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活動報告技術戦略部

「Society5.0社会実装で世界を先導するイノベーション先進国に向けて」 JEITA技術戦略部会 提言

JEITA技術戦略部会では、今般、国の「第6期科学技術基本計画(2021~2025年度)」に向けて、電子情報技術分野の産業界の立場からの提言を検討しました。第6期期間は、現在の第5期基本計画(2016~2020年度)にて国が提唱したビジョン、「Society 5.0」を具体的に社会実装する成長期であるという認識を基軸に、本部会は、日本が国際競争力を復興し、世界をリードするには何が必要か、日本の良さを活かしつつ、個が輝ける人間中心の社会を如何に構築するか、中心課題に据え、日本に、今、必要な「ゲームチェンジ」と「ギアチェンジ」を図るための道筋を提言しました。

提言の背景

CES 2020 視察の目的

【第5期科学技術基本計画の実行振返りと環境変化 ー 提言の背景】

【第5期科学技術基本計画の実行振返りと環境変化 ー 提言の背景】

JEITA技術戦略部会および技術政策委員会は、現在の第5期科学技術基本計画の策定当時、国での検討、に先立ち、“産業と暮らしを元気にするサイバーフィジカルシステム(CPS)”の推進を2015年3月に提言しました。この提言は、第5期基本計画で提唱された国のビジョン、「Society 5.0」(サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合し、イノベーションで創出される新たな価値により、経済発展と社会的課題解決とを両立する「人間中心の超スマート社会」の実現)につながったとJEITAは考えております。「Society 5.0」は、機を一にして国連が打ち出したSDGの実現につながる重要なビジョンとして世界的にも評価されています。
しかしながら、第5期計画実行開始の2016年度以降、計画策定時に前提とした内外の環境にも大きな変化がうかがえます。SDGs・ESG重視の潮流が一層高まるともに、社会課題の進行が加速し、大規模化、深刻化が待ったなしとなり、社会インフラの強靭化が喫緊の課題となりつつあります。また、グローバル各国/地域がイノベーション政策を掲げて巨額の研究開発投資を実行し、国際競争が激化する中、地政学的リスクの顕在化により、技術安全保障の視点も同時に重要となってきております。このような第5期期間での環境変化を踏まえれば、日本は、Society 5.0の実現に向け、今一層の加速が必要と考えます。
以上を鑑みますと、第5期計画で提唱した「Society 5.0」は、SDGsを掲げる世界を先導するロールモデルとなり得るものであり、日本が目指す方向性、目標として引き続き、ぶれることなく積極的に推進すべきである一方、第6期計画においては、世界に向けて、我が国には、Society 5.0実現のための「実行力」と「戦略的推進力」が今、強く問われているのではないでしょうか。

「ゲームチェンジ」と「ギアチェンジ」でSociety 5.0実現を加速

【JEITA提言:「ゲームチェンジ」と「ギアチェンジ」で Society 5.0実現を加速】

【JEITA提言:「ゲームチェンジ」と「ギアチェンジ」で Society 5.0実現を加速】

少子高齢化、生産年齢人口減少、格差問題、地方創生、エネルギー問題、等、多くの社会課題に直面する日本は、質・価値・個・共創を大切にする価値観の下、経済価値のみならず、持続可能な協調型社会(スーテクホルダー資本主義)を追求し、世界に先駆けて実現すべきと考えます。そのためには、デジタル競争力を強化しつつ、デジタル技術に基づく社会、産業のプラットフォームを新たに再定義、再構築することが求められます。言い換えれば、日本の良さ、社会価値を大切にする文化を活かした新しい価値観を提示しつつ、Society 5.0によるSDGs実現を具体的な社会課題解決の成功と持続可能なビジネスモデルとのセットで世界に範として示すことが重要です。これにより、日本は、ステークホルダー資本主義という新たな世界的潮流のフロントランナー、グローバルリーダーとして、「ゲームチェンジ」を率先垂範すべきと考えます。また同時に、その実現、推進の基盤となる、デジタル技術を基にしたイノベーション力、社会実装の一層の強化、加速、即ち、デジタル強国構築に向けた「ギアチェンジ」が、今、日本に強く求められています。

