2023年12月度 関西支部運営部会講演
支部運営部会では12月6日(水)の部会に大和ハウス工業(株)執行役員 情報システム部門担当の松山竜蔵 氏を招き、「全社戦略として進める大和ハウスのDX」と題する講演を行いました。また、同氏とNPO法人CIO Lounge 矢島孝應 理事長の対談により、DXを進める上での課題・ポイントを掘り下げました。
大和ハウス工業(株)松山氏による講演
当社では、事業が多岐にわたる中でDXを推進するため、企業のパーパスおよび中期経営計画の中にデジタル化の取り組みを明確に位置付けると共に、中計に連動する「IT中期経営計画」を定め、組織横断のテーマ(ライフタイム顧客接点強化、バリューチェーン統合・改革、新規事業支援基盤構築、等)を設定、進捗を全社で共有しています。
バリューチェーンとバックオフィスの双方でデジタル化に取り組みます。前者では、建設業界全体のスマート化に資する「建設プラットフォーム」の構築等。後者では、データ活用力の強化や働き方改革に加え、顧客の全生涯にわたる接点強化や新規事業支援基盤の構築に取り組みます。
DXは企業価値を向上させます。情報をグループ全体で共有し、ステークホルダーに伝えるため、詳細な「DXアニュアルレポート」を作成、公開しています。
CIO Lounge矢島氏による課題提起
CIO Loungeは、経営とIT、企業とITベンダーの架け橋となる「ITレスキュー集団」を標榜するNPOです。コロナ禍以降の日本企業は、デジタル化を企業行動の核に据えて積極的に進める企業と、従来の延長でコストの一環としか捉えない企業に二極化し、両者の差は拡がるばかりです。DXは、経営者、現場、IT部門による三位一体の取り組みが必要です。多くの企業が道半ばの中、大和ハウス工業ではしっかりと実践されています。
対談、質疑応答、意見交換
- 企業のパーパスとつながらないDXは「現場の効率化」を抜け出せません。大和ハウスでは「デジタル化はパーパスの実現のため」と明確に位置づけ、広く社内の理解を得ています。
- DXは、業界・社会課題の解決を目指してこそ大きな成果を得られます。大和ハウスは、DXにより建設業を魅力的で働きやすくし、技術者の減少という業界課題を解決したいと考えています。
- 2018年に経済産業省のDXレポートで「2025年の崖問題」が提起されました。これを「既存ITプラットフォームの置き換え」ではなく、「次の経営の足がかりを得るためのビジネス課題」と受け止めた企業は、ITの活用で大きな成長を果たしました。
- ERPシステムの導入で、欧米は現場業務の標準化を進めましたが、現場力の強い日本企業は標準化のハードルが高く、DXの遅れにつながりました。ITシステムの更新はアジャイルの対応が必要です。大和ハウスでは、対応スピードを上げるべく、IT基盤の構築力、内製力を強化しています。
その他、営業活動におけるDXの活用等につき意見が交わされ、DXによる企業価値向上という共通の課題について考える貴重な機会となりました。