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活動報告技術戦略部

三次元CAD情報標準化セミナー 実施報告

2021年2月19日(金)に、三次元CAD情報標準化専門委員会(以下、専門委員会)主催の三次元CAD情報標準化セミナーが開催されました。新型コロナウイルス感染症への対策として、オンラインでのWebセミナーとして開催しました。設計情報である3DAモデル(三次元製品情報付加モデル)および、3DAモデルを元にものづくりの各工程での情報と連携するDTPD(デジタル製品技術文書情報)で、DTPDに繋がる3DAモデルの全体説明、業務側がどの様な情報をどの様に活用したいかに着目した業務改善準備活動の紹介、属性設定およびCAx間での利活用に着目した業務改善実現活動の紹介、各種ITツールによるDTPDシナリオ対応事例紹介がありました。参加者には製造と計測で3DAモデル活用要件を定義することで、製品開発全体を効率化するためのヒントになったと思います。報告の概要をご紹介します。

Webセミナー「三次元CAD情報標準化セミナー2020」のオンライン視聴画面 Webセミナー「三次元CAD情報標準化セミナー2020」のオンライン視聴画面

DTPDに繋がる3DAモデルとは

新型コロナウイルス感染症対策を取り込んで専門委員会活動

今年度(令和2年度)は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、従来のような専門委員会活動を行うことが困難な状況でした。毎月定例の委員会と各WG活動などをWeb会議で開催し、電子メールと共有ファイルサーバを使って、情報共有を行いながら、リモートの環境で活動を続けました。更なる業務効率化の実現 を目指し、DTPDでの3DAモデル活用に関して、形状属性情報の連携に的を絞り活動をしました。DTPD利活用のイメージと効果を定例委員会参加者全員で理解・納得・共有するために、昨年度(平成31年度)までの体制(標準化分科会と活用分科会の構成)からDTPD運用検討会とDTPD推進検討会で一貫した体制に変更し活動しました。

3D設計情報を活用し、ものづくり工程で活用するための方法とは

三次元CADは、広く製造業に普及しています。しかし、設計以外の他工程や協力企業への設計情報連携と指示は、未だ2D図面で展開する仕組みになっています。3DAモデルの活用が設計部門内にとどまり、関連する各工程(調達・生産・製造・CAE・検査・サービスなど)で活用しきれず、製品の開発期間短縮や品質向上に効果を完全に発揮できていません。また、国際的に一義的な解釈が得られる、幾何公差の活用もなかなか普及していません。国際的な幾何公差中心設計の流れに対し国内製造業は遅れています。三次元CAD情報標準化セミナー2020では、業務で使える3DAモデルおよび、3DAモデルを元にものづくり各工程での情報と連携するDTPDの利活用による業務改善の実現方法を紹介します。製造と計測の3DAモデル活用要件を定義し、属性化することで、製品開発全体が効率化できます。3D設計情報を活用し、ものづくり工程で活用するための方法を、事例を織り交ぜながら具体的に解説します。

業務側がどの様な情報をどの様に活用したいかに着目した業務改善準備活動の紹介

部品設計を直接的に効率化するには

これまでの専門委員会活動では、設計情報を一義的に解釈するために幾何公差の取り組み、製造部品と抜き勾配なしの3DAモデル形状との違いを整合させるための標準注記や属性連携を検討し、カラーマップを活用した計測方法を検討してきました。これは国際規格、業務ツール(三次元CAD・CAM・CAT)の機能と、自社業務の効率化との整合が必要という理由からです。製品設計者の業務手順と本当の目的を再確認し、効率化の要件を考えました。要件は3DAモデルに必要な設計情報(属性)を設定すると、最終成果物(3DAモデル・図面)が自動的に作成され、設定情報は製造・計測の業務ツール(CAM・CAT)に自動的に引き継がれ再入力なしで活用されるということです。設計者は各種緒元を決定した後で最終成果物を作成します。その実態は、最終成果物の作成前にほぼ全ての検討が終了しており、最終成果物の作成は取引先を含む次工程(自社・取引先)への情報伝達とエビデンス管理のために行っているのではないでしょうか?3DAモデルを一義的に解釈するために、幾何公差で必要な情報を設定することを確認してシナリオを作成しました。具体的には、設計している部品に対して、①データムを設定すること、②必要な公差を幾何公差で設定するということの2点です。

