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活動報告関西支部

2023年9月度関西支部運営部会講演

支部運営部会は、9月13日(水)の部会で、セイコーエプソン(株)執行役員 技術開発本部長 地球環境戦略推進室長の市川和弘 氏より「エプソンの環境経営~人と地球を豊かに彩る~」と題する講演を行いました。

自然豊かな長野県諏訪市で、昨年に創業80周年を迎え、“「省・小・精」から生み出す価値で人と地球を豊かに彩る”をパーパスに事業を展開します。1993年にフロンを全廃する等、環境課題に注力、ESG投資で高い評価を得ています。“2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源消費ゼロ」を達成し、持続可能でこころ豊かな社会を実現する”と宣言。「脱炭素」「資源循環」「環境技術開発」に21~30年で1,000億円を投入、「お客様のもとでの環境負荷低減」にも取り組みます。本年4月、社長直下に「地球環境戦略推進室」を設置、テーマ毎のオーナーに役員を据えて推進します。
電力会社と大規模・長期の再エネ供給契約を結び、国内拠点は21年秋に100%再エネ化を達成、23年までには全世界拠点を再エネ化します。長野県産グリーン電力の販売収益の一部で県内の再エネ開発を支援する「信州Green電源拡大プロジェクト」に参画。サプライヤーとは、排出量の見える化から目標設定、施策の抽出・実行まで、共存共栄を旨に課題に取り組みます。
「地下資源消費ゼロ」に向け、独自の金属粉末製造技術により、シリコンウエハーの廃材をグループ内で金属粉末の原材料に再利用。25年には、中級スクラップから高機能金属粉末原料を製造する新工場が稼働します。独自技術「ドライファイバーテクノロジー(DFT)」の応用による再生材を包装材に利用、また、ユーグレナ、NECと共同でミドリムシを原料とするバイオマス材料「パラレジン」の開発に取り組んでいます。業務用の大判プリンターでは、再整備による商品の長期使用、資源の有効利用を図ります。DFTを搭載した乾式オフィス製紙機「PaperLab」を開発、第46回日本産業技術大賞 内閣総理大臣賞を受ける等、高く評価されました。
エプソンのインクジェット技術は、熱を使わずにインクを飛ばし、必要な場所に必要なだけ印刷する省エネ・省資源が特徴です。版下が不要なため、布に印刷する「デジタル捺染」では、短納期、少量多品種、省資源等のメリットを発揮します。射出成形機では、独自開発のディスクドライブシステムにより、圧倒的な小型化と高いエネルギー効率を実現。廃材の最少化も併せ、環境負荷を大幅に低減しました。
共創にも力を入れます。プリンターメーカー4社で08年に「インクカートリッジ里帰りプロジェクト」を立ち上げ、全国からインクカートリッジを回収。東北大学と「サスティナブル材料共創研究所」を設置し、DFTで生成したセルロース繊維とプラスチックの複合材料を中心に要素技術の確立にむけ研究を加速します。長野県・市町村のゼロカーボンへの協力も含め、多様なパートナーと課題の解決を目指しています。

環境経営は産業界の重要課題であり、その推進体制、サプライヤーとの連携、経済合理性のある環境戦略の実行や大規模投資の運用等に質疑が交わされ、有意義な意見交換の場となりました。