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活動報告政策渉外部

サプライチェーン全体を通じた
「ビジネスと人権」への取り組み推進に向けて

近年、注目度が増している「ビジネスと人権」に対する、JEITAの取り組みをお知らせします。

ビジネスと人権

コロナ禍により、企業は改めてサプライチェーンの強靭化、多重化が求められるようになりました。その一方で、各社はグローバルにビジネスを進めるなかで、「人権尊重」を各方面から求められることが非常に多くなっています。欧米企業を中心に、サプライチェーン上のサプライヤーにおける人権デュー・ディリジェンスを自社の取引先に求める動きもあります。人権デュー・ディリジェンスとは、企業が人権リスクを測定するために、企業活動を通じて、または取引関係の結果として関与する可能性のある人権への悪影響(潜在的なものを含む)の特定・評価から、対処するための取り組み、その継続的な評価、情報提供に至るプロセスを指します(注3)。
さて、「人権」と言っても、差別や貧困問題、性別やLGBTといったダイバーシティについてなど様々なトピックが挙げられますが、いまビジネスの中で関心が高まっているのは、強制労働と児童労働です。2011年に国連(国連人権理事会)が定めた「ビジネスと人権に関する指導規則(UNGP)」では、このような人権問題に関し、企業に対してサプライチェーンを通じた「人権デュー・ディリジェンス」を実施するよう求めています。イギリスやオーストラリアでは、現代奴隷法という名前の法律の下に、人権の尊重がなされています。日本でも、2020年10月にUNGPを実施するための「ビジネスと人権」に関する行動計画(National Action Plan: NAP)が策定されました。
国際労働機関(ILO)によれば、全世界における現代奴隷制の被害者は2016年の時点で4,030万人にのぼり、また民間部門における強制労働搾取の被害者も1,600万人に達していると推計されています(注1)。また、約1億5,180万人の児童が働いているとも推計されています(注2)。日本企業は、発展途上国等から原材料を仕入れるケースがありますが、そうした発展途上国において、移民労働者による強制労働や鉱山等生産現場における児童労働が依然として存在していると報道されています。
こうした背景により、企業は、ステークホルダーから取引先を含めたサプライチェーン全体におけるCSR調達の推進、人権デュー・ディリジェンスが求められていますが、「ビジネスと人権」への取り組みの重要性・必要性を十分理解していないサプライヤーがまだ多くあり、サプライチェーンへの啓発推進が業界共通の課題となっています。

JEITAの取り組み

責任ある企業行動ガイドライン(英語版)

責任ある企業行動ガイドライン(英語版)

そこで、JEITAは、これらの課題に適切に対処すべく、国際機関(OECD、ILO等)とも連携して、グローバルの動向や先進事例の共有、現場の課題や対応策について議論するなど、様々な活動を行っています。サプライチェーンへの啓発活動については、業界全体で取り組むことにより、幅広い層のサプライヤーへの働きかけが可能となり、サプライヤーの理解向上、そしてサプライヤーと依頼側企業双方の負荷低減・効率化が期待されています。
2020年3月には、サプライチェーン全体の人権・労働をはじめとしたCSRを具現化するためのモデル行動規範として「責任ある企業行動ガイドライン」を改訂しました。(「サプライチェーンCSR推進ガイドブック」(2006年)の改訂版として発行したもの)。また同年12月には同ガイドラインの英語版、中国語版を発行しました。このガイドラインの作成に際しては、ILO駐日事務所の協力を得て、特に人権・労働に関する内容について、国際労働基準をはじめとした国際文書等との整合性の確保を図るとともに、各々の項目に詳しい解説を記載し、サプライヤーの理解を助けるように工夫しました。
そして、2021年3月には、同ガイドラインに基づくサプライヤー向けの「自己評価シート」(日本語版、英語版、中国語版)を発行いたしました。このシートは、ガイドラインで取り上げた個々の項目に対する取り組み状況をサプライヤーが自己評価するためのツールで、ガイドラインおよびこのシートを活用することでサプライヤーのCSRに対する理解向上に繋がることが期待されます。

【責任ある企業行動ガイドライン 自己評価シート】

JEITAではほかにも、責任ある鉱物調達検討会が主催し、毎年6月に全国で開催している「調査説明会」において、従来の「紛争鉱物」に加えて、こうした人権に関するサプライチェーン上の要求が高まっている「責任ある鉱物調達」の現状を説明し、多くの企業に理解を求めています。

今後の取り組み

今後の取り組みとしては、サプライチェーンにおけるCSR調達の浸透・効率化推進を目的とした「責任ある企業行動ガイドライン」を活用したサプライヤーに対する教育・啓発活動、苦情処理メカニズム(業界共通プラットフォームの構築)に関する検討等を行う予定です。
また、責任ある鉱物調達の分野においても、今年度はオンライン形式で説明会を開催し、最新動向をお伝えするとともに、個別相談会を設ける予定です。
JEITAは、グローバルにビジネスを展開する各社共通の課題であるサプライチェーンにおける「ビジネスと人権」に関する啓発推進に貢献していきます。また、欧州をはじめとする人権におけるデュー・ディリジェンス強化の動きに対しても、各社の現場の声を踏まえて、サプライチェーン上のより多くの企業が適切なアクションを取ることができるよう、様々な方策を検討してまいります。

■対応組織

●CSR全般、「責任ある企業行動ガイドライン」関連:CSR委員会
●「責任ある鉱物調達」関連:責任ある鉱物調達検討会

(注1)参照:ILO 現代奴隷制の世界推計:強制労働と強制結婚(日本語訳)、2017年
(注2)参照:ILO/Tokyo2020 国際労働基準と持続可能性に配慮した調達ハンドブック~東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を契機とするディー セント・ワークの実現に向けて~、2019年
(注3)出典:同上

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