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活動報告関西支部

9月度 関西支部運営部会・部品運営委員会合同会合講演

関西支部では9月16日(水)にリモートで開催した運営部会・部品運営委員会合同会合に、国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターより、副院長・健康長寿支援ロボッセンター長・リハビリテーション科部長の近藤和泉 氏を招き、「医療・介護現場におけるICT・ロボット利用の未来」と題する講演を行いました。

近年、医療・介護の現場では、手術・調剤の支援やリハビリテーション等にロボットの活用が進んでいます。リハビリ用途では、患者の身体に装着して用いるタイプの進歩が目覚ましく、従来の装具による訓練に比べ、より短期間で大きな効果の得られるリハビリが可能となってきました。
要介護となる方の8割以上は75歳以上の高齢者で占められます。そうした高齢者が要介護となる原因としては認知症が最も多く、「フレイル」がそれに続きます。(「フレイル」とは加齢による衰弱ですが、然るべき介入を行うことで、健常状態に戻る可能性を有するものです。)

フレイルを引き起こす主な要因として、サルコペニア(筋肉量の減少)、栄養障害、転倒等が挙げられます。転倒に対する恐れや羞恥心が活動量の低下を引き起こし、その結果、筋力の衰えによってフレイルが進行し、さらに転倒の可能性を高める、という悪循環の起こりやすいことが知られています(右図)。
フレイルに対処する目的で、移動の補助やバランス訓練を目的とするロボットが開発、導入され、成果を挙げています。従来の訓練に比べ、ロボットを用いた訓練は利用者に楽しんで取り組んでもらえる利点があり、ある程度進行してしまったフレイルに対しても大きな効果をもたらします。フレイルが進行しないよう活動量を増大させる目的で、歩行者に自動で追従し、歩行者が必要に応じて軽く触れることで重心を安定させる「杖ロボット(IP-CANE)」の研究開発も進んでいます(下図)。

認知症に対しては、多様なコミュニケーションロボットが開発されています。大事な思い出は人の心を安定させる錨の役目を果たすことから、高齢者、認知症患者に昔を思い出して話してもらう「回想法」は、記憶能力の強化、積極性の増進、ひいては個人の尊厳の回復につながります。長寿医療研究センターではそのツールとして、トヨタ自動車と共同で、傾聴ロボット「ポコビィ」の開発に取り組んでいます(下図)。現状では音声認識機能に不足があり、長時間の使用に堪えない所もありますが、「杖ロボット」と同様、今後の展開が期待されます。

医療・介護分野におけるICT・ロボットの利活用と研究開発について、豊富な映像と具体例を用いつつ、現状と今後の方向性をわかりやすくお話しいただき、講演後の質疑応答を含め、今後の高齢社会に向けてさまざまな示唆を与えられる貴重な機会となりました。