第6期科学技術基本計画への提言

2030年のSDGs達成に向けたSociety 5.0の実現は、壮大な社会変革であり、その社会実装は一日にして成りません。待ったなしでの、戦略的かつ着実な推進が必要であると考えます。JEITAは、IT・エレクトロニクス分野を代表する業界団体として、Society 5.0の早期実現の貢献に資するべく、第6期計画において産学官民で取り組むべき施策に関し、以下の4つの提言を行っております。

提言1 新アーキテクチャとEBPM活用によるSociety 5.0推進の社会受容性獲得

Society 5.0実現に向けたデータ連携基盤(内閣府※)のアーキテクチャビューポイントに基づく新アーキテクチャのイメージ図(例)

Society 5.0実現に向けたデータ連携基盤(内閣府※)のアーキテクチャビューポイントに基づく新アーキテクチャのイメージ図(例)

■社会(ヒト)、環境、経済の3つの価値に基づき、Society 5.0の新アーキテクチャを持続可能なビジネスモデルの下でデザインし、社会実装を進めるべきです。
■新アーキテクチャを全てのステークホルダーの共通言語として社会実装戦略を共有。3つの価値の調和を追求する総合指標の下、EBPMに基づき実装加速すべきです。

提言2 人間中心・分散協調型に向けた、文理融合による重点研究領域の強化

人間中心の分断協調型デジタルプラットフォーム構築(トラストの確保と質の高いリアルデータの活用)に向けて、文理融合で科学技術・イノベーション分野を強化すべきです。

提言3 新イノベーションスタイル、環境・制度の整備

Society 5.0時代の新しいイノベーションスタイルによる高付加価値の創出、産官学連携による社会実装に向けた場の確保、技術革新と歩調を合わせた機動的な制度整備の促進が必要です。

提言4 IT/AI利活用人材、ダイバーシティ人材の育成

■Society 5.0社会実装の拡大、強化に向け、サービス・ソリューション開発の中核となるIT/AI利活用人材を戦略的に育成・強化すべきです
■イノベーション創出に向け、多様な発想をもたらすダイバーシティ人材(理工系女性、外国人、若手、等)が活躍できる環境・制度を整備するとともに、個の挑戦、活躍を促すために人材の流動性を促進し、知の新結合の機会を増大すべきです。

まとめ

【Society 5.0社会実装におけるフォーカスを変える】

【Society 5.0社会実装におけるフォーカスを変える】

振り返ると、第5期期間では、Society 5.0が掲げる「人間中心の超スマート社会」の「超スマート」に着目し、焦点が中核となる重要技術の開発に偏り過ぎたという反省があります。第6期計画においてSociety 5.0の社会実装を加速するには、技術開発視点のみならず、いま一度、「人間中心の社会」という点に着目し、社会課題/デマンドサイド視点から、課題解決の総合的アプローチと持続的実行を支えるビジネスモデルのデザインを行うことが必要ではないでしょうか。その上で、日本は、Society 5.0社会実装を梃に、社会価値、環境価値、経済価値の同時実現の成功モデルを確立し、ステークホルダー資本主義のフロントランナー、グローバルリーダーを目指すべきと考えます。

【提言のまとめ】

【提言のまとめ】

JEITAは、「人間中心の社会」という視点に基づき、日本が、Society 5.0の社会実装で、社会課題解決はもとより、国際競争力上も優位に立ち、世界を先導するイノベーション先進国となるべく、第6期科学技術基本計画の策定に少しでもお役に立てばという願いを込め、提言を行っております。一人でも多くの科学技術政策に携わる政府関係府省や、関連行政機関の政策立案者に御覧いただければ幸甚です。

※提言全文はJEITA技術戦略部会ホームページ(https://home.jeita.or.jp/cgi-bin/topics/detail.cgi?n=2665&ca=13&ca2=78)でも公表しており、2020年3月末に開催されました内閣府総合科学技術・イノベーション会議基本計画専門調査会にも提出しております。