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活動報告事業推進部

Metaverseの標準化始動
~IEC TC100AG1/AG2岡山会議報告~

2023年5月29日~6月2日に岡山コンベンションセンター会議室で、IEC(国際電気標準会議) TC100(AV・マルチメディア、システムおよび機器)AG1(戦略諮問会議)・AG2(運営諮問会議)および傘下グループの会議が開催され、活発な議論が交わされました。以下では会期中の審議・決議の中から重要な議案について紹介します。

TC100概要
IEC TC100(AV・マルチメディア、システムおよび機器の技術分野に関連する国際標準):1995年10月に設立-2004年1月より日本が幹事国を務めており、現在、国際幹事:寺崎智氏(パナソニック ホールディングス)、国際副幹事:佐久間正剛氏(東芝)、上原まひる氏(ソニーグループ)、Pメンバー(投票権を持つ国):17カ国、Oメンバー(オブザーバーの国):27カ国、傘下に11のTA(Technical Area)があります。なお、TC100の受託審議団体はJEITAであり、TC100国内委員会を運営しています。

A. 主な規格化提案

1. TC100/WG12:メタバース

2022年10月のTC100総会において、TC100におけるメタバースに関する規格開発を検討するために、TC100直下にワーキンググループWG12(Multimedia systems and equipment for metaverse)が設立されました。5月の岡山での会合において第1回のWG12会合が開催され、IEC、ISO, JTC1, ITU-TおよびCTAならびにMetaverse Standard Forumでのメタバース関連の動向の紹介の後、WG12での今後の活動内容が議論されました。議論の結果、メタバースの定義・分類を検討するためのPWI (Preliminary Work Item)およびメタバースシステム・機器に関する標準化の観点からのギャップ分析を行うPWIの設立が合意されました。

2.TA1:音声・映像・データサービス・コンテンツ用端末

会議は会期2日目の午前に開催されました。リモートを含め合計33名の参加があり、活発な議論が行われました。前回のサンフランシスコ会議において、TA1の傘下に設置が合意されたVR/AR/MR(=以下XRと略記)端末機器の規格開発を行うWG1(コンビナはTA1/TA4のTSでもある韓国Dr. Choi氏)の活動に関する報告と新規提案の審議が主要な議題でした。
新たな活動提案は韓国NCからなされ、新規規格提案(NP)1件(XR端末の用語定義に関する規格開発)と規格提案予備作業項目(PWI)2件(XR端末に関する耐久性試験方法、ユーザー向けXRデバイスの参照モデル各1件)を進めることが承認されました。

3. TA2:色彩計測および管理

TA2では、現在韓国からの2件の新規提案および日本から提案による1件の規格改定が議論されています。オブザーバー依存評価(PT 61966-13)のTS(Technical Specification)では、DTSの発行が合意されました。RGBWディスプレイの評価(PT 100-32)のTR(Technical Report)は、これまでPWIステージでの議論にて提案の方向性が固まり、CD(Committee Draft)が回付されることとなりました。色域メタデータ簡易版(IEC 61966-12-2)の改訂では、近年の広色域化に対応する改定についての議論が行われており、CDV(Committee Draft for Vote)が承認されIS(International Standard)を発行することが合意されました。

4. TA18:エンドユーザーネットワーク

TA18では、現在日本より5件の提案(内1件はメンテナンス)がされ、今回進展のあったWI(Work Item)は以下のとおりです。ウェアラブルセンサーのためのデータコンテナフォーマットの標準化(PT 63430)は、本年6月にCD投票のためのドラフトを完成し、回付を開始することとなりました。
家庭などでのリモート制御、支援システムのTR提案(PWI PT100-42 ED1)では、本年2月のPT(Project Team)会議の結果に基づき、CD段階に進むこととなりました。
Hapticsに関しては、本年2回のメール審議によるPWI会議に基づき、正式にTRからTSに種類を変更して、NP投票に進むことになりました。その際タイトルを「Haptics stimuli descriptor」に正式変更することとなりました。
ところで、前回会議での審議持越しとなったUSB仕様に関する利用ガイドライン作成は、今回の会議前に関係者で会議が開催され、その結果新しいWIではなく、IEC 63002:2021(コンピュータおよび家電機器に使用される外部電源の相互運用性仕様および通信方法)のメンテナンスを実施する中で必要な部分を更新、追記していくことなり、そのためのDC文書を発行することになりました。

