5月度関西支部運営部会講演
支部運営部会では5月12日(水)にオンラインで開催した部会に経済産業省 近畿経済産業局 新エネルギー推進室長の日村健二氏をお招きし、「カーボンニュートラルの実現に向けたグリーン成長戦略~エネルギー転換の視点から~」と題する講演を行いました。
【成長が期待される産業(14分野)】
最初に温室効果ガス排出削減の国際的枠組みについて説明がありました。1992年の国連気候変動枠組条約(UNFCCC)採択後、2005年に発効した京都議定書を経て2016年にはパリ協定が発効、現在に至っています。パリ協定の主な内容、2050年カーボンニュートラルに関する各国のコミット状況、さらにEU、英国、米国の取り組み動向が紹介されました。
続いて、日本の対応について説明がありました。昨年10月に菅総理の所信表明演説で「2050年カーボンニュートラル」が宣言され、12月の成長戦略会議では、このチャレンジを経済と環境の好循環につなげるための「グリーン成長戦略」が報告されています。成長が期待される産業14分野について、高い目標を掲げた上で、現状の課題と今後の取り組みが明記され、予算(グリーンイノベーション基金等)、税制、金融、規制改革・標準化(カーボンプライシング等)、国際連携など、あらゆる政策を盛り込んだ実行計画が策定されています。
エレクトロニクス産業との連携が期待され、関西エリアでの集積も厚い水素産業については、そのポテンシャル、世界的な拡大が期待される市場とその獲得に向けた競争力強化の必要性、そのための戦略策定の状況、海外各国の動向等を含めて、詳しい紹介がありました。
近畿経済産業局では、関西発のエネルギー・環境技術によりイノベーションを創出し、スマートエネルギー推進拠点の形成を目指す「関西スマートエネルギーイニシアティブ」を平成28年より推進しています。地域企業等による新技術・サービスの開発・活用、事業実施体制の整備等を通じてスマートエネルギー産業の振興を図っており、現在は、国内水素サプライチェーン構築に向けた「水素関連産業の振興」、AI・IoTを活用して地域のレジリエンス強化を図る「エネルギーの地産地消・スマートエネルギー関連産業の振興」を重点分野として取り組んでいます。
「水素関連産業の振興」では、関西の水素関連産業35社のデータ集作成や、世界初の液化水素運搬船による日豪水素サプライチェーンをはじめさまざまな実証事業を進めてきました。今後も、多様な企業が水素領域に取り組む関西の企業集積をアピールしてゆきます。「エネルギーの地産地消」では、「分散型電力需給一体型システムのモデル構築」に資する新規ビジネス創出に向け、関西の電力・ガス・住宅企業をリーダーとするプロジェクトで検討を進めました。その成果を世界に発信すべく引き続き推進してゆきます。
社会・ビジネス・生活のあらゆる場面で「価値観の転換」が必要であることが強調され、事業革新、次代の市場開拓の視点からカーボンニュートラルの動向と政策を認識できる有益な講演となりました。