Activity
活動報告関西支部

第99回 機器・部品メーカー懇談会

関西支部・部品運営委員会では6月17日(金)に標記懇談会をハイブリッドで開催しました。

部品運営委員長開会挨拶

部品運営委員長(ローム(株)代表取締役社長)
松本 功 氏

本会は99回の歴史を重ねてきました。本日はダイキン工業様、デンソー様、オムロン様より新たな時代の流れを示す講演をいただきます。共に勉強させていただき、交流を深めたいと存じます。
今月発表の世界半導体市場統計によれば、半導体市場は平均で2021年度26.2%、22年度16.3%、23年度5.1%(対前年比)と、拡大が続きます。部品・半導体メーカーとして増産体制を整備し、機器メーカー様の期待に応えられるよう全力で取り組みます。

ダイキン工業における協創イノベーションへの挑戦

ダイキン工業(株)
執行役員 テクノロジー・イノベーションセンター副センター長
河原克己 氏

ダイキン工業は空調専業メーカーとして160カ国以上で事業を展開、従業員8.5万人の8割以上が海外で勤務します。2010年から19年まで10期連続増収、21年度の売上は3.1兆円余でした。
“人を基軸に置く経営”を理念に、長年、社内外との協創に注力、世界中のパートナーとイノベーションを実現してきました。2015年には、R&Dの司令塔としてテクノロジーイノベーションセンター(TIC)を設立。本年は日経スマートワーク大賞を受賞しました。
イノベーションの実現には多様で異質な人材による協創が重要です。現在、内外9機関(清華大、東京大、大阪大、京都大、同志社大、鳥取大、奈良先端大、産総研、理研)と包括連携開発契約を結んでいます。NECとは、画像AI技術で得られる脳の覚醒度データを空調技術と組み合わせ知的生産性を高めるソリューションの研究、ベンチャー企業とは、スマートデバイスを活用した技術伝承の遠隔支援サービスや、空調未成熟市場におけるエアコンサブスクリプション事業化の取り組みなど、世界中の研究機関・企業と協創イノベーションを加速している所です。
情報系技術者育成のため、大阪大の支援を受け2017年にダイキン情報技術大学を立ち上げました。毎年100名の新入社員を別枠で採用、2年間で育成します。マネジャー側の教育も並行して実施、23年までに1500名(国内社員比率13%)の育成を計画しています。“人を基軸におく経営”という企業文化を不易、DX・GXという大きな事業機会を流行として、協創イノベーションにより成長を実現してゆきます。

デンソーの考えるカーボンニュートラル戦略

(株)デンソー
経営役員CTO 加藤良文 氏

2035年のカーボンニュートラル(CN)実現に向けたデンソーの戦略につき3つのポイントからお話しします。
①モノづくり=工場におけるCN:徹底した省エネと再エネ活用、外部調達エネルギーやガスのCN化(生産工程の排ガスから回収したCO2を水素と結合させメタンガスを生成、工場で燃料として利用)に取り組みます。
②モビリティ製品=クルマの電動化への貢献:HEV、PHEV、BEV、FCEVからe-VTOLまで全方位で技術開発を進めます。HEV/PHEV向けSiパワー半導体、BEV/FCEV向けSiC半導体の開発に取り組むほか、ハネウェルと共同でe-VTOL向け電動モーターの開発も進めます。
③エネルギー利用=CO2の回収・再利用:街全体で、モビリティによるCO2発生とエネルギー消費の最小化を目指します。フィジカルのデータをサイバーで解析・制御するにあたり、量子コンピュータの活用を進めます。また、再生エネルギーを活用したCO2回収ユニットを開発、回収したCO2から得た炭素を資源として利用する人工光合成システムにも取り組んでいます。
サプライチェーンについて、欧州はデータ共有に向けた技術標準化・ルール策定のプラットフォームとしてGaia-X構想を打ち出しました。自動車産業ではドイツが主導しCatena-Xと呼ばれる組織が発足しています。約2.6万社のエコシステムである日本の自動車産業においても、いずれ自動車1台毎のCO2排出、品質、材料等にトレーサビリティが求められます。デンソーでは、独自のQRコードシステムにより、ブロックチェーン技術を用いサプライチェーン間で情報を安全に伝達する仕組みづくりに挑戦しています。

カーボンニュートラル社会の実現に向けた
オムロンの脱炭素・環境負荷低減の取り組み

オムロン(株)
執行役員 グローバルインベスター&ブランドコミュニケーション本部長
井垣 勉 氏

オムロンでは今後の10年を、新旧の価値観がぶつかって課題が生じ、その解決に向けて新たな成長機会が生まれる時代と捉えています。インパクトが大きく、自社の強みを活かせる“カーボンニュートラルの実現”、“デジタル化社会の実現”、“健康寿命の延伸”を優先課題に、長期ビジョンShaping the Future 2030を策定しました。
制御機器事業におけるCN実現の取り組みについて紹介します。人を超える自動化、人と機械の高度協調、さらにデジタルエンジニアリング革新によるi-Automation!(地球環境との共存と働きがいを実現する、サステナブルな未来へ導くオートメーション)をコンセプトに、課題解決に挑戦します。80の装置メーカー・研究機関と共同開発したAI活用による温度調整プログラムは食品加工等350社で採用され、プラスチックごみ93万トンの削減に貢献しました。エンジニアリングからメンテナンスまでトータルなサービスを提供するビジネスモデルi-BELTにより、某総合設備メーカーにおいて装置の稼働状況と電力データを重ねて分析、品質を担保しつつ省エネを可能にするプロセスを発見、使用電力の23%削減を実現しています。自社におけるCNの取り組みとして、クリーンルームのパーティクル量を常時センシング、リアルタイムでフィードバックしてファンの風量を最適化し、消費電力を40%削減しました。J-Creditの活用等、社会システム事業が創出する環境価値も活用し、国内全76拠点のカーボンゼロ化を目指します。

協創イノベーションや、CN実現に向けた先行事例について幅広い観点から貴重なお話をいただき、終了後の懇親会も含め、非常に有意義な機会となりました。