5月度関西支部運営部会講演
支部運営部会では5月10日(水)に開催した部会に三菱電機(株)執行役員・DXイノベーションセンター長の朝日宣雄 氏を招き、「三菱電機におけるDX事業改革の取り組み」と題する講演を行いました。
DXの本質
ITの歴史は、1988年にAppleのジョン・スカリーがITやAIの浸透した社会イメージを示した後、メインフレーム、オープンシステム、クラウド/DXと変遷し、現在はデータが主役となっています。DXは、「企業文化の変革」を目指し外部のコンサルタントや高度人材により進められがちですが、IT屋はDXを「人が楽をするための技術」と考えます。「雇い主が楽をする文化」が根付く欧米では、ソフトウェアを汎用化・共有して利益率を上げ、クラウドとネットワークを制しました。農耕民族の日本人は地道に働くことが好きで、「特注業務ソフトウェア」を得意としますが、複雑な工程管理と外注の階層化によりSI事業は薄利を免れません。
DX事業改革の取り組み
DXをソリューション開発事業と捉えた場合、事業化の確率は2~10%、事業化後の規模も平均4~20億円に過ぎず、事業のアイデアをいかに多く創出・具現化できるかがカギとなります。製造業では、事業の継続を前提に最適化を進め、全員で品質を担保しますが、ソリューションプロバイダにおける最適化は、品質の向上から撤退の判断までリーダーが権限を持つことで、はじめて実現します。家電機器に、使われない機能が多く搭載されてきた反省から、機能の追加・カスタマイズが可能で、他社サービスと連携して機能を拡張するIoT化・クラウド接続の取り組みを進めています。モノからコトに価値を変化させるためには、お客様とのダイレクトなつながりが不可欠で、アマゾンの「フライホイール効果」になぞらえ、「ライフソリューションのフライホイール効果」(顧客の課題を発見→個別化・プレミアム化による顧客増→オープン化・IoT化によるパートナー増・DBの拡大によるソリューション増)を構想しています。システムとサービスを統合してソリューションの開発につなげるプラットフォームを構築、開発の効率化を追求してゆきます。
データ活用人材の育成
最初は、若手6~7名を集め、毎週、データ分析の発表会を行うことから始めました。力が付けば新たな人材の指導を任せる形で次第に拡大、現在は280名を超す規模となっています。形式の異なるデータを統合分析するためのプラットフォームを構築、クラウドの汎用ツールと連携させ、分析に活用しています。さらに、ソリューション開発プロセスの標準化に向け、12のステップを定義し、試行を進めている所です。
今後に向けて
日本のDXの取り組みは世界から大きく遅れていると言わざる得ません。挽回に向け、データ分析によるソリューション開発の取り組みについては、業界全体でオープンに議論してゆくべきと考えています。本日ご参加の皆様とも会話させていただければ幸いです。
多くの事例を交えた講演は大変わかりやすく、終了後は、幅広い連携の重要性、データ分析における仮説の立て方、保守以外のB to B価値向上に向けたデータ活用等について多くの質疑・意見が交わされました。