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新会長に綱川智が就任
(株式会社東芝 取締役会長 代表執行役社長 CEO)

JEITAは6月2日に第11回定時社員総会を開催し、綱川智 株式会社東芝 取締役会長 代表執行役社長 CEOが新会長に就任しました。就任翌日に開催したオンライン記者会見には117名の報道関係者が出席、withコロナ/afterコロナの社会に向けて、業種・業界を越えた共創を推進して、幅広く事業を展開していく旨が、綱川新会長より発表されました。

― 綱川新会長記者会見 挨拶概要 ―

はじめに

JEITAの会長に就任いたしました、東芝の綱川でございます。石塚前会長におかれましては、新型コロナウイルス感染症により社会が大きく変化したこの1年間、Society 5.0に向けた各種事業活動をはじめ、ニューノーマルへの対応など、さまざまな取り組みにご尽力いただきました。あらためて感謝申し上げるとともに、これからは私がバトンを引き継ぎ、JEITA会長の責務を務めてまいります。1年間、どうぞよろしくお願い申し上げます。

withコロナ/afterコロナの社会に向けて
(ニューノーマル対応と共創の推進)

新型コロナウイルスへの対応にいまだ全世界が直面している最中であり、現時点でも予断を許さない状況が続いています。この1年間で明白になったことは、もはや我々は「beforeコロナ」の社会には戻れない、すなわち、「withコロナ」「afterコロナ」の社会を描き、新たに構築していくほかない、ということです。試行錯誤を積み重ねたこの1年間、在宅勤務をはじめ、デジタル技術を活用した、いままで「そうあるべき」「そうできたら」というように思われていたことが一気呵成に実行され、新たな日常となりました。ノートパソコンやITリモートソリューションなど当業界の対象分野は急激な需要増となりましたが、新しい日常の社会を支えるという使命感のもと、我々も取り組んでおります。
コロナ禍による社会構造の変化とそれへの対応を見るにつけ、社会的価値を創り出す力が企業価値を決定するということを痛感します。社会的価値が具体的に表現されるのはどこだといえば、それはマーケットに他なりません。マーケットでの価値を創造するには、限られた供給側のステークホルダーが集まるだけでは達成されないのです。我々、JEITAは業界団体の1つですが、もはや単一業界のことだけを考えて行動しているわけではありません。2017年、会員制度に関する定款変更とベンチャー優遇特例制度を創設したことにより、JEITAの会員企業はIT・エレクトロニクス業界のメーカーに限らず、IoTに密接に関係する企業とスタートアップに広がりました。例えば、JEITAスマートホーム部会。安心・安全、快適で便利なサービスを生活者に提供するスマートホームの実現には業界・業種の枠を超えた取り組みが欠かせません。スマートホームの普及・啓発・市場拡大に向けた課題解決を図るため、家電・IT通信機器分野のみならず、住宅や住宅設備機器、サービス等の住まいに関わる企業や団体が参画して活動しています。
このように、いまやJEITAは、電子部品や電子デバイス、電子機器やITソリューション・サービスに留まらず、それらを中核として、他の製造業やサービス産業を含む、あらゆる産業を繋げるプラットフォームのような団体になりつつあります。業界における標準化や課題解決といった重要な取り組みを推進することはもちろんですが、今後注力すべきは、広範な分野の企業の参画を得て、異なる知見や技術を持った者同士が連携し、業界を超えた課題解決や新たな価値を共に創り出す「共創」を推進することです。

2021年度の重点事業
(カーボンニュートラル、ローカル5G、半導体)

「共創」のテーマは多岐にわたります。例えば5G。昨年、JEITAが事務局を担当し、JEITA会員以外の多数の団体・企業も構成員とする「5G利活用型社会デザイン推進コンソーシアム」を発足させました。ローカル5Gは、いわば通信の民主化ともいうべきイノベーションの起点となる重要規格であるとの認識のもと、180社を超える幅広い業界・業種のメンバーが集い、『ローカル5G入門ガイドブック』を公開するなど、事業創出や市場の活性化に繋がる取り組みを推進しています。半導体もテーマの1つです。Society 5.0の実現に向けて、データ駆動社会の縁の下の力持ちとなるのが半導体です。技術開発はもちろんのこと、今後は、半導体ユーザー企業や関連産業とのコミュニケーションや連携を図りつつ、サプライチェーンの強化などにも取り組んでまいります。
そして、会員企業の事業環境の観点から、目下のテーマとなっているのが「カーボンニュートラル」です。昨年10月、菅首相は2050年までの実質ゼロエミッションを表明し、さらに4月の気候変動サミットでは2030年の温室効果ガス削減目標を2013年度比26%から46%に大幅に引き上げました。日本においてこの先10年間で再エネ関連分野において50兆から80兆円規模の投資が必要になるとみています。このような急速な市場の拡大にあわせてカーボンニュートラルの実現に向けた課題を解決していくことを大きな成長のチャンスととらえています。またコロナ禍の影響やカーボンニュートラルへの関心など新しい生活様式や社会構造への変換が加速する中でJEITA会員企業が持つデジタル技術・データ技術により社会課題解決に貢献してきたいと考えています。だからこそ、JEITAとして、「Green × Digital」は率先して取り組む事業の、一丁目一番地と位置付けているのです。材料から部品、機器、そしてデジタルサービスの企業が集うJEITAは、その特性を生かし、ユーザーとなる企業とともに、デジタル技術を使った脱炭素化に向けた議論を行う、横断的な新たな組織、「Green×Digital」のコンソーシアムを、上期中をめどに新設いたします。この新組織が既存の製品や市場の脱炭素化に向けた取り組みの司令塔となり、ルールや規制など、デジタルを使った新たな今後の市場の在り方の議論を行っていく方針です。またこの組織の立ち上げ準備をするため、事務局内に5月1日付で「グリーンデジタル室」を設置し、専任の職員を配置しました。今後、詳細の検討を進めていくことになりますので、具体的な取り組みについては、決定次第、また改めて発表させていただきます。

