Activity
活動報告事業推進部

第16回「機器・部品メーカー合同懇談会」概要

電子部品部会では、関係する企業を招聘し、業界動向やトレンドなど最新のトピックス、グローバル戦略等について講演いただくとともに、相互の理解促進を図るため、関連メーカーの経営幹部による懇談の場として10月11日(水)にハイブリッド形式にて、第16回「機器・部品メーカー合同懇談会」を開催し、2件の講演およびPwC Technology Laboratoryの見学を実施いたしました。

企業のルール形成活動
~機会創出のためのルール形成活動を目指して~

ダイキン工業株式会社 CSR地球環境センター
担当部長 山中 美紀氏からの講演概要

「1.会社概要」、「2.持続可能な企業を目指して」、「3.デジュールとデファクト-冷媒転換」についてご説明いただいた後、まとめとして「社内外の連携によるルール形成活動」についてご説明いただきました。

ダイキン工業をあらわすキーワードとしては、「創業1924年99年の歴史」、「人を基軸におく経営」、「空調機器と冷媒を両方手がけている総合空調メーカー」などが挙げられます。大正13年に合資会社大阪金属工業所として創業、飛行機のエンジンを冷却する「ラジエーターチューブ」の製造からスタート。冷媒フロンや業務用空調機を日本で初めて開発し、その後の事業拡大で、総合空調メーカーとなりました。省エネ、環境、快適、安心、安全、衛生などあらゆるニーズに対応する空調ソリューションを実現していきます。エアコンは途上国の発展に貢献しており、「エアコンが前世紀において最も価値ある発明」、「熱帯地方で涼しい先進国と同じくハードに働けるのはエアコンのおかげ」との元シンガポール首相の言葉もあります。持続可能な企業を目指してダイキン環境ビジョン2050を掲げ、カーボンニュートラル達成に向けた商品・サービスの展開とアドボカシーを強化しており、企業におけるルールメイキングの重要性として以下を掲げております。①重要な社会的課題(大義、合理的根拠)、②商品や事業でリードできる分野(貢献、実績)、③会社の思いと人材(戦略、推進力)。地球温暖化抑制への社会的要請に対しては、冷媒の転換だけでなく、冷媒量の削減や漏れの削減、回収など、総合的な取り組みにより温暖化の大幅な削減が可能となった「R32」を採用、また、更なる対策のために新冷媒の開発も加速しています。「R32」の国際標準化を進めるべく、ダイキン工業はISO改訂委員会での働きかけや、欧州では10カ国への国内委員会へ参画し推進しています。「R32」の普及拡大に向け、「R32」を使った環境技術を、日本から世界に発信し、世界の冷媒転換を促進するため、「R32」空調機製造に関する特許のうち延べ93件を無償開放するに至りました。社内外の連携によるルール形成活動として、業界に関連する情報の共有頻度を上げ、社内のアンテナの感度を高め、課題認識の共有化を図っています。ルール形成は一社でできる取り組みではなく、規格化から社会実装まで、その活動の全てのフェーズにおいて産学官の積極的な連携が不可欠と考えています。

AIの最前線とNVIDIAの戦略

エヌビディア合同会社 エンタープライズ事業本部
事業本部長 井崎 武士氏からの講演概要

NVIDIA エンタープライズ事業本部の事業本部長 井﨑 武士氏から「AIの最前線とNVIDIAの戦略」のご講演をいただきました。冒頭、企業紹介があり、創業1993年、従業員数22,500人、売上高270億ドル(2023年度)時価総額1兆ドルを誇る企業です

元々PCゲーム向けに開発されたGPUが計算用途にも使われるようになり、現在では以下の3つの事業領域でビジネスを展開しています。①グラフィックス(ゲーミング・デザイン・レンダリング)②HPC(スーパーコンピューター)③AI(AI学習・AI推論・ロボティクス)。
続いて、日本でのAI活用の事例紹介として、工場での外観検査、建設現場での事故防止の為のビデオ解析、会話用AIによるチャットボットやコールセンターソリューション、漫画の作成など紹介がありました。
生成AIに関しては、ChatGPTのユーザーが1億人に到達するまでの時間がわずか2カ月、世界に大きな影響を与えたという話から始まり、生成AIの事例紹介では、電話会議の議事録作成、プレゼン資料作成、メール作成アシスタント、画像生成や音楽生成などがありました。
その後生成AIの恩恵や生成AIをどのように使えばいいのかなど、詳細の話がありました。
最後に纏めの話があり、要点は以下の通りです。

●ホワイトカラーの仕事の多くに対する大小の影響がこの2~3年で起きます。

●マーケットの大きな成長が期待されています。CAGR 34.2%です。

●リスク等も理解した上での活用も大切。企業ごとのガイドライン等。

●自然言語処理のスケール則(データ量、モデル規模、計算能力)が重要です。

●ツールやAIの専門知識を上手に活用するのが近道です。

●今後については、生成AIの活用はさらに加速し、アルゴリズムも進化を続けています。

●計算需要は、テクノロジーによる効率化はありますが、引き続き増大。電力効率が重要です。

●マルチモーダルだけでなく、入力、出力のフォーマットも多様化します。

●センサー、アクチュエーターとの連携も重要になります。

今後、より新しい技術をきちんと使えるかどうか、アンテナを立てながら進めることが重要になります。

PwC Technology Laboratory

PwC Technology Laboratory見学概要

全体ブリーフィング後、「1. デジタルツインソリューション」、「2. サイバーフィジカルインターフェース」および「3. 次世代通信テクノロジー」についての見学を実施しました。
「1. デジタルツインソリューション」は、Tech labのデジタルツイン環境を用い、かつゲームエンジン技術で簡便かつ多様性に対応した防災対応XRソリューション体験を実施しました。
PwCは東京大学との共同研究を通じ、ゲームエンジン技術の産業利用に加え、空間データをベースにしたAI技術(空間AI)の研究開発を進めています。また経済産業省をはじめ関係省庁が産官学で進める新たな空間データの管理体系である空間IDの普及啓発も支援しています。国土交通省Plateau事業など都市空間データの活用が広まる中、その活用例として、地域単位でのデジタルツインの利用可能性について意見交換を行いました。

「2. サイバーフィジカルインターフェース」については、Tech labに設置している直径3mの球面ディスプレイを用い疑似的な自動車運転を行うなど、バーチャル空間への没入を体感しました。また、メタバース、デジタルツインといったバーチャル空間と現実の人が存在する実空間をシームレスにつなぐことで、人間社会をどう拡張し、新たなサービスを提示できるのか、そのためのサイバーフィジカルの新たなインターフェースの在り方について議論しました。また、自動車の電子制御に対するネットワークセキュリティの重要性を体験するデモも提示しており、自動運転など自動車とインターネットが融合する将来の社会課題への対応についても意見交換を行いました。

「3. 次世代通信テクノロジー」については、このたび敷設が完了したTech labでのローカル5G環境にて、セキュリティとデータ取得速度の利点をもつローカル5Gの価値を訴求する通信デモンストレーションを体験しました。また、将来の社会実装を見据え慶應義塾大学と連携し新たなIoTシステムへの適用検討を進める後方散乱通信(バックスキャッタ)技術についてデモを体験した後、ものづくりやインフラ管理など、人口減少社会での新たな産業ソリューションの可能性について意見交換を行いました。

「企業のルール形成活動 ~機会創出のためのルール形成活動を目指して~」、「AIの最前線とNVIDIAの戦略」の講演および「PwC Technology Laboratory」の見学は、電子部品メーカー、電子材料メーカーにとって多くの気付きをいただけ、有意義な懇談会となりました。