【製品設計者の業務手順と目的】【製品設計者の業務手順と目的】

DTPD運用検討会の活動

DTPD運用検討会では、会員会社から部品設計の基準を持ち寄り、その部品の設計思想(基準原点と機能要件)から形体に必要なデータムを、3平面(端面)とサイズ形体に分けて検討しました。どの形体に、どのデータムを設定すればいいのか整理しました。更に、必要な幾何公差指示を検討して、どの形体に、どのような情報(幾何公差を設定するための属性)設定すればよいのかを整理しました。これらをDTPD運用指針としてまとめる予定です。会員会社で使用の主要な3次元CAD(CATIA・Creo・SOLIDWORKS・NX)でPMI(幾何公差指示)を設定して、形体に必要な情報が作成できるのか評価しました。DTPD運用指針を具現化するための機能要求に結び付けたいと考えています。

属性設定およびCAx間での利活用に着目した業務改善実現活動の紹介

データム系・幾何公差情報の伝達のあるべき姿

2次元と3次元の表示はグラフィカルPMIで伝達され、データム形体のラベルと3次元形状との関連はセマンティックPMIで伝達されます。データム系の意味(例えば、各データムによる6自由度の拘束状態、3平面データム座標系からJEITA普通幾何公差を求める)は情報として伝わっていません。完全な解釈のためには規格の広く正しい理解が必要であり、フォーマットによっては部分的にこの情報を表現することができるが統一されていません。会員会社で使用の主要な3次元CAD(CATIA・Creo・SOLIDWORKS・NX)のPMI機能の発展は著しいものがあり、今後に期待できます。

DTPD運用検討会の活動

3DAモデルをDTPDとして運用する上での課題は、CAD上でのPMI作成に工数がかかること、作成したPMIが他ツールに渡らない(特にSTEP等を経由した場合)ことです。DTPD推進検討会では、基本的なPMI情報(データム、データム系、幾何公差)をCADの属性により表現することで2つの課題解決を検討しました。会員会社で使用の主要な3次元CADの標準フォーマット入出力機能を調査し、設定機能が揃っていることと中間フォーマットに確実に出力されることから色を利用することとしました。DTPD運用検討会で作成されたデータと手順を基にして、第1、第2、第3データムの区別、データム形体に対する幾何公差、サイズ形体のサイズに対する公差値を抽出し、具体的な色による表現方法を検討しました。あらかじめCADのカラーパレットで色を作成しておき、DTPD運用検討会作成のPMIデータから色を決めて3DAモデルを作成しました。エリジオン製ツール“ENF editor”を用いて色属性から自動的にセマンティックPMIを作成しました。図表1に示すように、表示位置を除き、3次元CADで直接作成したPMIと同じPMIが生成されることを確認しました。

【図表1:色情報による定義とPMIへの自動変換】【図表1:色情報による定義とPMIへの自動変換】

各種ITツールによるDTPDシナリヲ対応事例紹介

形状属性標準化技術

DTPD推進検討会で検討した3DAモデルデータ(属性/PMI)の変換および利用を支える形状属性標準化技術を具現化したツールを紹介します。PMI変換の応用例として、3Dデータ変換ツールASFALISのカスタマイズ機能ENF Editorを利用して、色付きモデルからPMIを自動生成するデモンストレーションがありました。その他のPMI変換も可能です。CAD Validatorを使えば、形状・ アセンブリ構成・PMI・属性情報などCADデータに含まれる情報差異を漏れなく検出できます。

計測:品質保証運用の実例

QIF規格に基づく統合製造工程管理ソリューションKOTEM Evolveを使って、DTPD推進検討会で検討した3DAモデルデータ(色による効率的なデータム系設定方法)による測定事例のデモンストレーションがありました。データムと幾何公差定義とJEITA普通幾何公差もKOTEM Evolveの中で確認ができます。また、DTPD (MBD)によるデジタルものづくりの効率化のデモンストレーションもありました。KOTEM Evolveによる製造工程フィードバック(加工機補正シミュレーション)、CheckMateによる3DAモデル情報からのCMM自動パス生成、MBDVidiaによるEXCEL検査表やPPAPドキュメントも作成ができます。

DTPDと金型設計・製作

3DAモデル金型工程連携ガイドラインは、プラスチック部品における、製品設計と金型設計・製作間での3DAモデル流通の円滑化と有効活用のためのガイドラインです。新しいVer2.0では、PM3~PM5で注釈(アノテーション)にて指示を行う要件項目のうち、指示対象が不明確で正確に後工程に伝わり難い項目や、規格化を行うことでソフトウェア間の連携により処理の自動化などの効果が見込める項目を強化しています。これを利用して、三次元図面による非接触測定プロセスの実現で実施したPM3からPM5への半自動モデリングとTMモデルからCAMへの自動連携のプロトタイプによる実現可能性の検証内容の説明がありました。出展は、令和2年度省エネルギー等に関する国際標準の獲得・普及促進事業委託費(省エネルギー等国際標準開発(国際標準分野))(デジタルものづくり推進のためのデータ基盤に関する国際標準化)成果報告書より。

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