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新会長に時田 隆仁
富士通株式会社 代表取締役社長が就任

JEITAは6月1日に第12回定時社員総会を開催し、時田 隆仁 富士通株式会社 代表取締役社長が新会長に就任しました。就任翌日に開催した記者会見には対面/オンラインの両会場をあわせて110名の報道関係者が出席、グリーントランスフォーメーションや人材育成、半導体といった重点事業を力強く推進していく旨が、時田新会長より発表されました。

― 時田新会長記者会見 挨拶概要 ―

JEITA変革の振り返り

記者会見に登壇した時田新会長

記者会見に登壇した時田新会長

新型コロナウイルスの登場により、人々の暮らしや働き方など、社会全体が大きな変革を迫られてから2年の月日が経ちました。在宅勤務をはじめとするデジタルのフル活用はまさに「ニューノーマル」となり、社会に定着した一方、これまでにないほどに社会全体が思い切ってデジタルをフル活用したからこそ、リモートでは代替できない対面の価値を再認識することもできました。社会は日々変化をしていくわけですが、社会で生きる組織はこうした変化に適応し、自らをも変化させていくことが重要であることは言うまでもありません。

対面会場には25名の記者が駆け付けた

対面会場には25名の記者が駆け付けた

JEITAは2016年より、「業種・業界を超えて社会課題に向き合う、課題解決型の業界団体」への変革に取り組んでまいりました。まずは「会員制度改革」です。定款を変更して正会員の対象をIT・エレクトロニクス企業から全業種へと拡大し、スタートアップ企業にも入会いただけるようベンチャー会員特例制度を新設するなど、業種を超えた企業が集う、新しい業界団体の形を作り上げました。そうした企業が集うことで、これまでにない新しいテーマを議論することが可能となります。次に「共創」です。スマートホームにおけるデータ連携や保安分野でのデジタル活用、産業・社会での5G活用など、業種を超えた共創、の取り組みを推進してまいりました。JEITAは電子部品や電子デバイス、電子機器やITソリューション・サービスといったデジタル社会を支える企業集団から、他の製造業やサービス産業など、デジタルを活用する幅広い産業の企業も参画する、デジタルを旗印とする多様な企業集団に変わりました。広範な分野の企業が参画する特長を生かし、多様なテーマのもとで異なる知見や技術を持った者同士が議論して連携する場を提供することで、業種・業界を超えた課題解決や新たな価値を共に創り出す「共創」をより一層推進してまいります。

2022年度の重点事業(グリーントランスフォーメーション)

新型コロナウイルス感染症により、社会全体のデジタル化は過去に例のない勢いで進展しつつあります。この先のデジタル化の地殻変動となるのは「カーボンニュートラル」です。CO2の削減は、企業の事業環境を大きく変える要因でもあります。従来のCO2削減といえば、各国政府が決めた排出削減目標や制度への対応が主でしたが、いま世界中で打ち出されているカーボンニュートラルは、本質的にはグローバル市場での選別や金融資本市場からの格付けを意味するものであり、それらに対応できなければ、企業は事業継続ができなくなるといっても過言ではありません。そのために必要なことは、「グリーン」と「デジタル」を組み合わせること、「グリーン x デジタル」、言うなれば、「グリーントランスフォーメーション」です。
JEITAが主導的な役割を果たし、JEITA会員/非会員を問わず、デジタル技術を提供する企業とデジタル技術を活用する企業の双方が集う、「Green x Digitalコンソーシアム」を昨年10月に立ち上げました。目的は、カーボンニュートラルを軸とした、世界的な潮流のなかで、世界市場で戦う幅広い企業が集い、国際的なルール形成をリードしていくためです。企業の行動変容、ひいては産業・社会の変革につながる新たなデジタルソリューションの創出・実装に向けた議論をするための場として、現在、ITエレクトロニクス企業のみならず、化学等の素材産業をはじめ、物流、金融、サービスなど、多岐に渡る分野の企業、計99社に参画をいただいております。
目下、コンソーシアムで取り組んでいるのが、サプライチェーン上のCO2の見える化です。業種業態の枠を超えた各分野の専門家が集い、検討を進めています。産業分野におけるカーボンニュートラルを進めるにあたり、これまでのような自社の事業活動に伴う排出量の削減だけではなく、サプライチェーン全体でCO2を削減することが求められます。それにはCO2削減量を網羅的かつ正確に把握することが欠かせません。一方で、いまの排出量算定方法には課題があります。現状では多くの企業が取引金額と産業連関表の係数などの原単位から排出量を算定している状況にあり、これではサプライヤーがいくらCO2を削減しても、当該削減努力が反映されません。いかにしてサプライチェーン全体のCO2排出量の実績データを把握するか、そのカギになるのが言うまでもなく「デジタル活用」であり、CO2データの収集・分析・評価・活用とあらゆる過程でデジタルが必要不可欠です。
欧米企業をはじめ、オペレーションデータの覇権争いが始まりつつあるこの分野ですが、「データの提供側、利用側の双方で透明性が高く、フェアな算定・収集・共有の共通ルールが必要である」と考えています。しかもそれはひとつの国や地域にとどまらないグローバルなルールであるべきです。「Green x Digitalコンソーシアム」では、デジタル技術を活用し、サプライチェーン全体のCO2データを見える化するデータ共有基盤の実現を目指しています。現在、共通データフォーマットや開示範囲等のルール作成に向けた検討を進めており、本年度後半には実証実験も行う計画です。
サプライチェーンのCO2を「見える化」する仕組みを構築し、適正に運用管理することで、企業間の協働や消費者の行動変容を促し、社会全体の脱炭素化が進展する、そのような未来を目指します。世界各地の共通ルールの策定に向けた動きと調和させながら、地球環境に配慮した持続可能な社会を構築するために、力を尽くしてまいります。

