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活動報告事業推進部

IEC TC100 Web会議報告
~Haptics、VRからMetaverseに向けた標準化の動向~

本年5月10日(火)~31日(火)にWebにて、IEC(国際電気標準会議) TC100(AV・マルチメディア、システムおよび機器)AGS(戦略諮問会議)/AGM(運営諮問会議)および傘下グループの会議が開催され、活発な審議が行われました。以下では会期中の審議・決議の中から重要な議案について紹介します。

TC100概要
IEC TC100(AV・マルチメディア、システムおよび機器):1995年10月に設立-2004年1月より日本が幹事国を務めており、現在、国際幹事:寺崎(パナソニックオペレーショナルエクセレンス)、国際副幹事:佐久間(東芝)、上原(ソニーグループ)、Pメンバー(投票権を持つ国):17カ国、Oメンバー(オブザーバーの国):27カ国、傘下に14のTA(Technical Area)がある。なお、TC100の受託審議団体はJEITA であり、TC100国内委員会を運営している。

A. 主な規格化提案

❶リモートワーク

【リモートワークの例】

【リモートワークの例】

リモートワーク/サポート&コントロールシステム対応PG主査・大内敏氏(日立製作所)より、TA18(エンドユーザーネットワーク)・Web会議にて、ARおよびVRを用いたリモートワークについてのTR案について説明があり、審議の結果、近々にCD提案することになった。

❷データコンテナフォーマット

【IECユースケースにおけるIEC63430(データコンテナ)の位置付け】

【IECユースケースにおけるIEC63430(データコンテナ)の位置付け】

センサ信号コンテナフォーマット対応PG主査田中宏和教授(広島市立大学)より、 “Data Container Format for Wearable Sensor”のWorking Draft概要が説明され、審議の結果、近々に本年10月のCommittee Draft(CD)提案に向けてCD原案を作成ことになった。なお、本規格は、医療福祉分野においても、利用可能なことから、関係する団体等に対して、引き続き、周知していく予定。

<国際標準化の課題と目的>
  • ウェアラブルセンサは、現在多様な用途で開発されているが、異なる種類のセンサどうしはもとより、同じ種類のセンサであってもセンサメーカー毎に各種パラメータや信号の出力形式が異なっている。
  • 我が国が主導してウェアラブルセンサ信号のコンテナフォーマットを標準化し、容易な接続性を実現すると共に、データの共有・連携を可能とすることでIoT/CPSサービスの適応性、柔軟性を高めて市場の拡大を目指す。

❸AVCコーデックガイドライン

【ファイル管理の改善例】

【ファイル管理の改善例】

勝尾TA6国際議長(ソニー)より、IMF(Interoperable Master Format, SMPTE ST 2110 suite)でUHDTV workflowへの適用を規定しているApp#6(SMPTE ST 2067-60)のinteroperabilityを更に高めるためのAVCコーデックガイドラインのTS文書案についての説明があり、審議の結果NP提案することになった。IMFでworkflowおよびファイル管理の改善が期待できる。

【動画素材の記録日時の意味解釈は現状3通り存在】

【動画素材の記録日時の意味解釈は現状3通り存在】

❹カメラメタデータガイドライン

中村TA6国際幹事(キヤノン)より、カメラメタデータガイドラインのTR文書案についての説明があり、審議の結果PWI提案することになった。カメラメタデータの実装は、同じメタデータ名であっても、下記の記録日時の例のようにベンダーによって意味解釈が異なるものがあることが分かっており、それらを含めて整理したTR文書を作成することにより、編集等メタデータ使用者に貢献する。

❺Haptics (Tactile Display) Technology

村上和弘氏(明治大学)より、Haptics stimuli descriptorsの規格案についての説明があり、審議の結果、近々に、New Work Proposal(NP)提案することになった。

