Activity
活動報告三次元CAD情報標準化専門委員会

ISO/TC184/SC4(産業データ)浜松会議
Industry Dayでの専門委員会活動発表

2022年11月にリアル開催されたISO/TC184/SC4浜松会議において、当専門委員会の活動内容を委員長の相馬氏((株)エリジオン)が発表しました。イベントの位置づけと発表内容をご紹介いたします。

ISO/TC184/SC4とは?

ISO/TC184/SC4(以下、SC4)は、三次元CADを中心とする製品情報の国際標準であるSTEP(the Standard for the Exchange of Product Model Data, ISO 10303)を開発する委員会です。STEPは、製品開発のすべてのライフサイクルをカバーするデータ表現を目標としており、現在700を超える巨大な規格群となっています。
従来、この委員会では年2回、1週間の会期の国際会議を欧米亜持ち回りで開催していましたが、COVID-19禍により、2019年11月に米国で開催された会議を最後にすべてバーチャル開催となっていました。

3年ぶりのリアル開催となった浜松会議

その中、2022年11月に静岡県浜松市で、SC4の国際会議が3年ぶりに対面も含む形で開催されました。日本から10名、海外から38名の計48名が現地で参加、virtualの参加も含めると80名近い参加者があり、非常に充実した会議となりました。
他の国際会議でも経験されていることだと思いますが、欧米亜の三極から参加する国際会議の場合、virtualで開催可能な時間は時差の関係で通常一日2~3時間程度となります。3年ぶりに、連日7~8時間かけて集中的に議論することで、このような国際会議における対面の会議の有効性、重要性が再認識されることとなりました。

Industry Day

SC4の国際会議では、一週間の会期中、水曜日の丸一日を使って、委員外の開催地の聴衆にも開放される、“Industry Day”という講演会が毎回開催されてきました。SC4の成果を開催地の産業界にアピールすること、開催地を中心とした、産業界のニーズをSC4の専門家向けにインプットすることが主な目的です。今回この講演会も3年ぶりに開催され、委員内外含めて約80名の現地参加がありました。
全体は3つのsessionに分かれ、Session1は国際規格STEP AP 242が、Session2はそれ以外のSC4規格が、Session3はSC4規格に限らないデジタルエンジニアリングの将来像が、それぞれテーマとなりました。国内外から合計12件の発表がありましたが、とくにドイツのProSTEPやフランスのAFNetという各国の標準化団体、そしてSC4をリードする欧米の航空宇宙業界を代表するBoeing社など日本で直接その話を聞く機会が少ない発表者が集まったことで、日本の参加者にとって、非常に刺激的な情報収集の場となったことと思われます。
当専門委員会からは、委員長の相馬が、専門委員会の活動について、幾何公差にフォーカスしたプレゼンテーションを行いました。その内容を次に簡単に説明します。

Industry Dayでの講演

講演内容“幾何公差情報に対するrequirement”

当専門委員会は、属性・注記などの形で製品開発に必要なさまざまな意味情報を含む3D CADデータ(3D Annotated Model: 以下、3DAモデル)を、設計のすべてのプロセスで円滑に流通させ、製品開発プロセス全体のDXを推進することを設立以来大きな目標としています。
そのためには、人の目による解釈がなるべく不要な形でデータの中に設計情報が表現されていることが必要であり、この目的のもとでは、従来広く使われている寸法ではなく幾何公差を活用することが必須であると、当専門委員会は考え、さまざまな活動を展開してきました。
今回の講演では、まずこれまでの活動の中でとくに標準化、規格化につながった事例を紹介し、次いで現在進行中の取り組み、とくにその問題意識について説明しました。
まず前者の事例としては、JEITA規格ET-5102Aで規定されている普通幾何公差と、専門委員会の発行する「3DAモデル板金部品ガイドラインVer2」に含まれる3D注記の作成方法の2例を紹介しました。
JEITA普通幾何公差は、三次元CADが存在する前提のもとでは、分かり易い3DAモデルを効率的に作成するために必須のルールだと考えています。当専門委員会では、2015年にJEITA規格ET-5102の中で新たな普通幾何公差のルールを発行し、2021年にET-5102Aとしてその内容を改定しました。この内容は、専門委員会からの代表も規格開発に参加した、普通幾何公差の新しいISO規格であるISO 22081:2021とも非常に親和性が高く、今後の展開が期待されます。
また、明示的に書かれる幾何公差の注記については、2020年発行の「3DAモデル板金部品ガイドラインVer2」で、CATに自動的につなげるための注記作成方法の「べからず集」が記載されています。この内容は、日本のSC4国内委員会にインプットされ、日本発の製品データ品質規格であるISO 10303-59に関連するモジュールの一部として、2023年に国際標準化されます。
以上2点がこれまでの国際標準につながる活動成果の事例でした。
このように10年以上活動を継続しているにもかかわらず、幾何公差を中心とした3DAモデルの活用は、会員企業の実務レベルではなかなか広がりを見せていません。発表の後半では、それを踏まえて現在行っている活動について説明しました。
幾何公差情報が必要となる業務プロセスを分析すると、出図前のさまざまな検討段階での活用が重要であると考えられるのですが、現在の3D注記の機能はその目的に必ずしも適しているとは言えません。当委員会では現在、そこでの最も適切なデータ表現方法は何であるか、今のCADが提供する3D注記の機能にとらわれずさまざまな代替方法を検討・検証しています。現在進行中の活動であるため、当日は国内外の関係者・専門家に対する問題提起を目的とした発表を行いました。

最後に

SC4に限らず、2022年秋は、日本各地で、COVID-19禍により中止されていた国際会議がいくつも対面で開催されたと耳にしています。DXの流れの中で国際標準の重要性はますます高まっていますが、我々を含めてより多くの技術者が国際的なルールメークの場で活躍することが、日本の産業界の強化につながると信じています。