IEC TC100 Web会議報告
本年5月18日(火)~26日(木)にWebにて、IEC(国際電気標準会議) TC100(AV・マルチメディア、システムおよび機器)AGS(戦略諮問会議)/AGM(運営諮問会議)および傘下グループの会議が開催され、活発な審議が行われました。以下では会期中の審議・決議の中から重要な議案について紹介します。
A. 主な規格化提案
1. リモートワーク
【リモートワークの例】
リモートワーク/サポート&コントロールシステム対応PG主査・大内敏氏(日立製作所)より、TA18(エンドユーザーネットワーク)・Web会議にて、ARおよびVRを用いたリモートワークについてのTR提案があり、審議の結果、PWI(Proposal Working Item)を設置し、TA18にて検討していくことになりました。
2. データコンテナフォーマット
センサ信号コンテナフォーマット対応PG主査田中宏和教授(広島市立大学)より、 新規提案の“Wearable Sensing Data Container Format for IoT”のWorking Draft概要が説明され、秋にNP提案を行うべく準備を進めることになりました。
<国際標準化の課題と目的>
- ウェアラブルセンサは,現在多様な用途で開発されているが,異なる種類のセンサどうしはもとより,同じ種類のセンサであってもセンサメーカ毎に各種パラメータや信号の出力形式が異なっている。
- 我が国が主導してウェアラブルセンサ信号のコンテナフォーマットを標準化し,容易な接続性を実現すると共に,データの共有・連携を可能とすることでIoT/CPSサービスの適応性,柔軟性を高めて市場の拡大を目指す。
3. Dependable Line Code
山崎信行慶応大学教授より、IECTR 63094(Multimedia systems and equipment - Multimedia signal transmission - Dependable line code with error correction)をベースにした新規提案についての説明があり、NP提案することになりました。
<新規提案の概要>
今回の提案は、TR 63094の伝送コード体系を改善し最適化したもので、以下の特徴を持つ。
- エラー検出機能に加え、エラー訂正機能をもつ。
- クロック埋め込みとDCバランシングにより、デバイス間のデータ伝送に適する。
上記2つの特徴により、通信の上位層での処理を軽くすることができるため、センサーネットワークやウェアラブルデバイス間の通信などに適しています。
4. Haptics (Tactile Display) Technology
田中宏和PLより、DTRの投票結果についての説明があり、7月にTRが発行されることになりました。
<発行予定のTR>
IEC TR 63344 ED1:MULTIMEDIA SYSTEMS -HAPTICS- CONCEPTUAL MODEL OF STANDARDIZATION
※今後は用語について、検討していく予定。
5. 他国からの主な新規提案
中国および韓国を中心に下記のようなタイトルの提案(AGS内での準備段階のものを含む)について、進捗報告がありました。
<主な新規提案のタイトル>
1. Automatic speech recognition
2. Visual comfort of display systems
3. Ultra Low Latency Communication and Control System
4.The form factor and use case of a smart mobile device for multimedia service
B. 国際役員の交代
1. TA6国際議長の交代
2021年4月大高秀樹氏(パナソニック)から勝尾聡氏(ソニー)に交代しました。
2. TA20国際幹事の交代
2021年9月に市村元氏(ソニー)から鈴木伸和氏(ソニー)に交代する予定。
C. 組織の再編
TA1とTA10のマージ
寺崎国際幹事より、3年前に組織の再編を行ったが、昨今の状況を踏まえ、TA10をTA1へマージしたいとの提案があり、次回TC100総会にて審議することになりました。
<現在の傘下TA>
TA1:放送用エンドユーザ機器
TA2:色彩計測および管理
TA4:デジタルシステムインタフェース
TA5:ケーブルネットワーク
TA6:ストレージ
TA10:マルチメディア電子出版・電子書籍
TA15:ワイヤレス給電
TA16:AAL(自立生活支援), アクセシビリティおよびユーザインターフェース
TA17:車載機器、マルチメディアシステムおよび機器
TA18:エンドユーザネットワーク
TA19:環境
TA20:オーディオ
D. 今後の予定
TC100国際幹事より、今後の予定について、下記のような説明がありました。
2021年9月:Plenary会議:Web会議
2022年5月:AGS/AGM会議:日本・岡山
2022年9月:Plenary会議:米国・サンフランシスコ
E. 国内対応
TC100にて審議しているIEC規格は、AV&IT標準化委員会にて審議しており、従来のAV&IT関係の規格に加えて、リモートワークやeスポーツなどの新しい分野の標準化についても検討しています。
AV&IT標準化委員会
1)社数:29社
2)事業概要:
- ・マルチメディア(AV&IT)機器・システム分野の標準化推進とIEC/TC100対応
- ・IEC/TC100規格・ISO規格・JTC1規格の作成、提案、 審議 国際会議対応 など
- ・JEITA規格・JIS規格・国内関連規格の作成、提案、審議 など
- ・上記分野の標準化方針、ビジョン、基本政策の策定と関連委員会への周知
- ・傘下の委員会間の課題解決調整、情報交換共有
- ・委員会、委員会の対外課題への対応と解決調整