JEITAの取り組み
(DX、オフィスリニューアル、CEATECなど)

次に、企業や自治体などそれぞれのDX:デジタルトランスフォーメーションについてです。本年1月、IDC Japan株式会社と共同で実施した「2020年日米企業のDXに関する調査」の結果を発表しましたが、DXの取り組み状況は、日本企業で実践しているが約2割で、未着手の企業が多い現状が明らかになりました。DXの本質はその名の通り、トランスフォーメーション、すなわち変革です。いま一度、DXの目的を経営視点で捉え直し、ニューノーマルも見据え、経営トップが自ら関与してビジネス変革をリードしていくことが求められます。そして我々、JEITAそのもののも例外ではありません。先ほど述べましたように、JEITAは「デジタル」を旗印に、あらゆる産業との「共創」を推進し、市場創出に取り組む団体です。社会的な存在理由は何かと問われれば、それは会員企業の属する産業群の社会的なプレゼンスや信頼・価値を高めるということだと考えます。デジタル・イノベーションたるDXにおいてJEITA会員企業が中核的役割を果たし、存在価値を示していくためには、自らが有するデジタル技術の市場拡大を目指し、ステークホルダーとともに取り組みを加速させていくことが求められます。
その環境を整えることこそJEITA自らの使命であり、コロナ禍においてもその動きを止めるわけにはまいりません。新型コロナウイルス感染症を契機としたリモートを前提とする新たな社会に対応し、400を超える部会・委員会の会合をオンラインに移行するとともに、事務局職員の働き方を在宅勤務等のテレワークを基本とするなど、デジタル技術を活用した新しい働き方への移行を進めてきました。大きく変化したのがオフィスの在り方です。JEITAのオフィスは、もはや単に会議や作業をする場所ではなく、会員ならびに事務局職員などの関係者が「リアルコミュニケーションによる共創を生み出す場所」として再定義し、目的に合わせて最適な環境で働けるよう、オフィスリニューアルを敢行しました。これは事業基盤を強化するとともに、事業遂行環境のシームレス化を目指すものです。新オフィスは「コミュニケーション」に特化した環境とすることで、多種多様な人々が議論をしたり、アイディアを語り合ったりするなどして、コラボレーションを促すことを目的に設計しました。また、オンラインによる記者会見や講演会の配信ができる専用スタジオも開設しました。本日の記者会見もそのスタジオから皆様に配信しています。緊急事態宣言が延長されるなど、新型コロナウイルス感染症の影響は予断を許さない状況が続いていることから、CEATECやInter BEEといった主催展示会におけるオンライン展開においても、このスタジオを積極的に活用してまいります。JEITAは柔軟な働き方、言い換えれば、対面とオンラインのハイブリッドで事業活動が実現できる環境を整備することで、従来型の「対面」のみのアナログな業界団体から脱却し、あらゆる事業活動において「リモート」をフル活用する、真にデジタルな業界団体を目指します。

おわりに

JEITAはこれからも積極果敢に挑戦を続けながら、産業と産業のつなぎ役として幅広い産業の会員企業と連携し、課題解決や競争力強化、新たな市場創出に取り組むことで、世界に先駆けた超スマート社会:Society 5.0の実現とともに、日本経済のさらなる活性化やSDGsの達成に貢献していきます。政府をはじめ関係各所と密に連携しながら、会員の皆様とともに事業を推進してまいります。最後になりますが、これからの1年間、会員をはじめ皆さまのご指導・ご協力を賜りながら、JEITA会長として、全力を尽くしてまいります。引き続きご支援いただきますようお願い申し上げます。