第17回 機器・部品メーカー合同懇談会
電子部品部会では、関係する企業を招聘し、業界動向やトレンドなど最新のトピックス、グローバル戦略等について講演いただくとともに、相互の理解促進を図るため、関連メーカーの経営幹部による懇談の場として10月7日(月)にハイブリッド形式にて、「第17回機器・部品メーカー合同懇談会」を開催し、3件の講演を実施いたしました。
テストから観た半導体トレンド
株式会社アドバンテスト
経営戦略本部 主席ストラテジスト
田中 玄一 氏
アドバンテストは、電子計測技術を活用して産業界のさまざまな課題にソリューションを提供する会社です。半導体テスタを軸に、シナジーを生み出すソリューション群を提供しており、半導体検査装置で世界最大手です。
業界トレンド
データ量の増加に伴い、データセンターの重要性が増しています。さらにデジタル化の進展により、スマホやEVに限らず、あらゆる分野でAIが使われるようになります。
半導体トレンド
半導体の産業規模は、電器産業の20%を超える、ATEは半導体の1%です。半導体は広義のムーアの法則に従い進展する中で、半導体テストに関しては、設計とテストの協働、プロセス微細化、システム複雑化等に対応する必要があります。
Digital Twin
半導体の設計だけではなく、テスト分野でもAIを使っています。設計時にAI適用することにより、製造およびテストを予測します。しかし、AI適用の今後の課題としては、膨大なデータの効率的な収集と統合的な管理/モデル化、データ量増加と能力向上/高抽象化のトレードオフ、成功最終データだけでなく途中失敗データ等も重要になります。
まとめ
2030年には1兆ドルに到達すると予測されている半導体市場において、システム複雑化により、テストの重要性はますます高まる環境下で、AI活用など設計とテストが協働する必要があります。
電子部品、半導体、テストでビジネスを発展させましょう。
Infineonから見た車載市場と、車載用半導体戦略
-JEITA電子部品部会様への影響-
インフィニオン テクノロジーズ ジャパン株式会社
代表取締役社長
本社 シニアバイスプレジデント
オートモーティブ事業本部 事業本部長
神戸 肇 氏
インフィニオンテクノロジーズは、オートモーティブ事業が全体の51%を占めており、半導体を含むマイクロエレクトロニクスは、オートモーティブのメガトレンドを支える基軸となっています。2023年、車載半導体の市場規模は、16.5%成長の692億ドルと史上最高となっており、その中で、インフィニオンは引き続き1位を堅持しています。日本においても第2位の地位を築いています。過去8年平均18億ユーロ、2024年度においては、約30億ユーロにものぼる積極的な投資をしています。
車載電動化
車の電動化に伴い、半導体搭載金額は増加し、2024年の内燃機関750ドル、BEV1,300ドルに対し、 2030年のBEVには、2,000ドルの搭載を予測しています。
引き続き、パワーシステムのリーダーとして、幅広いコントローラー、ドライバーIC、パワースイッチ(Si/SiC/GaN)を提供していきます。
OBC/DCDCの新しいシステムソリューションを牽引する6つの市場要求として、「より高耐圧に」「より小さく」「より高効率に」「双方向対応」「各種バッテリー電圧への対応」そして、「幅広い車載アプリケーション対応」があげられます。半導体のみならず、受動部品と機構部品の最適化が、今後のカギとなります。電子部品に必要とされる要求事項は、「長期信頼性の強化」「高速応答リレーによるハーネス・コネクタサイズの最小化」「高周波動作に対応するセンサの広帯域化」「トランスの低背化・高周波対応化」「高周波動作、高スルーレートに対応するEMI対策の検討」「多様なコンデンサポートフォリオ」などがあげられます。
次世代車載(E/E)アーキテクチャ
ソフトウエア ディファインド ビークル(SDV)と、BEVシフトがE/Eアーキテクチャの進化を推進します。E/Eアーキテクチャの進化のトレンドとして、電源分配の分散化と、EthernetやCANによる車内ネットワークの統合化があげられます。また、従来のヒューズとリレーを、半導体スイッチ(IPD)で置き換えることによって、BEVの電源管理に対応したスマートな電源分配が可能になります。E/Eアーキテクチャの進化に伴い、将来的に高電圧回路のEMC対策がより重要になり、対応する電子部品が必要となります。
