第98回機器・部品メーカー懇談会
支部部品運営委員会では、11月24日(水)に標記懇談会をハイブリッドで開催しました。リアルでお集まりいただいての懇談会は約2年ぶりとなります。
最初に、村田恒夫 委員長((株)村田製作所 代表取締役会長)より開会の挨拶がありました。
「当懇談会は約半世紀に及ぶ歴史を積み重ねております。時々の技術・市場動向、業界の共通課題につき報告・議論し、機器と部品が共に発展できるよう努めてきました。本日は2050年カーボンニュートラルを中心テーマに据え、3名の講師より講演いただきます。取り組みを怠れば、企業の社会的存在も危うくなる重要課題と認識しております。今後、どのように対応してゆくのか、関西電力様、富士経済様、常葉大学様より学ぶと共に、皆様と議論し、解決の糸口を探りたいと考えています。」
2050年カーボンニュートラル社会実現に向けた取り組み関西電力(株)
再生可能エネルギー事業本部の榎本和宏 部長より講演がありました。
関西電力グループでは、2050年のカーボンニュートラル社会実現に向けグループのリソースを結集、お客様はじめ関係各方面と連携し、①デマンドサイドのゼロカーボン化、②サプライサイドのゼロカーボン化、③水素社会への挑戦、を3本柱に取り組みを進めます。再生可能エネルギーについては、2019年の389万kWから2030年には600万kWに拡大する目標を立てています。200万kW以上の新規開発には困難もありますが、関西地域のみならず、北海道から九州に至る全国で、太陽光、陸上/洋上風力、バイオマス、地熱等、多方面の開発を進めています。普及促進についても、デマンドサイドでニーズの高まる分散型太陽光電源の開発や、メンテナンスを含めたソリューションの提供に加え、国内外のRE100企業から要望の多い再生可能エネルギーの直接調達にも対応していきます。
電気の利用と供給の両面を支える送配電の技術・ノウハウ・資産を活かし、ゼロカーボン社会の実現に貢献したいと考えています。
中国における脱炭素化対策/電力、工業、自動車産業の最新動向富士経済グループ(株)
北京キメラ有限公司の姚 穎 総経理より講演がありました。
中国における2020年の部門別CO2排出量(単位:億トン)は、電力40.6、工業37.3、建築10.0、交通9.9でした。今後は、2030年までのCO2排出ピークアウト、2060年までのカーボンニュートラル実現を目標としています。電力部門については、2020年における風力・太陽光発電設備容量は5.35億kWでしたが、2030年にこれを12億kWに引き上げようとしています。工業部門では、今年、電力業界2,225社を対象に炭素排出取引制度がスタートしました。今後、鉄鋼、有色金属、石油化学、ケミカル、製紙、建築材、航空の8業種、約8,000社への展開が予定されています。交通部門では、自動車の全ライフサイクルを対象に低炭素化が進められます。2025年に評価技術・排出限度に関する規格の本格実施を計画すると共に、巨額の補助金により低炭素技術の開発を後押ししています。
車両電化の取り組みも急ピッチで進められています。国内自動車販売台数に新エネルギー車(NEV=BEV+PHEV+REEV+FCV)が占める割合は、2020年に5.4%でしたが、2030年には40%(中国汽車工業協会)~50%(富士キメラ)に達すると予測されています。国内のNEV市場は、新興ブランドの出現、スマホ業界からの参入、ICT企業との連携等により、プレイヤーが乱立する状況です。その中でHUAWEIは、自社ブランドで自動車市場に参入することはないと表明しつつ、北京汽車、長安汽車との連携を実現しています。5G通信からC-V2X、クラウド、電動化、自動運転、スマートコックピットに至る幅広い技術を保有しており、今後の動向が注目されます。
2050年脱炭素が作り出す社会とビジネスチャンス常葉大学
山本隆三 名誉教授(NPO法人 国際環境経済研究所 副理事長 兼 所長)より講演がありました。
本年6月のG7では、①CO2捕捉・貯留装置を持たない石炭火力への政府支援を本年末までに中止、②化石燃料に対する非効率な助成金を25年までに廃止、等が合意されました。10月のCOP26では、排出削減対策を講じない石炭火力発電の段階的縮小、非効率な化石燃料に対する補助金の段階的廃止、等も合意に達し、脱炭素に向けた歩みが続いています。一方で、インドやアフリカをはじめ、貧困が課題となっている途上国・地域では、まだまだ石炭火力発電に頼らざるを得ない現実もあります。
日本は、90年代以降の低成長により現在の1人当たりGDPは世界20位台に低迷、平均賃金も既に韓国を下回りました。人口は2050年に1億人、2100年には6,000万人を割ると予測され、高齢化も急速に進む中、再生可能エネルギー導入に伴う電気料金の上昇は大きな懸念材料となります。欧米では、小型モジュール炉(原子力)開発の動きが活発化しており、水素の製造にその電力を活用する選択肢も有力となっています。
難しいかじ取りではありますが、脱炭素への取り組みは、経済合理性の下、環境と成長を両立させた中で進めることが大変重要と考えています。
最後にJEITAの長尾尚人 専務理事より、JEITAによるGreen x Digitalの取り組みと関西支部の事務所移転について報告し、松本 功 副委員長(ローム(株)代表取締役社長)の挨拶を以て懇談会を閉会しました。その後には、会場参加者が講師を囲む懇談の時間を設け、さらに踏み込んだ情報交換が行われました。(写真はその様子)
カーボンニュートラル実現に向けた諸課題につき幅広い観点からお話しいただくことができ、質疑応答も活発で、大変有意義な会となりました。