Activity
活動報告関西支部

3月度関西支部運営部会・部品運営委員会
合同会合講演

関西支部では3月2日(水)にオンラインで開催した支部運営部会・部品運営委員会合同会合にNPO法人CIO Lounge理事長・矢島孝應氏、ダイキン工業(株)IT推進部長・近田英靖氏を招き、企業におけるDXの推進をテーマとする講演を行いました。

DX時代に打ち勝つ経営とITの連携

まず、矢島理事長より掲題の講演がありました。

経営におけるIT

CIO Loungeは企業CIOクラス人材(OBを含む)が参画、経営層と情報システム部門の架け橋として、経営者・CIOの相談に無償で対応しています。
コロナ禍で企業におけるIT化・デジタル化が加速する一方、IT投資の企業間格差は拡大しました。日本の経営者にはITが苦手と仰る方もありますが、欧米では財務諸表が読めないと同様に受け取られます。専門的領域を除き、もはや誰もが経営や業務のツールとしてITを使いこなすことが求められます。

企業におけるIT化の変遷

従来のIT化は、業務プロセスの標準化・連携で経営情報を可視化するもので、年単位の大プロジェクトになりがちでした。現在の主流は、短期間でシステムを構築しつつ情報の連携を進めるアジャイルです。今後は顧客・社会との連携、また、音声や画像といった非構造化データの活用がポイントとなります。
ヤンマーを例に挙げると、かつて情報システムの役割はグループ内のSCMを最適化することでした。現在ではIoT/M2Mによりお客様のメリットをいかに最大化するかがテーマとなっています。IoTにより製品の使用状況を個別に把握することでメンテナンスや活用法の提案が可能となり、お客様の満足とディーラーの成長につながります。

DXとは何か?

DXとは、デジタルでビジネスモデルを変革する「BX(ビジネストランスフォーメーション)byデジタル」、つまり、企業の使命を達成することでお客様や業界への貢献をめざすものです。その方向性は企業の使命によって決まり、企業の使命を決めるのが、経営者です。
IT化・デジタル化にはすべての社員が主体的に取り組む必要があり、IT部門の役割はガバナンスとマネジメントの強化が中心となります。ITのマネジメントはCentralization、実行は各職場でのLocalizationで進めなければなりません。

IT化・デジタル化に向けたコーポレートガバナンス

IT化・デジタル化にあたっては、①情報の管理・活用・保持、②業務プロセスの正当性・効率性、③IT環境の健全性、について責任の所在が明確でなければなりません。中堅~大企業200社を対象にCIO Loungeが行ったアンケートでは、データやプロセスについてコーポレートガバナンスに記載があり、担当役員が明確な企業は4%です。ITリテラシーについても、定期的な教育を行う企業は25%に過ぎず、従業員のスキル向上に対する取り組みもまだ不十分です。

まとめ

今後のビジネスにはITをツールとする新たなサービスが求められます。IT部門には、経営、事業と三位一体でデジタル化を進める責任があります。ドイツのIndustry 4.0と同様、デジタル化による連携の推進は日本の製造業にとって大きな課題となっています。

経営が意識すべき全社横断の取り組み・枠組み
~DX時代に向けたダイキングループITの挑戦~

続いて、CIO Loungeのメンバーでもあるダイキン工業(株)の近田部長より掲題の講演がありました。

DX時代に向けて

SDGsの重視、IoT、AI、5G等の技術革新、空気・換気に対するニーズの高まりを背景に、ダイキンでは2025年に向けた中期経営戦略において、経営基盤の強化に向け「デジタル化の推進」を掲げ、投資拡大と人材育成を進めています。インフラ(PF・クラウド)とルール(データガバナンス)の整備に加え、全社員がITリテラシーを身に付け、AI・データを道具として使いこなすことが求められます。

グループ横断の取り組み

①データガバナンス:社内におけるデータ流通の促進と、法令遵守・企業倫理に照らした適正な活用を目指します。前者については、商品企画からサービス・保守に至る各種データのサイロ化を防ぎ、グループ横断で活用するためのプラットフォーム・ルール・体制の整備を進めます。後者については、グループ各社から関係パートナーまでを対象に適正活用に向けたグローバルマネジメントのルール・体制づくりに取り組んでいます。
②サイバーセキュリティ:全社のセキュリティを統括する専任組織を置くと共に、各部門の責任範囲を明確にし、訓練を重ねています。最大の敵は「形骸化」です。各現場で情報セキュリティリーダーを任命、事業部門責任者によるセキュリティ委員会を設置した上で、各組織が毎年「自己点検」を行い、部門長の責任で改善にあたっています。
③製造業(非IT企業)が求めるDX人材:DXの推進には多様な人材を大量に要します。従来、IT人材は社員の2~3%で、中途採用等によりカバーできました。今後、AI・IoT人材は社員の20~30%が必要で、新卒の育成に加え、内部人材のスキルチェンジ、全社員教育による底上げが不可欠です。
ダイキンでは、全従業員に初~中級のICT教育を施すと共に、新卒者にはダイキン情報技術大学で2年間の専任教育を行います。育成の各段階で、技術ばかりではなくITを正しく活用するルール教育にも取り組んでいます。
④協創を通じたイノベーションの加速:空調・化学等のコア技術を追求する一方、自前主義を脱し社内外の異分野技術を取り入れたオープンイノベーションを目指します。2015年にオープンした「テクノロジー・イノベーションセンター」を拠点に、大学・研究機関、他企業と連携し、多様なプロジェクトを進めています。

今後の展望

「イノベーションの実行に向けた全社デジタル化の推進」を旗印に、社員の90%以上が海外人材である現状も踏まえ、①経済安全保障とデータビジネスの本格化を見据えたデータガバナンスの確立、②グローバルコミュニケーションの深化、③ダイバーシティ・タレントマネジメント、④人材育成の拡充(ITの基盤・実行人材、サイバーセキュリティ人材)を進めてゆきます。環境と、自社の強みを踏まえた大方針の下、まずは歩み始め、全社横断で取り組むことが大切と考えています。

講演後は、活発な質疑応答が行われました。CIO Loungeが進める経営・IT双方の視点を踏まえたDX化の課題と、ダイキン工業で推進されるDXの取り組みにつき立体的に学ぶ貴重な機会となりました。

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