Activity
活動報告
関西支部

第96回 機器・部品メーカー懇談会

関西支部・部品運営委員会では11月20日(金)に標記懇談会をリモートで開催しました。

部品運営委員長開会挨拶

開会にあたり、吉田茂雄 委員長(ニチコン(株)代表取締役社長)より挨拶がありました。

「当懇談会は長く年2回の開催を続けて来ましたが、本年は6月の開催を見送り、今回はWeb開催となりました。コロナ禍は生活とビジネスを大きく変えつつあり、インターネット関連産業が活況を呈しています。一方、自動車産業は一時生産停止に陥ったものの、世界的なEV化が加速しています。日本でも2050年にCO2排出ゼロの目標が打ち出され、環境対策に本腰が入りつつあります。あらゆる分野で変革が進む中、本日は通信、モビリティ、DXの領域について講演をいただきます。ご参加の各社と委員会の発展に資することを望みたいと思います。」

日本初 空飛ぶクルマ“SkyDrive”の開発について
(株)SkyDrive

技術渉外責任者の山本賢一氏より講演をいただきました。

「空飛ぶクルマの開発には世界で100社近くが取り組み、2040年ころの世界市場は170兆円、自動車産業の1/3相当と見込まれます。当社は、電動/自動/垂直離着陸により、①渋滞に巻き込まれず短時間で、②半自動運転で安全に思いのまま、③インフラが整備されていない地域で活用できる、新しいモビリティの実現を目指しています。2017年に開発に着手、本年夏には有人飛行試験に成功し、先行各社を猛追している所です。2018年に発足した“空の移動革命に向けた官民協議会”に参画し、航空法等の制度や社会インフラ面の調整にも取り組んでいます。本年11月に開催された“空の移動革命社会実装大阪ラウンドテーブル”設立式において、2023年に大阪南港・夢洲エリアで就航を目指す旨を発表しました。フライトコントローラーと呼ばれる制御技術を核に、無人搬送機カーゴ・ドローンの事業化も進めています。
空飛ぶクルマもカーゴドローンも“何があっても飛び続ける”ことが必須で、安定性と高容量を確保できるバッテリーや、サイバーセキュリティ対策など、エレクトロニクス・ICT各社の技術開発に大きな期待を抱いています。“新しいモビリティで移動や生活を豊かにし、日本初のハードウェアスタートアップを成功させ、日本のものづくり産業を活性化する”という強い想いを持って取り組んでゆきます。

5G/ローカル5Gの最新動向と活用事例
エリクソン・ジャパン(株)

CTOの藤岡雅宣氏より講演をいただきました。

「当社は移動体通信の地上固定設備世界最大手で、5Gでも世界をリードしています。5Gの特徴として、高速・大容量、低遅延、多数同時接続が挙げられます。現在、49カ国、122事業者が商用サービスを実施。米国、韓国、中国、中東が先行している状況です。普及速度は4Gを上回っており、2024年には世界で19億人の5G加入が見込まれます。日本では本年3月に商用サービスを開始、基地局はまだ7~8千程度で、立上げの加速が望まれる所です。
企業や自治体などが建物や土地単位で専用ネットワークにより導入するローカル5Gについては、日本でも昨年12月に一部帯域の割当が始まり、工場のIoT化やケーブルTVのラストワンマイル代替などで免許取得が進んでいます。干渉調整、運用・サポート人材の育成、産業向けデバイスの不足など課題も多くありますが、総務省の地域課題解決型ローカル5G開発実証では、工場・農業・漁業・観光・スポーツなど多様な分野で用途開発が進められています。
5G/ローカル5Gは、自動車工場におけるラインロボット・無人搬送車制御や、VR・ARによる作業支援等に世界中で活用されており、EVトラック、港湾クレーン、鉱山重機の遠隔運転にも試行・実装が進んでいます。一つの工場で1000台のロボット等、大量の機器を制御する事例もあり、低価格で高品質のローカル5G端末の実現が望まれています。

製造業におけるIoTのグローバル実践事例と動向
~DXが推し進める製造業の展望~
デロイトトーマツコンサルティング合同会社

Supply Chain & Network Operations部門の岡部亮一氏、西園茂雄氏、大地宏明氏より講演をいただきました。

「当社は、世界150カ国で事業を展開するデロイトグループの日本法人で、サプライチェーン領域のコンサルティングで高い評価をいただいています。
高齢化の進展や人口の都市集中等、昨今の社会課題の解決にはIoT技術の活用によるスマート化が不可欠です。企業やコミュニティ等、社会の各層で多様な取り組みが進められ、IoT関連のグローバル市場は年平均で10.5%の伸長が見込まれています。産業別に見ると製造関連とエネルギー分野の比率が最も高く、製造DX/スマートファクトリー化が中心的なテーマとなっています。
製造DX/スマートファクトリー化においては、業種・地域に関わらず、現場から経営層まで情報を一元化してスピードアップを図ることが第一歩となります。加えて、工場間/部門間/機能間の情報をシームレス化し、柔軟な対応を実現します。さらに、サプライヤ/ベンダー/顧客など社外と情報を連携することで、価値の最大化を目指すことが求められます。
技術動向を見ると、2~5年後にはスマートファクトリーも「安定期」に入ると見込まれます。コロナ禍によりAR/VR/MRへの関心が高まっており、クラウドへの移行も進みました。遠隔支援の可視化やBI(Business Intelligence)システム・サービスが伸長すると共に、AIプラットフォーム、ヒト協調ロボット・無人搬送機、さらにローカル5Gの市場も急拡大しています。中国の鉄鋼・家電、シンガポールの電子部品、フランスの産業用機械など、注目すべき導入事例が多くあります。
事業環境に合わせた柔軟な工場運営、リモート業務の導入・拡大、従業員の健康確保の視点を踏まえ、新しいモノづくりにアプローチして行くことがきわめて重要となります。

部品運営副委員長閉会挨拶

閉会にあたり、部品運営委員会の村田恒夫 副委員長((株)村田製作所 代表取締役会長)より挨拶がありました。
「今後の経営、委員会運営に役立つ貴重な講演をいただき、感謝します。今回はリモート開催となりましたが、リアルな開催に戻っても、オンラインを併用することで、より多くの方にご参加いただけるのではないかと考えています。
本日のご講演をお聴きして、コロナの重い空気を吹き飛ばし、世界が大きく変わる気分にさせていただきました。こうした流れにうまく乗って、皆さんと共に成長し、事業を伸ばして行ければと思います。」
全体を通じ、DXに関するグローバルな動向から、個別分野に関わる最新状況まで幅広く紹介され、大変有意義な機会となりました。