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活動報告関西支部

3月度関西支部運営部会・部品運営委員会
合同会合講演

関西支部では3月3日(水)にリモートで開催した運営部会・部品運営委員会合同会合にHmcomm(株)代表取締役CEOの三本幸司 氏を招き、「AIによる異常音検知の現状と今後の展開について」と題する講演を行いました。

同社は、産業技術総合研究所発のベンチャーとして2012年7月に設立。独自の音声処理技術を基盤に、音声認識や自然言語処理等、要素技術の研究開発を進められました。2014年からは「音声×AI」に特化、「Terry」(音声自動応答)、「VContact」(リアルタイムのテキスト化等、コールセンターのAI化)、「VRobot」(ホテルでの自動チェックイン)等、多様なソリューション・サービスを提供されています。第3回JEITAベンチャー賞(2018年3月)をはじめ、受賞歴も多彩です。
国内IoT市場は、2013年度の2,863億円から2020年度には約4倍に成長の見込みです。また、2020年のセンサー国内市場約5.9兆円のうち1%=600億円程度は何らかの形で異音検知に関わると考えられています。 

講演では、様々な音の特徴量を抽出し機械学習を用いて学習モデルを生成する異音検知プラットフォーム「FAST-D」について詳しい説明がありました。
機械や生物が正常時と異常時のそれぞれに発する音をAIを用いて機械学習し、安定的にモニタリングすることで異常の発見や予兆検知に役立てることができます。同社では、人の耳で聞いてわかることはすべて検出可能と考え、熟練した職人が耳で判断する知見をAIに学習させる取り組みを進めています。

通常、学習モデルの作成にはAI技術者の膨大な作業が必要で、長期にわたるPoC(Proof of Concept=概念実証)が欠かせません。「FAST-D」は、AI技術者の知見を基に開発され、「異音検知」の学習モデルを半自動・短手番で生成・運用するプラットフォームです。各現場の特性に合わせてチューニングすることで、非言語全般の解析に対応できることから、①機械・製造設備の故障予防・早期対応、②鉄道や自動車におけるモーター駆動系の故障予防・安全性向上、③家畜の健康管理による品質・生産性向上、④職場・家庭・地域における保安・安全・防災等、多様なフィールドでの活用が期待されます。既存の業務アプリケーションとのAPI連携により、機械停止や警報発報等、より複雑な処理も可能です。
平成30年度に経済産業省の補助により実施された「産業データ共有促進事業」において、合成ゴムプラントにおけるパイプラインつまりの予兆検知に取り組まれた他、養豚現場における呼吸器系疾患の兆候(せき、くしゃみ)や発情状況の検知、人や動物の心音検知、防犯カメラとの併用で死角や暗闇の異常も認識できる警備システム等、多様な活用事例も紹介され、参加各社とのコラボレーションも期待される大変興味深い講演となりました。