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活動報告関西支部

2024年 新春特別講演会

関西支部の部品運営委員会および新分野・異業種研究専門委員会では1月17日(水)にハイブリッドで新春特別講演会を開催しました。

部品運営委員長「年頭挨拶」

最初に部品運営委員会の古橋健士 委員長(ホシデン(株)代表取締役社長)より「年頭挨拶」がありました。
「電子部品の世界需要は20~21年に伸長後、22~23年はダウンとなりました。為替の影響もありドルベースのダウン幅は極めて大きくなっています。19年ベースの24年予測は円ベースで32%の伸びですが、ドルでは4.2%。価格上昇もあるので、個数ではマイナスの可能性もあります。23年は自動車各社の生産計画に大幅な下方修正が相次ぎ、部品メーカーは深刻な影響を受けました。24年は計画通り進むよう念願している所です。また、JEITA電子部品部会では、経済安全保障と脱炭素を中心に、部品業界に関わるリスクをまとめています。脱炭素については取り組みに大きな差が生じており、特に、材料関連のSCOPE 3については、困難が大きいと認識しています。今後、業界全体で協調して対応を進めてゆく必要があります。」

中国経済の最新情勢と日本企業の事業運営

名古屋外国語大学 外国語学部の真家洋一 教授より講演がありました。

中国経済の現状と中国政府の政策動向

23年1~9月の実質GDP成長率は5.2%。消費は回復しつつありますが投資は低迷が続き、輸出がさらに下押しする構図となっています。民間の固定資産投資は-0.4%。不動産が-9.6%と落ち込んでいますが、製造業とインフラは6%近辺で安定しています。輸出入は回復基調ながら、伸びているのはロシアだけ。太陽電池、リチウム電池、新エネ車が輸出品目ご三家ですが、太陽電池の金額は既にマイナスに転落、リチウムイオン電池は数量は減少しつつも金額は拡大、新エネ車は数量・金額とも70%以上伸びています。輸入では半導体等製造装置が数量減ながら金額増。9月以降に急伸しましたが、レガシー半導体の投資拡大と輸入前倒しによるもので、長くは続かないでしょう。原油、天然ガスは価格下落により数量増、金額減。消費者物価指数は-0.2%。下落が続いていますが、豚肉価格と同期しており、デフレの懸念は少ないと思われます。
不動産市場の悪化は、リーマンショック時の景気対策による民間の債務拡大が発端となり、コロナ後の締め付け強化で、負のスパイラルに陥ったものです。20年末時点で、恒大集団の資産は開発中不動産が過半、負債の4割超が買掛・未払金で、自転車操業状態と言えます。23年第一四半期の不動産販売急回復は、コロナの反動に過ぎず、その後は再びマイナスに転落しました。政府債務もGDP比で増大し続け、借入先も融資平台(地方政府傘下のプラットフォーム企業)が拡大しており、非常に懸念されます。24年の経済政策は、3つの基本方針「積極的な財政政策」「穏健な金融政策」「マクロ政策の方向の一致性」の下、重点項目として、①科学技術イノベーション主導による現代産業体系の構築、②国内需要の着実な拡大、③重点分野の改革深化、④ハイレベルな対外開放の拡大、⑤重点分野におけるリスクの持続的かつ効果的な防止・解消、⑥「三農」(農業、農村、農民)活動の取り組み堅持、⑦都市と農村の融合および地域間の協調発展の推進、⑧生態文明建設およびグリーン・低炭素発展の推進、⑨民生の確実な保障・改善が挙げられています。

今後の見通し

GDP成長率の各種予測は「今年低下、来年はさらに低下」で共通しています。不動産が大きな要因ですが、高齢化も加速度的に進みます。日本は、高齢化社会から高齢社会への移行に37年かかりましたが、中国は30年で移行すると見ています。また、日本で人口減少が始まったのは超高齢社会突入後ですが、中国は高齢化社会段階の22年から減り始め、昨年は208万人減りました。今後も住宅購入年齢層(25~34才)は一時期を除き減少が続く見込みです。
日本経済研究センターによれば、中国には「不動産バブル崩壊・金融危機」と「貿易戦争激化」の二つのリスクシナリオが考えられます。米中は今後とも世界の2大経済大国であり、そのリスクが世界経済に大きな影響を及ぼすことは間違いありません。

中国ビジネスの注目リスク

日本企業の中国リスク認識は、地政学的リスクから環境、人権、サプライチェーン、金融に至るまで多岐にわたります。JETROによる企業アンケートでは、経済安保について対応の検討が必要とする回答は約8割に上りました。サプライチェーンの混乱・途絶、先端技術流出の脅威、米中の覇権争い・技術競争等を背景に多様な対策が講じられています。専門部署を設置する等の体制構築が大企業を中心に進んでいますが、社内リソースの不足、経営層の理解が不十分等の課題も上がっています。

欧米企業の中国ビジネス動向

米国企業の多くは、中産階級の拡大による国内消費増をチャンスと捉えつつ、米中間の緊張激化をリスクと考えています。中国外への生産・調達移転を検討する企業も増えてきました。欧州企業は、中国および世界経済の減速を一番のリスクと見ています。投資の国外移転を検討する企業は23年に急増。77%の企業が過去2年間にサプライチェーンの見直しを行っていますが、35%は大きな変更を見送りました。見直しの多くは、中国での地産地消に向けたものです。

日本企業の中国ビジネス展望

日本企業では、中国事業の課題として人件費上昇や販売価格の下落が多く挙げられています。JETROが毎年行うアンケートでは、今後の中国事業を「拡大」とする回答が23年に初めて3割を割りました。「現状維持」が6割強、「移転・撤退」はほぼ0。サプライチェーンの見直しについては、各社の考え方により、3つの方向性(国内回帰、地産地消、選択と分散=多元化、複線化)がみられます。

まとめ

①日本経済は中国抜きに成り立たちません。米中デカップリングはハイテク分野に限定されており、日本経済の再興には中国市場の開拓が不可欠です。②一方で、競争激化を背景に米中双方で経済安保に向けた規制が進み、さらなる強化も見込まれます。動向を注視し、規制対応に細心の注意を払う必要があります。③過剰な対応は、国際ビジネスを萎縮させます。他国企業の動向や関連規制の運用実態等を把握した上で、適切な経営判断が求められる所です。
講演後は、人口動態要因の影響度、中国各地域間の経済格差、台湾情勢、日系企業による新たな取り組み等、多様な課題について活発な質疑・意見交換が行われ、たいへん有意義な講演となりました。

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