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活動報告事業推進部

第15回「機器・部品メーカー合同懇談会」概要

電子部品部会では、関係する企業を招聘し、業界動向やトレンドなど最新のトピックス、グローバル戦略等について講演いただくとともに、相互の理解促進を図るため、関連メーカーの経営幹部による懇談の場として2022年10月12日(水)にハイブリッド形式にて、第15回「機器・部品メーカー合同懇談会」を開催し、3件の講演をいただきました。

「カーボンニュートラルへ向けた住友金属鉱山(株)の取り組み」

住友金属鉱山(株)執行役員 技術本部副本部長 兼
新居浜研究所所長 岡本秀征 氏からの講演概要

1. 住友金属鉱山株式会社(SMM)の企業概要は、1590年に銅精錬として事業創業し、1950年に現在の形となりました。資源事業、製錬事業、材料事業と3つのコアビジネスで鉱石から金属・高機能材料まで一貫生産対応しています。長期ビジョンは、2030年のありたい姿として、温室効果ガス(GHG)排出ゼロに向け排出削減とともに低炭素負荷製品の安定供給を含めた気候変動対策に積極的に取り組んでいる企業を目指しています。

2. 日本のGHG排出量の現状は世界で5番目。日本の産業別排出量は1/3が産業部門。日本の非鉄金属各社の排出量は0.34%。SMMの排出量は0.09%です。

3. 足元の直接削減への取り組みとして、鹿島太陽光発電所、菱刈鉱山温泉水発電、東北大学とのビジョン共創プロジェクトがあります。

4. 削減貢献例として、車載用二次電池用正極材の事業拡大、近赤外線吸収材料の活用をします。

5. カーボンニュートラルへ向けた課題は、既存事業(特に製錬)のカーボンニュートラル化と脱炭素社会実現のための材料の提供拡大を両輪として進めています。

6. 技術開発事例紹介として、二次電池リサイクル技術開発(Ni、Co、Cuの回収)、リチウム精製技術開発(直接回収、精製技術)を進めています。以上まとめますと、
非鉄金属の生産に伴う GHG排出量は国内総排出量の 0.34%です。SMMのGHG排出量の9割は製錬工程で発生しています。Cu、Niなどの非鉄金属はEV市場の拡大や社会インフラの電化に必須であり、その安定供給は我々に課せられた重い責任です。SMMは、CN社会実現のため、天然資源の低品位化・難処理化への対応、製錬プロセスのGHG排出量削減、リサイクルの拡大に取り組み、併せて電池材料、熱線遮蔽材料の需要拡大と高機能化への要求に応えつつ、蓄積した技術を太陽など自然エネルギー活用のための素材開発へ展開します。
非鉄金属のメーカーとして、皆様方に使っていただける、金属素材のカーボンフットプリントを如何に減らしながら生産を続けていくかという事が課題と認識しています。

「自動車業界の大変革 ~CASEにおける考察~」

日本電産(株)常務執行役員 副最高技術責任者
半導体ソリューションセンター所長
大村隆司 氏からの講演概要

出典:日本電産(株)web

本日は、①Nidecの組織と事業領域、②主力ビジネスである車載製品「E-Axle」のビジネス状況、そしてCASEを用いて③Nidec半導体戦略と市場をとりまく課題についてお話させていただき、今回設立した「半導体ソリューションセンター」の役割と戦略を紹介させていただきます。

まず、Nidecは永守会長の強力なリーダーシップの下、小部社長以下、社員一丸となって、10兆円を目指している企業です。中でも主力製品である「E-Axle」は中国のお客様を中心に好調な引き合いをいただき、Nidecの成長を支えている重要ビジネスです。このビジネスを通して日本中へグローバルな自動車業界の変化、引いては世の中の産業構造の変化を発信、牽引していければと考えています。

今回のお話では、「中国」をキーワードといたします。中国はバッテリーEVの先進国であり、日本は後進国です。だからこそ、NidecはバッテリーEVに搭載される「E-Axle」を、次のNidecの柱として期待し、注力しています。「E-Axle」とはモータとギアとインバータの一体化商品であり、基本構成はこの3in1と言われ、次第に色々なECUが一つになりALL in Oneとなっていくことが予想され、最終的にはNidecの「E-Axle」がバッテリーEVを走らせる、そんな未来を夢見ながら、日々、邁進しています。