電子部品への影響
今後の車載市場は、電動化と次世代車載(E/E)アーキテクチャによる変革の時期にあり、新しい市場要求に対して、新しい電子部品と半導体デバイスが必要となります。
IOWN -通信から挑む持続可能な社会の実現-
日本電信電話株式会社 研究企画部門 IOWN推進室
室長 荒金 陽助 氏
データセンターのデータ量・電力量の急増により、人間の限界を超えた認知や対処の実現、それを可能にするICT基盤が必要になってきます。2019年5月に、大容量、低消費電力、低遅延の次世代の光ネットワークとコンピューティング基盤によるIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)という構想を提唱しました。伝送損失に焦点を当てると、電気より光の方が、大容量の情報を送るという観点で効率的なものを実現できます。
IOWN 1.0では、テレコム用中継装置に、IOWN2.0では、ボード間接続用に光を導入していきます。光電融合デバイスの小型化、低消費電力、低発熱を実現することで、チップのすぐそばまで光を持ってくることができ、電気で情報を送る距離を短くします。2025年の大阪万博でデモンストレーションすべくボード間接続用の開発を行っています。さらに、それを小さくしていくのが、IOWN3.0、4.0であり、IOWN3.0では、パッケージ間接続用に、IOWN 4.0では、ダイ間接続用と世代を重ねるごとに、光電融合技術の進展とともに、適用領域も変化します。
IOWNの通信 ALL-Photonics Network(APN)
IOWNのオールフォトニクスネットワーク(APN)では、これまで経路制御をする要所要所で電気に変換していた光通信をそのままエンド=エンド直通で光のまま通信が行われます。APNは2023年3月にサービスを開始しており、【IOWNサービス第一弾】IOWN1.0は、100Gbps専用線、ユーザーがエンドエンドで光波長を占有、APN端末装置で遅延の可視化と調整が可能となっています。ネットワークを構成する機能を分割可能とすることで効率的なネットワーク構築を可能としています。
データセンター間のAPN接続とサステナビリティ
データセンターの大型化・大電力消費化により、都市部での建設が困難になっています。APNにより、立地のコスト、電力調達の柔軟性が格段に向上し、郊外立地のデータセンターが可能になります。
分散型データセンター実現に向け、国内および米英でデータセンター間のAPN接続の実証実験を実施、約100km離れているデータセンターをあたかも1つのものとして運用可能にしています。今後、米英以外のエリアでも展開予定です。
NTTと中華電信で、世界初の国際間APNを開通し、日本と台湾間の約3,000kmをわずか約17msecの超低遅延で接続しました。
通信がコンピュータを変える
IOWNでは、ディスアグリゲーテッドコンピューティングを採用しています。「箱」単位の並列化をボード・チップ単位の並列にすることにより、電力効率は、8倍になります。DCI(Data Centric Infrastructure)という、計算機リソースを細分化し、データ処理の目的に応じて、リソースを最適に組み合わせるアーキテクチャを採用、細分化した計算機リソース間の接続にAPNや光電融合技術を使います。
仲間づくり IOWN Global Forum
2020年1月、NTT、インテル、ソニーがコミュニケーションの未来を目指して国際的なフォーラム「Innovative Optical and Wireless Network (IOWN) Global Forum」を設立しました。新規技術、フレームワーク、技術仕様、リファレンスアーキテクチャの開発を通じ、新たなコミュニケーション基盤であるIOWNの実現を目的とする非営利団体です。2024年9月時点で、アジア・米州・欧州を含む153組織・団体が参画しています。テクノロジーとユースケースの両方に取り組み、よりスマートな世界を実現すべく活動していきます。