Contribution
寄稿産業技術総合研究所

新たな標準物質:短鎖塩素化パラフィン(NMIJ RM 4076-a)

計量標準総合センター(NMIJ)では、欧州の電気電子機器中の有害物質制限指令(RoHS指令)での、新たな制限物質の候補である短鎖塩素化パラフィンに関して、許容濃度を評価できる標準物質(NMIJ RM 4076-a)を、2021年4月から供給開始する予定です。

はじめに

RoHS指令とは、The Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment(電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する欧州議会および理事会指令)のことで、許容濃度以下の制限物質を含んだ電気電子機器のみが欧州に上市できるようにする枠組みです。JEITAが国内事務局を務めるIEC(国際電気標準会議)TC111(電気・電子機器、システムの環境規格) でのWG(ワーキンググループ)3の活動において、このRoHS指令の制限物質に関する試験方法が議論されています。この方法IEC 62321(電気電子製品中の有害物質における試験方法)において、近年追加されたフタル酸エステル類4種の試験方法などが検討されました。

塩素化パラフィン

塩素化パラフィン(CP)がRoHS指令の制限物質候補の一つになり、現在検討されている最中です。制限物質になるとTC111/WG3で試験方法が検討されるだけでなく、分析事業者はCP測定値が許容濃度以下であることを評価しなければなりません。この検討や評価に、標準物質をツールとして活用できます。

標準物質

写真1 短鎖塩素化パラフィン(NMIJ RM 4076-a)

写真1 短鎖塩素化パラフィン(NMIJ RM 4076-a)

分析から得られる測定値を決定するために、標準物質は用いられています。一般的には、検量線作成のために使われています。計量標準総合センター(NMIJ)では、短鎖塩素化パラフィン(NMIJ RM 4076-a)を開発しました。(写真1)

CPのなかでも、炭素数が10から13の短鎖塩素化パラフィン(SCCP)は、PCBやダイオキシン類と同様、環境残留性や生体等への悪影響が懸念されています。そのため、「化学物質の審査および製造等の規制に関する法律(化審法)」が改正され、SCCPは第一種特定化学物質として2018年4月から製造・使用が規制されています。

おわりに

この標準物質は、分析装置の校正に用いる他、分析の精度管理、分析方法や分析装置の妥当性確認に用いることができます。またNMIJでは、中鎖塩素化パラフィン(MCCP)標準物質開発の検討も開始しています。これら標準物質は、研究開発を支えるだけでなく、円滑な商業活動、地球環境の保全などになくてはならないものです。今後もJEITAは、RoHS指令に関連する活動を皆様にお伝えします。

■標準物質のご案内

NMIJが供給する標準物質一覧を掲載しています。

https://unit.aist.go.jp/qualmanmet/refmate/