国民の健康を支える医療・ヘルスケア産業
ヘルスケアインダストリ部会は、医療・ヘルスケア産業の総合的な発展に資するため、現在42社にて、部会傘下に目的別となる12の専門委員会を設置し活動を行っています。
今回は昨今注目されている医療用ソフトウェアに係る活動の紹介と、医療機器のサイバーセキュリティや、健康寿命の延伸、健康格差の縮小に貢献するためのヘルスケア周りの活動におけるトピックスを紹介します。
医療用ソフトウェアをめぐる動向と対応
医療用ソフトウェア専門委員会では、近年の医療用ソフトウェアを取り巻く大きな変化を的確に捉え、法規制や行政通知を会員が正しく理解できるよう情報交換の場を提供すると共に、海外情報の収集と共有、国際標準化(ISO、IEC、AAMIなど)を推進しています。
主な活動内容
■国内外のソフトウェアテクノロジーを調査し、医療用ソフトウェアのサイバーセキュリティについて検討し、最新情報を提供しています。
■医療用ソフトウェア法規制に対し、国内はもとより、世界的な視野に立ち、先進諸国、新興国へ対応できるよう会員へ情報提供を行います。
■医療分野のソフトウェアに関する国際標準化動向(ISO、IEC、FDA、IMDRF、AAMI、HL7、UL、ECRIなど)を把握、分析し、会員に情報提供を行います。
■ヘルスソフトウェア協議会のミラーとしてヘルスソフトウェア開発ガイドラインWG、ガイドライン運用検討TFを通じて、優良なヘルスソフトウェア(GHS)の普及を推進しています。
国内における医療機器サイバーセキュリティの確保
医療用ソフトウェアに関する調査および最新情報共有と並行して、ME標準化・技術専門委員会では、国内での医療用ソフトウェアのサイバーセキュリティの確保に資する活動を行っています。
昨今のインターネットの普及は、医療機器分野においても着実に進んでおり、機器の遠隔操作やさまざまな医療活動の効率化や最適化を実現しつつあります。しかしその一方で、ランサムウェア等の外部からの悪意あるプログラムによる攻撃や、不用意なイントラネットへの機器の接続によるウイルスプログラムへの感染等のトラブルが数多く発生しています。このようなリスクに対し、国際的なレベルで対応していくため、IEC SC62A(医用電気機器の共通事項)とISO TC215(医療情報)との共同作業グループであるJWG7(ヘルスソフトウェア)では、医療用ソフトウェアのサイバーセキュリティを担保するための規格シリーズISO 81001規格群の開発が鋭意進められています。当規格群は、JWG7が開発するその他さまざまな規格や、今後国際的な指標となることが予想されるIMDRF(国際医療機器規制当局フォーラム)サイバーセキュリティガイダンスにおいても引用されています。
これを受け、政府も成長戦略の一つのテーマとして医療機器のサイバーセキュリティ確保を取上げ、国レベルでの施策を進めていますが、ME標準化・技術専門委員会では、この動きをフォローアップすべく、下記の国際規格の翻訳JIS化を進めることとなりました。
■ISO 81001-1:2021(第1版)
医療用ソフトウェアおよび医療用ITシステムの安全性、有効性およびセキュリティ -Part 1:原則と概念
■IEC 81001-5-1[現在投票用最終ドラフト(FDIS)段階]
医療用ソフトウェアおよび医療用ITシステムの安全性、有効性およびセキュリティ
-Part 5-1:セキュリティ-製品ライフサイクル・アクティビティ
これらJISについては、上記のIMDRFガイダンスと同等の指針が将来的に国内導入される可能性を考慮し、2023年3月の制定官報公示を目指し、原案作成を急ピッチで進めています。
医療機器サイバーセキュリティに係る国内・国際動向の周知
先にも述べた通り、医療機器ソフトウェアを取り巻く環境は、急速に変化し、医療機器がネットワークを介して接続される状況下でサイバーセキュリティの対応が急務となってきています。医療用ソフトウェア専門委員会では、近年特に重要となっているサイバーセキュリティに注力し、今年度も2022年2~3月頃にセミナー開催を予定しています。(Webで募集予定/https://home.jeita.or.jp/healthcare/)
サイバーセキュリティに関する国際規制とこれを踏まえた我が国の医療機器規制の動向について、今まさに必要な最新の情報をお届けする内容になっていますので、医療機器に係わる企業の経営者、設計開発、海外法規・薬事、品質保証、安全管理、標準化、規格適合試験等の業務に従事される方はもちろんのこと、医療情報ベンダー、医療機器分野に新規参入する方々にも有益なセミナーになると考えています。皆様のご参加をお待ちしています。
ヘルスケア産業発展のために
日本では2040年に100歳以上の人口が30万人を超えると予想されており、この超高齢社会を乗り越えるためには、公的保険内の医療サービスを充実させるのみならず、公的保険外の健康増進や生活習慣予防サービスといった新しいヘルスケア産業の創出が求められます。ヘルスケアIT研究会では、この新しい産業の発展に貢献するための活動を推進しています。
PHRの利活用を考える
こうした中で大きな期待が寄せられているのが、個人の生涯にわたる健康情報(PHR=Personal Health Record)です。PHRの利活用を適切に促進し、国民一人一人が自らの健康状態を把握しながら主体的に行動することで、健康寿命の延伸を実現することが重要です。
一方で健康情報はその重要性と機微性から、情報の質や取扱いに十分留意する必要があるのも事実です。こうしたPHRの持つ可能性や課題、そして事業者目線での留意事項について、ヘルスケアIT研究会はCEATECコンファレンスを通じて発信をしました。
医療・ヘルスケア産業の発展のために
ヘルスケアインダストリ部会は、国民の健康を支える医療・ヘルスケア産業の発展に寄与すべく活動を推進します。今後は既存の医療機器メーカーのみならず、ヘルスケアサービス事業者や周辺産業との連携もますます重要となります。
引き続き、皆さまからヘルスケアインダストリ部会活動へのご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。
活動の詳細やご入会のご相談はWebからお願いします。(https://home.jeita.or.jp/healthcare/)