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石塚会長記者会見
(「Society 5.0」の実現に向けたJEITAの取り組みを発信)

2020年12月16日に石塚茂樹会長による記者会見をオンラインで開催し、「電子情報産業の世界生産見通し」など、各種取り組みに関する発表が行われました。119名の報道関係者にご参加いただき、その内容は報道各社によって広く社会に発信されました。

【発表内容のハイライト】

2020年の振り返り

はじめに、新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた方に哀悼の意を表するとともに、現在も最前線で対応にあたられている医療従事者の皆様、そして社会インフラを支えるすべての関係者の皆様に改めて敬意を表し、深く感謝申し上げます。
2020年を振り返りますと、新型コロナウイルス感染症により、人々の暮らしや働き方など、社会全体が大きな変革を迫られた1年となりました。あらゆる場面でデジタル技術の活用が一気に進展し、劇的な変化が生まれています。
JEITAの事業活動も例外ではありません。私どもが主催する展示会である「CEATEC」ならびに「Inter BEE」は、今年初めてのオンライン開催に踏み切りました。新たな取り組みということもあり、ご迷惑をお掛けした点もございましたが、多数のご出展、またご参加をいただき、さまざまな発見や学びのある、実りの多い機会となりました。ご高配を賜った皆様に厚く御礼申し上げます。現在、オンデマンド形式にて一般公開していますので、ぜひ引き続きご活用ください。
また、ニューノーマル時代に適応する、JEITA事務局の働き方改革にも取り組んでいます。具体的には、本日オンライン記者会見を実施しています「JEITAスタジオ」の新設、そして、10年ぶりのオフィス改装を敢行し、フリーアドレス型のオフィスに生まれ変わらせます。これまで業界団体の活動というものは「対面が基本」でしたが、業界活動や職員の働き方も「リモート」が主体となりました。理事会をはじめとする数千回の会議・講演会のオンライン開催、職員のテレワーク推進、ペーパレス化の促進など、デジタル技術を活用した業務改革を進めています。いまや事務局職員の出社率は3割を切っています。アフターコロナにおいても、このデジタル化の流れは変わらないという認識のもと、ニューノーマルにおける経営基盤の改革として、本部事務所の面積半減と、デジタル対応設備導入のためのリノベーションを実施してまいります。
先行きの不透明感や目に見えない不安が社会を覆っている現状ではありますが、経済成長と課題解決を両立する豊かな社会の実現に向けて、今後も感染拡大防止のため、リアルとリモートをバランス良く融合させた取り組みを加速させていかねばなりません。電子部品やデバイス、電子機器やITソリューションを中核として、他の製造業やサービス業などあらゆる業種の企業が集う「Society 5.0の実現を支える業界団体」であるJEITAは、ニューノーマルを支えるデジタルトランスフォーメーションの担い手として、その責務を果たしていきたいと考えています。

業界動向(電子情報産業の世界生産見通し)

JEITAの中核である電子情報産業の、今年ならびに来年の世界生産見通しについて、ご説明させていただきます。本調査は、世界の電子情報産業の生産規模をデータによって明らかにするとともに、世界における日系企業の位置づけを把握することを目的としています。会員各社を対象としたアンケート調査をベースに、国内外の関連企業・団体の皆様のご協力を得て、毎年取りまとめています。この場を借りて、ご協力いただいた皆様に、御礼申し上げます。

①世界生産の状況と見通し

2020年の電子情報産業の世界生産額です。新型コロナウイルス感染症の拡大により、電子機器の需要は全体的に急減速となりましたが、テレワークやオンライン授業の普及によるパソコンの増加、データ通信量の急増を背景としたデータセンター向け半導体需要の拡大、さらにはデータ活用の高度化によるソリューションサービスの増加が寄与したことにより、世界生産額は2兆9,727億ドルと、前年比2%の微増となりました。
一方、2021年は、感染再拡大の懸念や先行きの不透明感はあるものの、ITリモートをこれまで以上に活用する動きが拡がり、ソリューションサービスの需要拡大が予想されること、また、自動車需要の回復や環境対応、5G端末の普及などにより電子部品・デバイスの伸長が期待できることから、世界生産額は前年比プラス7%の3兆1,756億ドルとなり、初めて3兆ドルを超えて、過去最高の世界生産額を更新する見通しです。
品目別でみますと、ソリューションサービスが2020年、2021年ともに過去最高の世界生産額を更新する見通しです。データ活用の高度化が下支えするとともに、感染拡大防止の観点から、デジタル活用がより一層進展することが見込まれます。ソリューションサービスは、いまや1兆ドルを超える市場になりつつあり、デジタルトランスフォーメーションの加速により、さらなる成長が期待されています。そのほか、電子部品ならびに半導体が、2021年に過去最高を記録する見通しです。

