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情報技術協定(ITA)の拡大に向けて
-WTO ITAシンポジウム開催-

ICT製品の関税撤廃を定めた情報技術協定(Information Technology Agreement: ITA)は、1997年に成立したWTO協定の一つです。この協定の下、コンピュータ、通信機器、半導体、ならびに、それらの製品に使用される部品(157品目)の関税撤廃が進められ、ICT製品の貿易は大幅に拡大しました。下の図1に示すように、1997年から2019年の22年間で、ITA製品の貿易は数量・金額ともに3倍以上に増加しました。この協定には、2020年現在82カ国・地域が加盟しており、ITA製品の世界貿易の97%をカバーしています。ITAは、世界規模でのエレクトロニクス分野の貿易自由化を促進させ、社会インフラの整備、雇用の創出、製品の低価格化、生活様式の変化、消費者の利便性の向上などに非常に大きな役割を果たしてきました。ITAはWTO の中でも最も重要かつ成功した協定と言われています。

【図1】

【図1】

協定が成立した1997年以降も、ITエレクトロニクス分野は目覚ましい発展を遂げ、飛躍的なスピードで技術の革新と融合が進んだ結果、新たな製品、製品の複合化・高機能化が進展しました。例えば、デジタル複合機・印刷機、デジタルAV機器、医療機器、新型半導体、半導体製造装置などです。こうした新しい製品はITAの対象品目でないため、関税がかけられていた為、ITA加盟国からITA対象製品拡大の要望が2012年頃から高まりました。その後、WTOにて拡大交渉が立ち上がり、関係各国による3年余の交渉を経て2015年にITA拡大(ITA-2)が合意され、新たに201品目の製品・部品が対象となりました。
その後、6年が経過しましたが、この間一度も対象品目が拡大されていません。図2のような、ITA-2協定成立以降に生み出された新たな製品(ドローン、3Dプリンタ、ロボット、半導体ベースの変換器(トランスデューサー)等)の多くが協定の対象となっておらず、課税されています。昨今のコロナ禍、気候変動、高齢化社会などの新たな社会課題解決に資する製品も少なくありません。こうした状況下、今また、ITA/ITA-2のさらなる拡大の機運が高まりつつあります。

【図2】

【図2】

本年9月にITA成立25周年を記念し、かつITAのさらなる拡大の機運を高めるべくWTOにてITA シンポジウムが開催されました(ハイブリッド開催)。
シンポジウムでは、オコンジョ・イウェアラWTO事務局長による開会挨拶、Punke元WTO大使(アマゾン副社長)による基調講演に引き続き、産業界、政府関係者が参加して、「ITAの下での世界貿易の進化」、「COVID-19禍におけるICT製品の貢献」、「経済成長へのICTの役割」、「ITAの未来」、等、5つのセッションで活発な議論が行われました。

オコンジョ・イウェアラWTO事務局長

オコンジョ・イウェアラWTO事務局長

日本産業界からは、中谷JEITA通商委員長が登壇し、これまでのICT製品の世界経済発展への貢献、COVID-19、気候変動、高齢化社会、等の新たな社会課題解決への期待を述べ、ITA-3の早期交渉開始を要望しました。

中谷JEITA通商委員長

中谷JEITA通商委員長

今回のシンポジウムを通して、ICT製品のさらなる世界経済発展、社会課題解決への役割が再認識され、ITA-3交渉開始に向けた機運が大きく醸成されました。
JEITAは、前回のITA拡大交渉の際、日本政府と連携して、関係各国代表者との対話を重ねるなど、成立への支援を行いましたが、今後も、国際的な協議の場に参加し、各国産業界と連携を図りながらITA-3の早期交渉開始に向けた取り組みを積極的に進めていきます。