5. TA19:環境

TA19の日本主導案件としては、ポータブルマルチメディア製品電池持続時間の測定方法をWG1でIEC 63296シリーズとして規格開発を進めています。
この電池持続時間の測定方法は市場が拡大しているポータブルオーディオ製品の電池持続時間の測定方法で、パート1をパワードスピーカの電池持続時間として2021年に発行し、現在はパート2としてノイズキャンセル機能付ヘッドフォン&イヤフォンの電池持続時間測定方法のCDV投票を終え、2024年12月発行予定の前倒も視野に入れ開発を進めています。今回の岡山会議ではパート2のCDVに関する開発状況の説明を行い、パート3としてPersonal sound amplification equipmentの提案を行い、次回フランクフルト会議でNWIPを提案し会議後にNCへ回付する事を合意されました。

6. TA20:オーディオ

TA20では、現在、3つの標準化が進行中です。日本からは、ヘッドフォン&イヤフォンに関するアクティブ ノイズ キャンセル性能を測定する標準化(PT 60268-24)を進めており、6月にCDV回覧と投票が完了する予定です。
また、韓国提案であるテレビ・モニターに搭載されているスピーカー測定の標準化(PT 60268-23)は今年の2月に無事にIS化され出版されました。
その他として、中国提案であるデジタル オーディオの標準化に関しては、AVS関連の3Dオーディオ符号化の標準化(PWI 100-30)は7月にNP提案用のドラフト完成予定、AVS関連の非線形PCM信号の標準化(PT 61937-16)は9月のCDドラフト完成を目指して議論中という状況です。

B. 国際役員の交代

TC100国際幹事が寺崎智氏(パナソニック ホールディングス)から上原まひる氏(ソニーグループ)に、TC100国際副幹事が上原まひる氏(ソニーグループ)から田中宏典(パナソニック ホールディングス)に2023年8月より交代することになりました。

C. TC100国際役員

現在の傘下TAと日本人国際役員は下記の通りです。

<現在の傘下TAと日本人国際役員>

TA1:
音声・映像・データサービス・コンテンツ用端末
議長:佐久間正剛(東芝)
TA2:
色彩計測および管理
議長:杉浦博明(三菱電機)
TA4:
デジタルシステムインタフェース
TA5:
ケーブルネットワーク
幹事:田村博夫(ジャパンケーブルキャスト)
議長:松本卓三(古河電工)
TA6:
ストレージ
幹事:中村竜也(キヤノン)
議長:勝尾聡(ソニー)
TA15:
ワイヤレス給電
TA16:
AAL(自立生活支援)、アクセシビリティおよびユーザーインターフェース
TA17:
車載機器、マルチメディアシステムおよび機器
議長:小出啓介(ソニーセミコンダクタソリューションズ)
TA18:
エンドユーザーネットワーク 
幹事:小出啓介(ソニーセミコンダクタソリューションズ)
議長:田中宏和(広島市立大学)
TA19:
環境
TA20:
オーディオ
幹事:鈴木伸和(ソニー)

D. 今後の予定

TC100国際幹事より、今後の予定について、下記のような説明がありました。
2023年9月:Plenary会議:ドイツ・フランクフルト
2024年5月:AG1/AG2会議:シンガポール

E. 国内対応

TC100にて審議しているIEC規格は、AV&IT標準化委員会にて審議しており、メタバースについては、国内対応組織を設置し、第1回目の会議を6月に開催しました。

F. 表彰関係

東芝:佐久間正剛氏

IEC活動推進会議第33回総会が6月2日(金)TKPガーデンシティ Premium田町にて開催され、佐久間 正剛氏(東芝)がIEC活動推進会議議長賞を受賞しました。

引き続き、皆さまからAV&IT標準化委員会活動へのご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。

AV&IT標準化委員会

1)社数:24社

2)事業概要
・マルチメディア(AV&IT)機器・システム分野の標準化推進とIEC/TC100対応
・IEC/TC100規格・ISO規格・JTC1規格の作成、提案、審議 国際会議対応 など
・JEITA規格・JIS規格・国内関連規格の作成、提案、審議 など
・上記分野の標準化方針、ビジョン、基本政策の策定と関連委員会への周知
・傘下の委員会間の課題解決調整、情報交換共有
・委員会、委員会の対外課題への対応と解決調整

3)関係リンク先
・AV&IT標準化委員会
https://home.jeita.or.jp/cgi-bin/about/detail.cgi?ca=14&ca2=384
・IEC TC100
https://iec.ch/tc100