■規格の概要

【Haptics stimuli descriptors】

【Haptics stimuli descriptors】

すでに家電製品,コンピュータインタフェース,自動車,アミューズメント,通信などで利用されているマルチメディアシステムにおける多様で広範囲なHapticsの事象・機能を分類、グループ化するための記述子を規定したものである。
この規格の適用範囲は、Haptics Systemにおけるさまざまな種類を分類するための記述子をいろいろな視点から定義することで、それにより分類されたハプティクスシステムでの互換性、相互関連性、性能、評価、計測方法などの標準化項目を検討できるようになる。
なお、Hapticsの用語についての検討をしており、Haptics用語データベースをまとめ、その中からJEITA規格を抽出・作成のうえ、国際提案していく予定。

❻AR/VR、メタバース

韓国よりAR/VR、メタバースに関する3点の提案があった。一つは、現在開発中のTRをベースに、XRシステムに関する新規提案に関するもの。2つ目は、XRの用語およびARデバイスに関する新規規格化活動に関するもの。3つ目はメタバースに関する検討の場の設立提案である。審議の結果、これらの提案の具体化に向けて検討していくことになった。秋のPlenary会議でTC100としての進め方の合意を目指して、準備を進めて行く。

B. 国際役員の交代

TA6国際幹事が2021年10月塚田幸司氏(JVCケンウッド)から中村竜也氏(キヤノン)に交代した。

C. 組織の再編

TA1とTA10のマージ

寺崎国際幹事より、昨年のTC100総会の決定に従いTA10(電子書籍)をTA1へマージし、TA10配下の出版物をTA1へ移管したとの報告があった。

<現在の傘下TA>
TA1 :
音声、映像、データサービス、コンテンツ用端末
TA2:
色彩計測および管理
TA4:
デジタルシステムインタフェース
TA5:
ケーブルネットワーク
TA6:
ストレージ
TA15:
ワイヤレス給電
TA16:
AAL(自立生活支援)、アクセシビリティおよびユーザインターフェース
TA17:
車載機器、マルチメディアシステムおよび機器
TA18:
エンドユーザネットワーク
TA19:
環境
TA20:
オーディオ

D. 今後の予定

寺崎国際幹事より、今後の予定について、下記のような説明があった。

  • 2022年10月:Plenary会議:米国・サンフランシスコ
  • 2023年 5月 :AGS/AGM会議:日本・岡山
  • 2023年 秋 :Plenary会議:調整中

E. 国内対応

TC100にて審議しているIEC規格は、AV&IT標準化委員会にて審議しており、従来のAV&IT関係の規格に加えて、リモートワークやeスポーツなどの新しい分野の標準化についても検討を進めている。

F. 表彰関係

IEC活動推進会議第32回総会および創立30周年記念行事が5月30日(月)TKPガーデンシティPremium田町にて開催され、これまで、IECおよびIEC活動推進会議の活動に貢献されたIEC TC100関係者が下記のように表彰された。

・令和4年IEC活動推進会議議長賞

寺崎智殿(パナソニックオペレーショナルエクセレンス)

・30周年記念行事感謝状

平川秀治殿(東京電機大学)
江﨑正殿(ソニーグループ)
江口伸殿(富士通)
佐久間正剛殿(東芝)

・30周年記念行事感謝状特別賞

田村博夫殿(ジャパンケーブルキャスト)
小出啓介殿(ソニーセミコンダクタソリューションズ)
奥田悟崇殿(三菱電機)

AV&IT標準化委員会

1)社数:27社
2)事業概要:

  • ・マルチメディア(AV&IT)機器・システム分野の標準化推進とIEC/TC100対応
  • ・IEC/TC100規格・ISO規格・JTC1規格の作成、提案、審議 国際会議対応 など
  • ・JEITA規格・JIS規格・国内関連規格の作成、提案、審議 など
  • ・上記分野の標準化方針、ビジョン、基本政策の策定と関連委員会への周知
  • ・傘下の委員会間の課題解決調整、情報交換共有
  • ・委員会、委員会の対外課題への対応と解決調整