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活動報告関西支部

12月度関西支部運営部会講演

関西支部では12月1日(水)にオンライン開催した運営部会に、(公財)東京財団政策研究所・主席研究員の柯隆氏を招き、「2022年の中国経済の展望-グローバルサプライチェーン再編の行方」と題する講演を行いました。

中国経済の現状

貯蓄率は個人・企業を合わせて40%に上り、投資を支えています。インフラ整備は箱物から5G、海底ケーブル等へ適切にシフトしており、個人消費もコロナ禍から回復。輸出はハイテク分野で米中デカップリングが進みますが、日用品は中国に依存せざるを得ません。

社会と政策の課題

2020年11月の都市部失業率は5.1%ですが、北京大学の推計では、出稼ぎ農民を含めると20%に上ります。資金調達に課題が多く、中小企業の平均寿命は2年9カ月に過ぎません。最低賃金は年10%水準で上昇し、競争力低下の要因となっています。今後、高齢化の進行で介護負担が増すことから、一人っ子政策の転換後も子供の増加は見られません。
今夏の電力不足は政府によるCO2排出抑制との見方もありますが、通常は産業向けを抑制する所、家庭の電力も不足しており、主因は豪州との貿易対立に起因する石炭不足と考えられます。豪州炭輸入は既に一部再開、いずれ全面解禁されるでしょう。CO2抑制より政権維持が優先されるものと考えます。
1995年以降、土地の払下げが可能となり不動産投資が急増。マンション空室率は40%に上り、恒大集団の巨額負債問題を含め、バブルのリスクが高まっています。

サプライチェーンの課題

半導体分野の上位に中国企業はなく、米中対立の激化で日本からの調達が重要性を増しています。国際特許出願数で中国は2019年に米国を逆転しましたが、オリジナリティのある特許は多くありません。一方、世界の貨物取扱量上位10港の内7つは中国で、通関システムの全デジタル化、自動運転実装など物流システムも非常に優秀です。労働者は一定の技能を獲得すると独立を選びます。技術を究めるよりは新たなビジネスモデルを取り入れモノを売ることに長けた民族と言えるでしょう。
デカップリング懸念の中、日本企業の米中ビジネスに関する調査(JBIC)では、地産地消へのシフトを進める企業は2割程度です。今後のサプライチェーン・マネジメントにはResiliencyが求められますが、補完的役割を期待されるベトナム等は、裾野産業や物流の脆弱性が課題です。自民党やJETROは「戦略物資=国内製造、基幹部品=中国から分散調達、日用品=中国製造」の体制構築を進めますが、行政の認可や住民の同意など国内製造にも課題があります。

今後の日中関係

台湾情勢は注視を要します。米中緊張の中で中国は日本との対立を望みませんが、改善すれば日中関係は一気に不安定化の可能性もあります。時間のある内に今後の戦略を練っておくことが必要です。

日中両国での経験を踏まえ、冷静な分析と率直な意見が述べられました。公式情報を鵜呑みにせず、常識に照らして政権にとっての優先順位を見極めるべき、と述べられ、新たな視点で中国を見る貴重な機会となりました。