②日系企業の動向

日系企業の生産額です。2020年の海外生産分を含む日系企業の世界生産額は、前年比5%減の35兆1,684億円と見込みました。感染症対策によりテレワークや遠隔授業の導入でパソコンや電子タブレット端末などは増加したものの、自動車やスマートフォン向け需要の減少などにより、電子部品・デバイスなどの生産額が減少したことが主な要因です。国内生産額は、前年比5%減の9兆7,896億円と見込みました。
次に2021年です。今後は「密」と「接」を軽減するため、あらゆる場面でリモート技術の導入が進むことで、IoT機器やソリューションサービスの需要拡大が見込まれています。さらに電子部品・デバイスも、5GやEV化などで日系企業の高性能部品に対するニーズが高まることから、2021年の日系企業の世界生産額は、前年比3%増の36兆2,877億円と見通しました。国内生産額は、前年比4%増の10兆1,453億円と見通しています。
先ほどもご紹介しましたが、近年、世界で特に大きく伸長しているのはソリューションサービスです。データ社会に移行する中で、モノのサービス化の流れがより一層加速していくことから、デジタルソリューション・サービスは成長分野に他なりません。日系企業は、その核となるソフトウェア開発の強化や、スタートアップや業種を超えた連携などのオープンイノベーションを進めていくことが必要であり、業界として力を入れていくべき分野と考えています。

ITリモートの動向(注目分野に関する動向調査)

これまで述べてきましたように、新型コロナウイルス感染症により社会全体が大きな変革を迫られる中、感染防止に寄与し、今後の電子情報産業の成長を牽引すると期待されているのが「ITリモート」です。
たとえば、働き方改革を促す「テレワーク」。在宅勤務に限らず、場所を選ばない働き方が一層広がることが予想されます。さらに、「医療」や「教育」、「エンタメ・スポーツ」など、これまで対面でしかできなかったものが、リモートの選択肢が加わることで、さらに便利に、豊かに暮らせる社会につながっていくことが期待されています。
本日2つ目の発表は、例年、「電子情報産業の世界生産見通し」と併せて実施している「注目分野に関する動向調査」です。今年は「ITリモート」に焦点を当て、データ量の拡大によるインフラの整備、人との結節点となるIoT機器やデータを活用するためのソリューションサービスの2030年までの世界需要見通しをまとめました。今回の調査では、ITリモートを「ネットワークを通じて離れた場所にいる人と人または物をつなげてコミュニケーションを実現するための技術」と定義し、市場の動向を予測しています。

①ITリモート市場の世界需要額見通し

ITリモート市場の世界需要額見通しです。テレワークやweb会議、遠隔医療、オンライン教育、遠隔操作、映像配信など、民生用途・産業用途を問わず、オフィス、病院、学校、スタジアムなど、さまざまな場面で、既にITリモートの活用は広がってきています。今後も新たなサービスが生まれ普及していくことが予想されます。
ITリモート市場の世界需要額は、年平均14.8%で成長し、2030年には228.3兆円と、2020年と比べて約4倍に拡大すると見通しました。日本国内も同様の動きで、2030年には12.8兆円と、2020年に比べて需要額は約4倍に成長する見込みです。
また、世界の通信量は、年々増加の一途をたどっています。特に新型コロナウイルス感染症の影響で、ITリモートの活用が増加することにより、3万エクサバイトへの到達が2年早まると予測しており、2030年には5万エクサバイトを大きく超えると見通しました。2030年には、世界の通信量のうち約半数が、ITリモートに使用される機器やソリューションサービスとして使われると予測しています。

