IEC TC91 東京会議報告
TC91概要
TC91(電子実装技術)は1990年に設立、日本が幹事国を務めており、実装技術を中心とした部品とセットとのインターフェイスに関する幅広い領域をカバーしています。2024年10月現在、国際幹事:池田 靖 氏(ミネベアパワーデバイス)、国際議長:Udo Welzel 氏(独国 Bosch)、Pメンバー(投票権を持つ国):12カ国、Oメンバー(オブザーバーの国):18カ国の傘下に10のWG(Working group)、1のJWG(Joint Working Group)、1のAG(Advisory Group)があります。また、TC91の受託審議団体はJEITAであり、TC91国内委員会・委員長には平本俊郎氏(東京大学)が就任し、議事運営を行っています。
参加メンバー2024年6月10日(月)~14日(金)に東京大手町にあるAP東京丸の内にて、IEC TC91の国際会議およびJIC(Jisso International Council:国際実装技術協議会)会議が開催されました。各WG会議では多くの日本提案をはじめ、IEC規格案に関して活発な議論が行われ、それぞれ大きな進展が得られましたので各WGの活動について紹介します。
WG1:電子部品への要求事項
IEC 61760-1(SMDの仕様および実装工程の標準)およびIEC 61760-4(感湿性部品の分類、包装、ラベル)および取扱い)の改訂などの審議を行いました。また、新規提案ではソルダーレス接合技術の1つである焼結技術や、パッケージと保護コーティングの品質認証手続に関する規格化の提案があり、市場ニーズを見据えた規格化の議論ができました。
WG2:電子アッセンブリへの要求事項
IEC 61191-1(回路配線板実装)をはじめ5案件のメンテナンス状況の確認と新規提案ではIEC 61191-X-2(レーザーアシストボンディングにおける出力プロファイル設計ガイドラインのDTRについて説明があり次のステップに進むことが合意されました。
WG3:電子アッセンブリに関する試験方法
半導体との連携、熱設計、IPCとのMoU、部品洗浄と基板のコーティング、焼結材料など新しいトピックスが話題となりました。また、SMDのウエッティングバランスによるはんだ付け性の評価方法、ウィスカに関するTR、高温接合材料に関する IEC 63215シリーズへの日本から文書見直し準備の状況報告がありました。新規提案では結露試験の提案やWG10によるCTを使ったボイド測定などの活動報告などの紹介があり闊達な意見交換がされました。
WG4:回路基板および材料
IEC 61249-2-52(炭化水素/ガラスクロス基材)およびIEC 61249-2-53(強化基材、クラッドおよび非クラッド - PTFE非充填ラミネートシートの燃焼性(垂直燃焼試験))のCD文書に対するコメント対応が議論されました。また、今後のNP候補としてパッケージ基板用変性エポキシドビルドアップフィルム、リジッド有機パッケージ基板の一般仕様等の紹介がなされました。
WG5:語彙
IEC 60194-1(回路基板の設計、製造および組立―用語)においてJIS化を進める際に疑義があった150もの用語について再レビューを行い、審議が及ばなかった分は継続して検討することになりました。
WG6:部品内蔵実装技術
IEC 62878-2-603(積層型電子モジュール内部を含むモジュール全体の電気的接続の評価方法)やIEC 62878-2-604(積層型電子モジュールの熱管理のガイドライン)の進捗状況が確認されました。また、新規提案では以前にガラス基板材料と微細孔付きガラス基板に関する国際規格化が独国から提案されましたが、標準化対象となるアプリケーションが不明確なため今回の会議では議論が見送られました。
WG10:回路基板に関する試験方法
IEC 61189-3-302(CTによる無電解めっき回路基板のめっき欠陥の検出)およびIEC 61189-3-303(相互接続構造(回路基板)の試験方法 - 回路基板上のトレースのエッチファクタ測定)のCD文書に対するコメント対応が議論されました。
WG12:回路基板と回路基板実装の設計手法およびデータ転送
IEC 61188-6-3(THTランドパターン設計指針)がFDISに進むことが承認されました。また、TC91活動に復帰した仏国委員から基板設計パラメータに関する新プロジェクト提案がありました。AFNOR標準をIEC標準に格上げするというものであり、各国意見を収集し9月TC91ロンドン会議で対応を検討することになりました。さらに注目度の高いAME(Additively Manufactured Electronics)のデータフォーマットについて情報共有しました。
WG13:デザインオートメーション(部品、回路および記述言語)
半導体自動設計検証の分野で広く活用されている2件の標準であるSystem Verilog(IEEE1800-2023)および電子設計知的財産(IP)(IEEE1735-2023)をDual Logo合意に基づいてIEC標準とすべきか議論が行われました。
WG15:デザインオートメーション(電子機械製品の試験方法)
複雑化するテストを確実に進めることを目指した日本提案のIEC 63569(テストプログラム開発のための高位要件記述手法)のWD案完成に向けて詳細な議論を行いました。
AG16:標準化戦略とリエゾン調整
TC91とIPC間のMoU締結の進捗状況の共有、JAHG9「エネルギー社会を支えるパワー半導体に関する白書」への参画、TC112 とのJWG「アディティブマニュファクチャリング技術で製造された電気・電子絶縁材料の評価と認定」等について議論がなされました。
JIC
JICは電気電子機器、モジュール、回路基板等の実装技術およびアプリケーションの最新動向を共有および議論する機会を研究者、製造メーカー、標準化関係者に提供する場となっています。今回、日本からマルチチップパッケージの技術動向やサーマルマネジメント用の測定方法の考え方など4件、独国、フィンランド、韓国、米国、中国から合わせて9件の報告があり、今後の標準規格化に向けた有用な情報交換ができました。
JICの様子
今後の予定
2024年秋:ロンドン(Plenary会議)
2025年春:シンガポール