Activity
活動報告
関西支部

12月度関西支部運営部会講演

関西支部では12月2日(水)にリモートで開催した運営部会に、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)技術戦略研究センターより伊藤 智 デジタルイノベーションユニット長を招き、「コロナ禍後の社会変化と期待されるイノベーション像」の演題で講演を行いました。

コロナ禍後の社会変化と新しい価値観

コロナ禍で従来の経済社会の抱える脆弱性が露呈し、新たな社会像・価値観が求められています。
中国からの輸入がストップし国内経済が大きな影響を被ったように、サプライチェーンの再構築・国内回帰への志向が強まりました。地球環境問題とも関連して、大量生産・大量消費からの脱却が求められ、環境政策はコロナ禍後の経済対策としても注目を集めています。デジタル化、さらにオンラインでつながる分散・ネットワーク化が急速に進展した一方、リアルな体験・共感から得られるアナログ的な価値も向上しています。
具体的な変化として、医療においては、オンライン診療の要件が緩和されると共に、IT・AIおよび各種のセンシング技術を用いた感染対策が取り組まれています。製造業においては、特に中小企業のスマート化、ベンチャー企業による経済の新陳代謝、フレキシブルな労働市場への転換がいっそう求められます。教育におけるオンライン授業の普及は教育格差を解消する方向に機能するはずですが、ネットワーク環境の差が格差を拡大している傾向があります。
コロナ禍後に求められるイノベーション像のキーワードとして、デジタルシフト、オンラインコミュニケーション、リアリティ、信頼性・セキュリティ等が挙げられますが、何より重要なのは、こうした認識が、一部の識者・経営者に限らず全人類で共有された点であろうと考えられます。

デジタルトランスフォーメーション、持続可能な社会への転換に向けて期待されるイノベーション像

すべての産業分野でデジタル化が浸透・進展し、今後も、5G、VR、ロボット、モビリティ等に多様なデジタル技術の展開が期待される所ですが、日本では、デジタル人材の層の薄さが大きな課題であり、育成が急務となっています。
また、グローバルサプライチェーンのもろさが明らかとなり、原材料を輸入して大量生産・大量消費する従来モデルからの脱却、すなわち3Rの取り組み強化、環境にやさしい素材・エネルギーへの転換も必須となります。NEDOではこれらを包含した「持続可能な社会の実現に向けた技術開発総合指針2020」を取りまとめた所です。プラスチックの需要が増大する一方、感染リスクの回避から焼却処理も増加しており、リユース・リサイクルの推進はもちろん、原料の植物化、生分解性プラスチックに関する技術開発はことさら重要です。従来の仕組みで対応困難な課題に対しては、スタートアップとの共創により新たな価値を生み出す必要があり、米中に見劣りするスタートアップへの投資について改善が求められる所です。
コロナ禍後には、①接触のある実空間と非接触のサイバー空間がシームレスに連携され、感染症を効果的に予防しつつ双方のメリットを享受できる社会、②デジタル技術の進化、エネルギー需給の自律化、省資源・地域循環型のサプライチェーンの構築により、感染症や災害の発生時に維持可能な強靭性の高い社会、が期待されています。求められるイノベーションの幅は広く、産学官が一体となって取り組む必要があります。
コロナ禍後に求められるイノベーション像が非常に幅広い視点から提示され大変参考になりました。