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活動報告事業推進部

Haptics、VRからMetaverseに向けた標準化の動向
~IEC TC100サンフランシスコ会議報告~

2022年10月25日~10月31日に米国・サンフランシスコで、3年ぶりに対面形式にて、IEC(国際電気標準会議)TC100(AV・マルチメディア、システムおよび機器)Plenary(総会)および傘下グループの会議が開催され、活発な議論が交わされました。以下では会期中の審議・決議の中から重要な議案について紹介します。

TC100概要
IEC TC100(AV・マルチメディア、システムおよび機器の技術分野に関連する国際標準を開発する専門委員会):1995年10月に設立-2004年1月より日本が幹事国を務めており、現在、国際幹事:寺崎智氏(パナソニックオペレーショナルエクセレンス)、国際副幹事:佐久間正剛氏(東芝)、上原まひる氏(ソニーグループ)、Pメンバー(投票権を持つ国):17カ国、Oメンバー(オブザーバーの国):27カ国、傘下に11のTA(Technical Area)がある。なお、TC100の受託審議団体はJEITAであり、TC100国内委員会を運営している。

A. 主な規格化提案

1. TA4デジタルシステムインターフェース

メディアの新時代を体感してもらうことをコンセプトに、最先端の放送技術を来場者にPRしました。

車載のインフォテインメントや先進運転支援システムにも利用されているデジタルビデオインターフェースGVIFの第二世代となるGVIF2の国際規格を、日本主導で、TA4傘下のプロジェクトにて開発しています。GVIFはJEITA CP-6101シリーズとしても規格化されており、昨年、GVIF2の規格化によりCP-6101Bに改版されたことに伴い、GVIFの国際規格IEC 62889 edition 1を改版し、edition 2として発行するべく、開発を進めています。
今回のサンフランシスコ会議では、MT※1コンビナである佐野洋之氏(ソニーグループ)の主導で草案のCD※2提案について議論し、サンフランシスコ会議後すぐにCD回覧を開始することが合意されました。2023年中の発行を目指しています。

2. TA18エンドユーザーネットワーク

TA18では現在日本より5つの提案がされています。
ウェアラブルセンサーのためのデータコンテナフォーマットの標準化(PT※3 63430)については、WD※4作成の進捗が報告され、2022年12月にCD回覧を目指すこととなりました。
家庭などでのリモート制御、支援システムのTR※5提案(PT 100-42)では、映像等の転送での反応時間更新や実環境での無線通信の性能が提案され、2023年3月にCDに向けた会議が開催されることとなりました。
Hapticsに関しては、その多様な刺激を分類し詳細な標準化議論を可能とする記述子のTS標準化(PT 100-43)を進めており、NP※6投票に向けた会議を2022年12月より開催し2023年5月を目標にNP投票を目指すこととなりました。
ロボットや自動車などの複雑機械に必要とされているディペンダブルマルチメディア信号伝送のラインコードの標準化(PT 63455)は、2022年6月にNP投票が可決され、今回の会議では、エラー訂正機能の改善、最適化の提案がなされ、2023年6月のCD回覧を計画することとなりました。
最後に、2014年に発行されたホームネットワーク接続機器のネットワーク基本参照モデルの改定(MT 62608-1)では、ホームネットワークのミニアドレスやトポロジーを追加、クラウドアクセスを追加するメンテナンスフェーズの提案がなされ、2023年度中にCD投票をめざすこととなりました。
また、韓国からUSB仕様に関する利用ガイドライン作成(韓国内での要望から)の標準化の提案がありましたが、内容および進め方をUSB-IF(USB Implementers Forum:USB実装者フォーラム)との調整が必要であるとの結論になり、次回会合に審議持ち越しとなりました。その他、USB-IFより新規USBロゴ情報等の活動報告がありました。

3. AGS/AGM 戦略アドバイス、マネジメントアドバイス

TC100において、Metaverseに関する標準化や、VR/AR/MRに関する標準化を今後おこなっていく方針が決定されるとともに、今後の検討項目優先順位の報告がありました。

