第100回機器・部品メーカー懇談会
関西支部・部品運営委員会では11月25日(金)に標記懇談会をハイブリッドで開催しました。また、第100回を記念して、アルプスアルパイン(株)片岡政隆 名誉顧問による特別記念講演を行いました。
特別記念講演・委員長挨拶
松本 功 委員長(ローム(株)代表取締役社長)
「第100回を記念し、アルプスアルパイン(株)名誉顧問の片岡政隆様より特別にご講演いただきます。今後の業界発展に向け貴重なお話しを伺えると期待しておりますので、よろしくお願いいたします。
特別記念講演「電子部品産業の創成期に学ぶ」
アルプスアルパイン(株)名誉顧問 片岡政隆 氏
「1957年に日本生産性本部が米国視察を実施しました。米国メーカー数社に加え、米国政府機関やシカゴ・パーツ・ショーも訪問しています。その報告書は日本の電子部品産業を大いに啓発しましたので、本日はこれに基づいてお話ししたいと思います。
報告書は「米国の中小企業は単なる下請けではなく、旺盛な開拓者精神を発揮している」と述べ、日本の中小企業が同様に発展するために以下の提言を行っています。A:他社が追随できない品質とコストで、特長を持った独自の製品をつくらねばならない。B:経営規模は小さくとも、製品が属する業種において、専門メーカーとして数量的あるいは技術的に相当の比重を占める存在とならねばならない。C:他社の模倣追随に終わることなく、研究改良に努め独自の新製品の開発を心がけなくてはならない。
また、展示会は実際の商取引の場であるべき、とも述べており、部品メーカーが主体となる日本初の展示会「パーツショー」(1958年)に結実しました。この展示会はその後、「エレクトロニック・パーツショー」から「エレクトロニクスショー」を経て2000年のJEITA発足に伴いCEATEC JAPANに発展、2019年から名称をCEATECに改め、現在に至っています。
バックミンスター・フラーは再生可能エネルギーの重要性を説き、その思想を受け継いだスティーブ・ジョブズは“Stay hungry, stay foolish”の名言を残しました。新たなビジネスを生み出すヒントはこのあたりから得られる様に思います。
機器・部品メーカー懇談会・委員長挨拶
松本委員長
「当懇談会では、部品ユーザー企業様にお話しを伺ってきましたが、大阪・関西万博まで3年を切ったこともあり、今回は少し広い視野からご講演いただきます。今後の社会と産業のあり方、発展の方向性を考える貴重な示唆をいただけると期待しております。」
10年、20年後を見据えた目指すべき社会像:「豊かな未来」
NEDO技術戦略研究センター 伊藤 智 氏
技術戦略研究センターは、NEDOの技術戦略策定や、プロジェクトの立案を行います。本日は、コロナ、ウクライナ・ロシア、さらに社会の将来像を描いた3つのレポートについて紹介します。
「コロナ」レポートでは、コロナ禍で気付かされたよりよい社会のあり方をめざすイノベーションの重要性を述べ、さまざまな事例を挙げました。「ウクライナ・ロシア」レポートは、世界がエネルギー・資源をロシアに依存する状況、また、ウクライナ侵攻を受けた各国の対応についてとりまとめたものです。
イノベーションによる新たな価値、めざすべき社会像をまとめたレポート「イノベーションの先に目指すべき『豊かな未来』」では、豊かさに関する内外の報告書を分析、重視すべき6つの価値軸を定めました。①自分らしい生き方の実現、②健康で安定な生活の実現、③持続可能な経済成長の実現、④持続可能な自然共生世界の実現、⑤安全・安心な国の実現、⑥強靭で快適な社会基盤の実現。さらに各軸を特徴づけるキーワード群に基づき「実現すべき12の社会像」を示しています。皆様が各種のプロジェクトを進められる際、この社会像を参照いただくことで、進むべき方向性や構築すべき相互連携について判断いただけると考えます。
次世代コンピューティングハードウェアとフォトニクス
産業技術総合研究所 森 雅彦 氏
私どもで策定した次世代コンピューティングの基盤戦略、そこで要となるフォトニクス技術について紹介します。
次世代コンピューティング基盤戦略では3点の戦略目標を掲げました。①実世界エッジコンピューティングの総合的な強化、②超分散コンピューティングに関わるチョークポイント技術の強化(日本の強みであるフォトニクス技術の集中的強化)、③グリーン・サステナブル半導体製造技術の体系的構築:グリーンとサステナブルを踏まえた、半導体プロセス技術高度化の新指標構築。
①に関して、光ネットワーク技術における競争力の源泉は、装置からソフトウエアと部品の二極に分化、ネットワークのクラウド化によるゲームチェンジが進みます。光電融合技術では、通信の高速化が喫緊の課題です。ボトルネックの解消には、光電変換のエネルギー効率向上が鍵を握ります。産総研/PETRAによる「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」プロジェクトでは、チップ型光トランシーバ、光チップを用いたコパッケージ、光チップ内蔵型コパッケージの開発を進めています。日本の強みはフォトニクス全般とハイエンド半導体パッケージ部材にあり、両者の連携体制を早期に構築することが求められます。
大阪ヘルスケアパビリオン Nest for Rebornが
目指す世界とレガシー活用
~2030年以降の「大阪の成長・経済発展」や「いのち輝く幸せな暮らし」~
2025大阪・関西万博大阪パビリオン
総合プロデューサー、大阪大学大学院教授 森下竜一 氏
高齢化の進行、少子化による人口減少、平均寿命の延びによる老後の長期化等の背景から、大阪・関西万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げました。大阪パビリオンはのテーマは「Reborn」、名称は「大阪ヘルスケアパビリオンNest for Reborn」です。モビリティ(搭乗者を自動診断)、レストラン(診断に基づくリコメンド)、医療(パーソナライズされた各種ケア)等、未来都市を体感できるコンテンツを準備します。都市連動型メタバース「バーチャル大阪」では、2023年に「バーチャル大阪館」をオープンします。デジタルIDで紐づけられた各種データを基軸に、多様なサービスが連携できる社会を目指します。「大阪パビリオン」は一過性イベントではなく、「夢洲」と「うめきた2期」の取り組みから大阪モデルのスマートシティを展開するもので、実現には規制改革の推進が重要です。
特別講演と懇談会を通じ、業界発展の歴史を踏まえつつ、未来に向けた価値創造の方向性・戦略について幅広くお話しいただき、非常に有意義でした。