②ITリモート市場の利活用分野

ITリモート市場の利活用分野です。今回は、ITリモートによる貢献や効果が特に期待されている、8つの利活用分野を抽出しました。それぞれの分野で具体的なユースケースを特定して、そこで必要となる機器やサービスの需要額を積み上げることで、市場全体を予測しました。
2030年において、世界で需要額の大きな利活用分野は、「インダストリ」、「流通・物流」、「テレワーク」、「エンタメ・スポーツ」の順となりました。スマートファクトリーを実現するロボットをはじめ、工場や倉庫の自動化を支えるソリューションが市場をけん引する見込みです。また、今後、特に成長率が高いと予想される利活用分野は、「エンタメ・スポーツ」、「医療介護」、そして「教育」です。日本においても同様ですが、これらの分野は、規制改革や人材育成が進むことを前提に、今後、拡大を見込んでいます。

事業環境整備と市場創出の取り組み

このようにITリモート市場が今後大きな成長を遂げていくと予測していますが、 ITリモート活用の基盤となるのが、本格的な導入が進んでいる5Gやローカル5Gです。冒頭に述べましたように、JEITAはいまや、業種・業界の枠を超え、Society 5.0実現に向けたルール策定や標準化など、課題解決に挑む団体となっており、事業環境整備にも幅広く取り組んでいます。
その1つとして、5Gをはじめとする高度情報通信インフラを活用したデジタルトランスフォーメーションの実現を目指す「5G利活用型社会デザイン推進コンソーシアム」を、本年9月に発足しました。JEITAが事務局を務める、初めての業界横断の取り組みです。ITエレクトロニクスや機械メーカーだけでなく、建設業や小売業、さらには自治体など180社/団体が参画しており、ビジネスやユーザーの視点から、デジタルトランスフォーメーションの実現に向けて、5Gのユースケースの社会浸透やビジネス領域の拡大、研究開発の促進など、業界や業種を超えた共創を推進しています。
また、本年度は、地方自治体による技術活用支援事業に初めて参画し、埼玉県オープンイノベーション支援事業のプロジェクトマネジメントを担うなどの取り組みも実施しました。JEITAは産業と産業のつなぎ役として、このような社会実装のための活動を重点施策としており、今後も加速させてまいります。
新たなイノベーションや付加価値を生み出し、国際社会でリーダーシップを取っていくために、日本企業の国際競争力向上に資するデジタル化対応に向けた税制要望、さらには海外の産業界と連携して、保護主義の拡大阻止と越境データ流通の自由化を目指す活動などにも、精力的に取り組んでいます。税制については、JEITAが要望してきた「研究開発税制」のなかで、あらゆる産業のデジタルトランスフォーメーションの中核となるソフトウェア開発を後押しすることが、2021年度与党税制改正大綱に盛り込まれました。政府や関係者の皆様に深く感謝申し上げます。

デジタル化について

注目分野として取り上げたITリモートをはじめ、今後あらゆる分野においてデジタルトランスフォーメーションが進むことから、JEITAは益々重要な役割を担うことになると考えています。もはやデジタル化に無縁の業界はなく、むしろ必須要件であり、何のためにどのようにしてデジタルを活用していくかということが、重要な課題となっています。
現在設立に向けて準備が進められているデジタル庁には、行政のデジタル化だけでなく、行政が保有するデータを活用することによって、民間のデジタルトランスフォーメーションを促す「司令塔」としての役割を期待しています。また、「2050年カーボンニュートラル」については、各産業や機器ごとの省エネやCO2削減策を積み上げるだけではなく、本日発表したITリモートの活用など、デジタルを活用して全体最適を促すことが鍵になると考えています。このたび創設されるカーボンニュートラル税制やDX税制を、私どもはもちろん、あらゆる産業に対して活用を促していくことを通じて、実現に向けて取り組んでまいります。

結び

新型コロナウイルス感染症による社会経済の先行きはまだ明確には見通せませんが、これを契機に、より強靭で柔軟な社会の構築、そして世界に先駆けたSociety 5.0の実現を目指し、日本の社会経済、そして地球の未来のために、JEITAは全力を尽くしてまいります。政府をはじめ関係各所と密に連携しながら、会員の皆様とともに、積極的に事業を推進してまいりますので、引き続きご高配を賜れますよう、お願い申し上げます。

刊行物のご案内

『電子情報産業の世界生産見通し2020』
(「注目分野に関する動向調査」付き)

  • ■発行年月:
     2020年12月
  • ■会員価格:
     3,300円
  • ※詳細はJEITAホームページにてご確認ください。