践にはIMS、トップのリーダーシップ、イノベーター、さらにイノベーション・マネジメントを深く理解するプロフェッショナル(IMP)が必要です。JINは、IMS導入を目指す企業およびIMPの育成を支援してまいります。

【IMS×イノベーター×IMP】

よりイノベーションが興りやすいマネジメントに向けて

JEITA IM研究会
野中 雅人(OKI) 主査

JEITAでは、2021年度に標準化政策部会/標準化運営委員会配下にISO/TC279イノベーションマネジメント(IM)研究会を発足しました。本研究会では、JEITAに参加している9社によりイノベーション・マネジメントシステム(IMS)について調査・研究し、国際標準化への貢献および事例の共有などを行ってきました。
参加各社は、以前よりさまざまなイノベーション・マネジメントを行っており、その取り組みとISO56001の関係を整理しました。その結果、多くのこれまでの取り組みは、ISO56001で定義されている内容に含まれていることがわかりました。一方でこれまでの取り組みでは、イノベーション・マネジメントのパフォーマンスを評価し、改善していく点が弱いことも見えてきました。IMSを導入することで、より効率的にイノベーションを興せるようになることが期待されます。また、ISO56000シリーズで使用している用語は抽象的な表現が多く、英語を日本語に翻訳しただけでは理解しにくいため、研究会内で議論し、わかりやい用語の定義をしています。
今年度中にこれらをまとめた報告書を公開予定です。本日は研究会に参加している会社の中から、KOAとOKIの2社に事例を紹介いただきます。

【ISO56001と実施しているイノベーション・マネジメント】

第二部③ KOA株式会社 事例紹介

KOA株式会社 KPS-3イニシアティブ
IMS推進センター
坪木 光男 ゼネラルマネージャー

KOAは、信州伊那谷に本社を持つ創業84年の電子部品メーカーです。1990年頃、「経営のムダを徹底して廃除し、新しい経営システムづくりを目指す全員参加の改善活動」としてJITを取り入れ、KPS(KOA Profit System)を開始しました。KPS-2で品質マネジメントシステムを導入、KPS-3で現在のIMSの導入に至っています。長期視点で会社のありたい姿を描くため、35歳平均の若手中心に2030ビジョンを策定し、KPS-3(価値創出)の活動をしています。
新規事業の一例として、2023年に商品化した「風速センサ(Windgraphy)」があります。2010年に温度センサの展示から活動が始まり、2016年から「風を見える化」するコンセプトに基づき、事業開発を始めました。リーンスタートアップの手法で仮説検証を行うなか、既存の仕組みではなかなかうまく進めず、仕組みや体制を試行錯誤しながら事業化を行いました。この10年間の試行錯誤の学び・経験から、新たな仕組みを検討している時、2019年に制定されたISO56002を知り、導入を決定し、本音の対話を通じて仮説・検証がしやすい組織・文化を作ってきました。今後も新規事業の創出と既存事業の深化に向けて、IMSを磨き続けていきます。

第二部④ 沖電気工業株式会社 事例紹介

OKIの全員参加型イノベーションと創出事例

沖電気工業株式会社
イノベーション事業開発センター企画室
青木 聡 室長

OKIでは、「全員参加型イノベーション」を提唱し、実践しています。「新規事業創出」や「既存事業改革」だけでなく、「業務改善」もイノベーションと定義し、全ての社員が意志を持ってイノベーションにチャレンジし、「社会の大丈夫をつくっていく。」ことがビジョンです。既に、ISO56001に基づくOKIのイノベーション・マネジメントシステム(IMS)「Yume Pro(ユメプロ)」を全部門に導入しています。デザイン思考に基づき、お客様の現場のお困りごとを洞察し、高速回転で仮説・検証を繰り返します。この活動から発想された新しいアイデアの社内コンテスト「Yume Proチャレンジ」も2018年から開始し、アイデア応募総数が1,188件と増え続けています。また、イノベーターを支えるための加速支援を行えるハイポテンシャル・イノベーション人材の育成にも着手しています。2023年11月に発表したイノベーション戦略2025に基づき、高度遠隔運用プラットフォーム「REMOWAY TM」や配送最適化ソリューション、行動変容サービス「Wellbi TM」、CFB R(クリスタル・フィルム・ボンディング)の新領域の開拓に取り組み、一部商品化も進んでいます。今後は産官学連携での共創とグローバル市場への展開により、新しい価値創造を加速していきます。

主な質疑とセミナーのまとめ

今回のJEITA標準化セミナーは、オンラインで開催し、約160名が参加しました。
参加者からはチャットで質問があり、また講演者同士での意見交換も行いました。主な質問と回答を共有します。
質問:OKIの青木さんに質問します。ハイポテンシャル人材の育成を図っているとのことですが、イノベーション人材の育成は。イノベーション部門が独自に行っているものですか?それとも人事部門と連携して全社で行っているものですか?
回答:人材育成は、人事部門、経営企画部門とイノベーション部門が連携して一体で計画策定、実行しています。今年度から、今まで以上に連携強化して推進しています。

最後に、経済産業省の小太刀課長に本日のセミナーの感想をお聞きしました。
小太刀課長:本日のセミナーではIMSの重要性と先行する事例も共有いただき、有効でした。標準化は新たな価値創造のツールです。新しい市場の創造につながるように経済産業省としてもしっかり支援していきたい。
ご参加、ご講演いただいた皆さん、ありがとうございました。

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