ヘルスケア分野のイノベーション促進に向けた取り組み
~ヘルスケアビジネス入門コンテンツの作成~
ヘルスケアインダストリ部会・ヘルスケアIT研究会では、健康長寿社会の実現とヘルスケア関連市場の活性化・新サービス創出に貢献することを目的として、ICT・IoTを活用した先導的な事例の調査や課題解決のための提言を行っています。これらの活動の一環として、研修テキスト「ヘルスケア分野への参入において理解しておきたい基礎事項(入門編)」を作成するとともにセミナーを開催しましたので、それらの概要を紹介します。
活動の背景
健康長寿社会の実現に向けて、個人の日常生活でのケアを含めた健康・医療・介護サービスの重要性が益々高まっており、多様なニーズに対応する新たなソリューションの創出が期待されています。一方、最近は、個人の日常生活に関するさまざまな情報の採取・解析が可能になってきていることから、こうしたデータを活用した新サービスの開発が進んでおり、これまで健康・医療分野のビジネスに参入していなかったような異分野の事業者やベンチャー企業等が新たに当該分野に参入しようとする動きもみられます。しかし、非医療機関の民間企業にとっては、健康・医療分野に新規参入するうえで必須となる基礎知識を体系的に学ぶ機会が少なく、そのような状況が産業成長の課題となっているともいわれています。
こうしたなか、2019年3月の経済産業省「健康・医療情報の利活用に向けた民間投資の促進に関する研究会」のとりまとめにおいても、事業者が健康・医療分野におけるビジネスを企画し、製品・サービスの開発を進めるにあたっては、医療機関等と密にコミュニケーションをとり、信頼関係を醸成することが重要であるとされ、医療分野の倫理・規制など必要最低限の知識等を体系的に習得することができる研修等の機会の提供が求められました。
研修コンテンツの検討、テキストの作成
このような状況を踏まえ、JEITAヘルスケアIT研究会は、一般財団法人 医療情報システム開発センター(MEDIS-DC)および一般社団法人 保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)とともに「ヘルスケアビジネス入門コンテンツ検討委員会」を立ち上げ、経済産業省の関連会議体委員や業界有識者等の協力を得て議論を重ね、事業者向けの研修テキスト「ヘルスケア分野への参入において理解しておきたい基礎事項(入門編)」を作成しました。
この研修テキストは、ビジネスを考えるうえでの基礎事項から、各ステークホルダーとの関わり方(マナー、慣習など)、事業開発プロセスごとに特に意識したい法令や代表的なチェックポイントまで、俯瞰的に把握できる内容となっています。
【研修テキストの目次】
- ●ビジネスを考えるうえでの基礎事項について
- ●ヘルスケア分野における事業開発プロセスの流れ
- ●仲介者との関わり方
- ●医療者・研究者との関わり方
- ●利用者(ユーザー等)との関わり方
- ●関連法規等を理解する前に
- ●主な関連法規
- 医学系倫理・研究倫理関連
- 個人情報保護・情報システムセキュリティ関連
- 消費者保護・各種広告規制・公正取引関連
- 医療従事者・医療施設関連
- 医薬品・医療機器関連
- 医療保険関連
- 労働安全衛生関連
- 健康増進・地域保健関連
- 健診・検診・保健指導関連
- 地域医療連携、地域包括ケア関連
- 介護保険・老人福祉関連
- 知的財産権保護関連
- ●事業者以外へのメッセージ
- ●参考資料
- 重要用語集
- より政策等の理解を深めるために
- その他の関連知識
研修コンテンツの普及啓発
CEATEC 2019でのお披露目
2019年10月に幕張メッセで開催された「CEATEC 2019」において、「ヘルスケアビジネス入門 ~新時代のヘルスケア事業者が知っておくべき業界常識~」と題するコンファレンスを開催しました。
CEATECコンファレンスのようす
このコンファレンスでは、経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 企画官の川口俊徳氏をお招きして、ヘルスケア領域の重要性と生涯現役社会におけるヘルスケア産業の振興に向けた政策の方向性を講演いただいた後、ヘルスケアIT研究会主査の鹿妻洋之氏(ヘルスケアビジネス入門コンテンツ検討委員会副座長)より、研修テキストの概要を初めて紹介しました。さまざまな業界から約150名の参加者を集め、好評を博しました。
解説セミナーの開催
2020年2月7日には、JEITA会議室において、本テキストの解説セミナーを開催しました。
セミナーのようす
セミナーでは、ヘルスケアビジネス入門コンテンツ検討委員会座長の山本隆一氏(MEDIS-DC理事長)と副座長の鹿妻洋之氏が講師を務め、本テキストに沿った解説が行われました。約5時間の長丁場のセミナーであるにもかかわらず、100名を超える受講者が講師の説明に熱心に耳を傾けていました。講義後の質疑応答の時間では、複数の受講者から具体的な事例に基づいた質問があり、健康・医療分野の新規ビジネスに対する関心度の高さが感じられました。
ヘルスケアIT研究会では、今後も本テキストの普及啓発を図るとともに、関連団体・政府等との緊密な連携を継続し、健康・医療分野のイノベーション促進に向けた取り組みを推進していきたいと考えています。引き続き、皆さまからのご支援・ご協力をよろしくお願いいたします。