続いて、Nidec車載事業(E-Axle)の成長戦略を推進するため、CASE(「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared & Services(シェアリングとサービス)」「Electric(電動化)」)をキーワードに、市場の理解についてお話いたします。結論から申しますと、脱炭素社会に向けたEVシフト(環境対策、SDG’s等)や地政学リスクマネジメントを背景に、CASEの相乗効果を発揮した新事業化・サービス化を図り、新しいエコシステムを構築することが、今後の自動車業界の覇権の鍵です。まさに「モノ売りからコト売りへ」というテーマこそ、昨今のDX化やコロナによる行動様式の変化による、新たなビジネスモデルの模索を表していると考えます。

例えば、「Connected(コネクテッド)」に関して、中国の戦略であるGB32960は立派です。このGB32960は、2016年制定、自動車に関するさまざまなデータをクラウドに挙げ、中国国内を走る自動車を中国政府が管理する仕組みです。吸い上げた自動車情報を元に、次のビジネスを見出せるからです。

CASEの進化とともに必要な半導体、もちろんNidec製品に必要な半導体の数は必ず増加するでしょう。Nidec半導体戦略は、RFQにて当社が必要とする半導体のスペックを定義し、それに対して最善の回答をいただけたサプライヤーを選定することで、強固な関係の構築を目指しています。

そして、最終的には、モータと半導体のシナジーで付加価値の高い、インテリジェント・モータRを世の中に生み出していきたいと考えています。自動車業界だけでなく、さまざまなところに、Nidec半導体ソリューションを提供していきたい、これが私のゴールです。

「NECのIOWNへの歩みと社会実装へのチャレンジ」

日本電気(株)コーポレート・エグゼクティブ
伊藤幸夫 氏からの講演概要

本日の講演内容は、「1. IOWN構想について」、「2. IOWN Global Forum」について、「3. NEC CONNECT Lab for IOWN(仮)」についてです。

「1. IOWN構想について」は、将来的にコンピュータリソースが更に活用されAIなどいろいろなものを活用して行くとより良い人間社会が構築出来ると考えています。構想では、あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り、多様性を受容できる豊かな社会を創るため、光を最大限利用した革新的技術を活用し、高速大容量通信、膨大な計算リソースを提供するネットワーク・情報処理基盤を実現する構想で2024年の仕様確定、2030年の実現を目指しています。

「2. IOWN Global Forum」については、特に技術面でIOWN構想を実現すべく、2019年10月に、発足し、現在は100社を超えており通信メーカーだけではなく電子部品メーカーはじめ自動車メーカー、銀行等各種業界関係にご参画いただき、2020年春から定期会合を持ち技術の標準を決めようと活動を開始しています。この活動の事務局ですがグローバルに活動するために本拠地をシリコンバレーに置いています。

「3. NEC CONNECT Lab for IOWN(仮)」ですが、今年NEC CONNECT構想を発表させていただきました。概念は①今と人をつなぐ、②人と人をつなぐですが、特に力を入れているのは③構想と実装をつなぐとしています。これは、製品を出したあとは、ユーザーの使い方に任せるではなくて社会にどう実装させていくかと言う所までやろうという概念です。その中の一つとして5G Labをつくりました。主にローカル5Gですが、これは免許を取ればキャリアでなくても特定エリアであれば5Gが使用できるものです。工場内でもいろいろな装置を配線せず接続できるもので建設機械を置きローカル5Gで遠隔制御を行うなども始めています。ドローン遠航制御、ロボット制御、光ファイバセンシングによる振動や温度等の環境モニタリング等も可能で、いろいろな方とつなげてさまざまな検証等を行っていきたいと思っています。

「カーボンニュートラルへ向けた住友金属鉱山(株)の取り組み」、「自動車業界の大変革~CASEにおける考察~」および「NECのIOWNへの歩みと社会実装へのチャレンジ」は、電子部品メーカー、電子材料メーカーにとって多くの気付きをいただけ、有意義な懇談会となりました。