2022年度の重点事業(人材育成、半導体)

あらゆる分野においてデジタル化が急速に進展する中、デジタルトランスフォーメーションを担う次世代のデジタル人材を育てていくことは、年々重要性を増しています。日本政府が推進する「デジタル田園都市」を実現するためには、デジタル技術を提供する企業のみならず、デジタル技術を活用する企業にもデジタルの教養や知見を持った人材が不可欠です。これからふるさとのインフラを担う人、教育を担う人、医療や福祉を担う人など、さまざまなプロフェッショナル分野を担う方がデジタルの素養や思考を持つことが大切で、それによって、社会のデジタル化はこれからより進展していくと考えています。
意欲ある人がデジタルの素養や知識を習得することができるよう、会員企業と協力して、多様なコンテンツや機会を提供してまいります。その1つが「CEATEC」です。最新トレンドに触れ、デジタルを学ぶ機会として、「CEATEC」をビジネスパーソンだけでなく、学生にも学びの場として活用いただきたいと考えています。CEATECを活用した具体的な施策は現在検討を進めているところですが、CEATECで展示を「見て」、コンファレンスを「聴いて」、未来の社会を「感じて」「考えて」「動き出す」という一連の体験を、学生をはじめとする次世代を担う皆様に提供することを目指します。
半導体も重要なテーマの1つです。Society 5.0やカーボンニュートラルの実現に向けて、縁の下の力持ちとなるのが半導体です。また、デジタル社会において、半導体は国民生活にも多大な影響を及ぼすことから、国家安全保障の見地からも極めて重要な製品として位置づけられるようになりました。このような環境下で、我が国における研究開発やサプライチェーン強靭化に向けた政府への提言はもちろんのこと、半導体ユーザー企業や製造装置、素材産業とも連携を図り、高等専門学校などにおける半導体関連カリキュラムの導入支援など半導体産業を担う人材の育成にも力を入れてまいります。

おわりに

会見の模様はオンラインでも配信した

会見の模様はオンラインでも配信した

JEITAはこれからも積極果敢に挑戦を続けながら、産業と産業のつなぎ役として幅広い産業の会員企業と連携し、政府をはじめとする関係各所とも密に連携しながら、課題解決や競争力強化、新たな市場創出に取り組むことで、超スマート社会:Society 5.0の実現とともに、日本経済のさらなる活性化やSDGsの達成に貢献してまいります。社会のデジタルトランスフォーメーションを加速させていために、JEITAは、電子部品やデバイス、電子機器やITソリューションを中核に、他の製造業やサービス業なども集う「デジタル産業の業界団体」として、期待に応え、責務を果たしていきたいと考えています。