IEC TC100CAGシンガポール会議報告
TC100概要
IEC TC100(AV・マルチメディア、システムおよび機器の技術分野に関連する国際標準):1995年10月に設立-2004年1月より日本が幹事国を務めており、現在、国際幹事:上原まひる氏(ソニーグループ)、国際副幹事:佐久間正剛氏(東芝)、田中宏典氏(パナソニック ホールディングス)、Pメンバー(投票権を持つ国):22カ国、Oメンバー(オブザーバーの国):25カ国、傘下に11のTA(Technical Area)がある。なお、TC100の受託審議団体はJEITAであり、TC100国内委員会を運営している。
2024年5月6日~5月10日にシンガポールで、IEC(国際電気標準会議)TC100(AV・マルチメディア、システムおよび機器)CAG(Chair's advisory group, 議長諮問グループ)および傘下グループの会議が開催され、活発な議論が交わされました。以下では会期中の審議・決議の中から重要な議案について紹介します。
A. 主な規格化提案
1. TC100/WG12:メタバース
メタバースに関連する3つのPWI(Preliminary Work Item): PWI100-49(パート1:一般)、PWI TR100-58(パート2:分類)、PWI TR100-59(パート3:ギャップ分析)について国内委員からのコメントの受け入れおよび修正案の説明がありました。またPWI100-49とPWI TR100-59はTR(Technical Report)、PWI TR 100-58はIS(International Standard)としてプロジェクトを進めることが議論されました。
新規提案については「Spatial sound for Metaverse device」と「Omnidirectional situation awareness」の2つの新規規格案が提案されました。これらの提案は、次回の高松会議でより詳細なスコープと内容が説明される予定です。
2. TC100/TA6:ストレージ
IEC TR63475: Overview of Universal Archive Disk Format(UADF)が2023年11月27日に正式発行に至ったことを報告しました。UADFは現在DVD/ブルーレイディスク等で採用されているUDF(Universal Disk Format)の拡張という位置づけである一方、光ディスクに限らずメモリを含めた他のストレージに広く共通に適用でき、かつストレージの特性に合わせてアーカイブシステムを構築できます。下記にUADFでMulti Volumeを実現する例を示します。
TR63475ではUADFの概要を記述しており、次のステップとしてUADF規格をISとして作成するためのPWI提案の準備を進めています。
3. TC100/TA15:WPT(ワイヤレス給電)
将来、家庭内に見守り等の自走式機器が複数台稼働することが想定されます。共通の充電器でワイヤレスに給電することが望ましく、複数のデバイスを自律的に制御するTR作成が韓国から新たに提案されました。
4. TA18:エンドユーザーネットワーク
IEC 63430(Data container format for wearable sensor)の進捗が報告され、昨年のフランクフルト総会以降CDV文書の作成準備を行い、現在CDV回覧を行っています。
多様なHaptics感覚を分類するための記述子を定義するTS63528((Haptics stimuli descriptors)は、4月よりCD回覧を開始、6月21日に終了し、次のステップに進む見込みです。
また、国内のメタバース標準化Gの議論を受け、井出氏(TIS株式会社)による「Alignment of Heterogeneous Media Data Streams」に関するTRのPWI設立が提案されました。提案はCAG(Chair's advisory group)からの設立の勧告を受け、現在PWI設立に向けたQ文書の回覧を行っています。
5. TC100/TA20:オーディオ
韓国からIEC 60268シリーズの新たな提案について進捗状況の共有がされました。Electrical and mechanical measurements of distributed mode loudspeakersというタイトルでこの提案は近年テレビにエキサイター(加振器)を画面の背面に装着し画面を振動させ音声信号を再生するスピーカー構成があり、そのスピーカー測定方法についての新規規格提案。今回スコープにしているスピーカー駆動方法は、一般的なスピーカーの駆動方法(ピストンモーション駆動)と異なるため、スピーカー測定結果として抽出すべきパラメータが異なり現在調査中という進捗共有がありました。
B. 国際役員の交代
TC100/TA6国際幹事が中村竜也氏(キヤノン)から山下英明氏(パナソニック)に交代することになりました。また、TC100/TA18国際副幹事に松野孝也氏(帝人)が就任することになりました。
C. TC100国際役員
現在の傘下TAと日本人国際役員は下記の通りです。
- TA1:
- 音声・映像・データサービス・コンテンツ用端末
議長:佐久間正剛(東芝)
- TA2:
- 色彩計測および管理
議長:杉浦博明(三菱電機)
副幹事:奥田悟崇(三菱電機)
- TA4:
- デジタルシステムインタフェース
- TA5:
- ケーブルネットワーク
幹 事:田村博夫(ジャパンケーブルキャスト)
副幹事:鹿嶋一考(古河電工)
議 長:松本卓三(古河電工)
- TA6:
- ストレージ
幹事:山下英明(パナソニック)
議長:勝尾聡(ソニー)
- TA15:
- ワイヤレス給電
- TA16:
- AAL(自立生活支援)、アクセシビリティおよびユーザインターフェース
- TA17:
- 車載機器、マルチメディアシステムおよび機器
議長:小出啓介(広島市立大学)
- TA18:
- エンドユーザネットワーク
幹事:小出啓介(広島市立大学)
副幹事:松野孝也(帝人)
議長:田中宏和(広島市立大学)
- TA19:
- 環境
- TA20:
- オーディオ
幹事:鈴木伸和(ソニー)
D. 今後の予定
TC100国際幹事より、今後の予定について、下記のような説明がありました。
2024年11月:Plenary会議:日本・高松
2025年 5月:CAG会議:中国
2025年11月:Plenary会議:米国
E. 国内対応
TC100にて審議しているIEC規格は、AV&IT標準化委員会にて審議しており、メタバースについては、国内対応組織を設置し、第1回の会議を6月に開催しました。
F. 表彰関係
IEC活動推進会議第34回総会が6月3日(月)TKPガーデンシティ Premium田町にて開催され、田中宏和氏(広島市立大学)がIEC活動推進会議議長賞を受賞しました。
広島市立大学:田中宏和氏
AV&IT標準化委員会
1)企業数:22社
2)事業概要
・マルチメディア(AV&IT)機器・システム分野の標準化推進とIEC TC100対応
・IEC TC100規格・ISO規格・JTC1規格の作成、提案、審議 国際会議対応など
・JEITA規格・JIS規格・国内関連規格の作成、提案、審議など
・上記分野の標準化方針、ビジョン、基本政策の策定と関連委員会への周知
・傘下の委員会間の課題解決調整、情報交換共有
・委員会、委員会の対外課題への対応と解決調整
3)関係リンク先
・AV&IT標準化委員会
https://home.jeita.or.jp/cgi-bin/about/detail.cgi?ca=14&ca2=384
・IEC TC100
https://iec.ch/tc100