B. 国際役員の交代

TA17国際議長を川西末広氏(ソシオネクスト)から小出啓介氏(ソニーセミコンダクタソリューションズ)に2023年1月より交代することになりました。小出氏は、現在TA18の国際幹事を務めており、TA17の国際議長を兼任することによって、TC100内の協業や事業の活性化に向けた指導力が期待されています。
また、TA5の国際副幹事に鹿嶋一孝氏(古河電工)が2023年1月1日に就任することが承認されました。鹿嶋氏はゆくゆく国際幹事として活躍することが期待されています。

C. TC100国際役員

現在の傘下TAと日本人国際役員は下記の通りです。

<現在の傘下TAと日本人国際役員>

TA1:
音声・映像・データサービス・コンテンツ用端末
議長:佐久間正剛(東芝)
TA2:
色彩計測および管理
議長:杉浦博明(三菱電機)
TA4:
デジタルシステムインタフェース
TA5:
ケーブルネットワーク
議長:松本卓三(古河電工)
幹事:田村博夫(ジャパンケーブルキャスト)
TA6:
ストレージ
議長:勝尾聡(ソニー)
幹事:中村竜也(キヤノン)
TA15:
ワイヤレス給電
TA16:
AAL(自立生活支援)、 アクセシビリティおよびユーザーインターフェース
TA17:
車載機器、マルチメディアシステムおよび機器
議長:小出啓介(ソニーセミコンダクタソリューションズ)
   ※2023年1月より
TA18:
エンドユーザーネットワーク
議長:田中宏和(広島市立大学)
幹事:小出啓介(ソニーセミコンダクタソリューションズ)
TA19:
環境
TA20:
オーディオ
幹事:鈴木伸和(ソニーグループ)

D. 今後の予定

TC100国際幹事より、今後の予定について、下記のような説明がありました。
2023年5月:AGS/AGM会議:日本・岡山
2023年9月:Plenary会議:ドイツ・フランクフルト

E. 国内対応

TC100にて審議しているIEC規格は、AV&IT標準化委員会にて審議しており、従来のAV&IT関係の規格に加えて、リモートワークやeスポーツなどの新しい分野の標準化についても検討しています。
またTC100 TA18にて審議しているHapticsについては、対応PGにて、Haptics stimuli記述子(技術仕様)のドラフトの作成を進めるとともに、大学・関連団体の有識者からの意見をお聞きしていく予定です。
そしてこれに関連したTerminology(用語)を新たに整理し、JEITAにおける規格化も進めております。

用 語
※1 MT(Maintenance Team:メンテナンスチーム)
※2 CD(Committee Draft:委員会原案)
※3 PT(Project Team:プロジェクトチーム)
※4 WD(Working Draft:作業原案)
※5 TR(Technical Report:テクニカルレポート)
※6 NP(New Work Item Proposal:新業務項目提案)

F. 表彰関係

経済産業省では、産業標準化推進活動に優れた功績を有する方を表彰する「産業標準化事業表彰」を、毎年10月の「産業標準化推進月間」に実施しており、この度、江口伸氏(富士通/TC100国内委員会・幹事)が経済産業大臣賞を受賞しました。
※経済産業大臣賞は、標準の策定や適合性評価活動(製品やサービスが標準に適合していることを評価する活動)等、産業標準化に顕著な功績があった方および組織に対する表彰です。

AV&IT標準化委員会

1)社数:27社

2)事業概要
・マルチメディア(AV&IT)機器・システム分野の標準化推進とIEC/TC100対応
・IEC/TC100規格・ISO規格・JTC1規格の作成、提案、審議 国際会議対応 など
・JEITA規格・JIS規格・国内関連規格の作成、提案、審議 など
・上記分野の標準化方針、ビジョン、基本政策の策定と関連委員会への周知
・傘下の委員会間の課題解決調整、情報交換共有
・委員会、委員会の対外課題への対応と解決調整

3)関係リンク先
・AV&IT標準化委員会
https://home.jeita.or.jp/cgi-bin/about/detail.cgi?ca=14&ca2=384
・IEC TC100
https://iec.ch/tc100