Activity
活動報告グリーンデジタル室

社会全体でのカーボンニュートラルの実現に向けて
~Green x Digitalコンソーシアム活動報告~

2021年10月に発足したGreen x Digitalコンソーシアムでは、多様な業種から120を超える企業が参画し、カーボンニュートラル実現に向けた検討を進めています。

サプライチェーン排出量の見える化

なぜサプライチェーンCO2排出量の見える化が重要なのか

近年、カーボンニュートラル実現に向けた動きは、世界規模で急速に加速しています。金融市場のESG投資の拡大、企業情報開示・評価の変化等も相まって、あらゆる産業の企業が、脱炭素社会に向けた対応に直面し、国内外で、サプライチェーン全体の脱炭素化とそれに伴う経営全体の変容(GX)が求められています。
こうした中、企業が2050年のサプライチェーン全体のカーボンニュートラル、ネットゼロの実現を計画的に進めていくためには、自社の排出であるスコープ 1、2だけではなく、サプライチェーンの上流・下流からの排出を含むスコープ3排出量を把握し、削減施策を策定・実施し、成果を確認して更なる削減を目指すPDCAサイクルを回していくことが重要になります。

スコープ3排出量の算定/削減対策の課題

スコープ3算定に関しては、GHGプロトコルのスコープ3スタンダードにおいて国際的な算定手法が示されています。実は、単にスコープ3を算定するのであればサプライヤーや顧客企業からのデータ収集は必要なく、製品やサービス別に、それらの供給に伴う平均的な排出原単位がデータベースで提供されているので、例えば、カテゴリ1(購入した物品・サービス)排出量であれば、購入金額に、製品・サービス別の排出原単位を掛けることで算定できます。現状は、この算定方法が一般的に使われています。しかし、排出原単位のデータベースは、あくまでも平均的な値であるため、実際のサプライヤー企業の削減努力が反映されません。
Green x Digitalコンソーシアムでは、この課題を解決するために、実際の排出量をサプライチェーンの企業間でデータ連携し積み上げていく仕組みの構築のために「見える化WG(主査:日本電気)」を発足し、2021年11月から検討を行っています。

見える化WGの取り組み

発足から2022年3月までを準備フェーズとし、サプライチェーン全体のCO2データを“見える化”する仕組みの構築に向けて、その必要性や目指すべき姿を明らかにし、実現する上での課題や対策について検討しその結果を「一次レポート」として公開しました。(https://www.gxdc.jp/pdf/achievement_report.pdf

【見える化WGが目指す姿(イメージ)】

2022年4月からは検討フェーズとし、ルール化検討SWG(副主査、SWGリーダー:みずほリサーチ&テクノロジーズ)と、データフォーマット連携・検討SWG(副主査、SWGリーダー:富士通)を中心に、具体的なルールづくりとデータ連携の仕組みづくりに向けた検討を進めています。既に海外でもサプライチェーンCO2排出量の見える化に向けた動きが出てきており、それらとも連携を図りながら今年度末から来年度初頭にかけて実証実験を計画しています。
見える化WGの活動には非常に多くの企業から高い関心を寄せられ、参加企業数は発足当初の47社から106社(2022年10月現在)まで増えています。見える化WGが目指す姿を実現するためには、グローバルサプライチェーンのより幅広い業種から共感と協力を得ることが必要です。そのため、国内外の関連機関・企業との対話を進めるとともに社会実装に向けた検討を深化させていきます。

データセンターの脱炭素化に向けた検討

政府の成長戦略会議において、「低消費電力のデータセンターの分散配置を行う」方向性が示されるなか、データセンター(以下、DC)の脱炭素化実現に向けて、産業界の関連プレイヤーで技術・政策の両面から課題を抽出し、事業環境整備を図ります。

データセンター脱炭素化WGの設置

【検討の方向性】

2022年7月に、コンソーシアム内に「データセンター脱炭素化WG」を設置、DC事業者やDCのユーザーとなり得る企業、電力供給関連事業者等が参画し、議論を開始しました。本WGでは、政府が提唱するデジタル田園都市国家構想との連動性を意識しながら、地域におけるDC事業の継続に必要となる要件の整理、利用者メリットの明確化、核となる産業の特定を進めます。
活動の中ではDCの誘致を行う自治体との意見交換や、グローバルにおけるDC設置の考え方等の情報収集を進めながら、地域・DC事業者・エネルギー供給者の観点から課題を洗い出し、デジタル田園都市構想を支えるDC事業のビジネスモデルを検討します。
地域に設置されたDCが継続的な事業化を実現するための目指す姿を描くため、地方やエネルギー等各領域における課題を洗い出します。

脱炭素活動のデジタル認証に係る検討

2050年のカーボンニュートラル達成に向け、産業界としても脱炭素への取り組み・投資は急務ですが、社会的責任を果たしていることを低コストかつ容易に証明する手段が確立されていません。
また、企業が脱炭素への取り組みを進めることにより、そのリターンとして消費行動の変容等により企業の収益向上が実現するようなサイクルになっていないのが現状です。
本コンソーシアムでは、産業界がより投資を進めやすくするための施策の推進を検討します。例えば環境価値取り扱いのガイドラインを作成するとともに、製品・サービス・システムといった単位で環境価値を証明し、消費促進に繋げる仕組み作りなどが有効と考えられます。今年度は、環境投資を進める多様なステークホルダーとの意見交換を通じ、環境への投資が事業の後押しとなるような仕組みの在り方や、その仕組みを支える認証制度の在り方等について整理をした上で、具体化に向けた活動計画を策定します。