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関西支部

12月度関西支部運営部会講演

関西支部では12月4日(水)の運営部会に立命館大学 専門職大学院 経営管理研究科 副研究科長・准教授の佐伯靖雄氏を招き、 「自動車の電動化・知能化の進展がもたらすサプライヤー・システムの構造変化」の演題で講演を行いました。

電動車(xEV)市場の興隆

2016年から18年にかけ、米国カリフォルニア州のZEV規制強化や中国のNEV規制導入等、各国で化石燃料車への規制が強まり、供給側でもフォルクスワーゲンのEVシフト、トヨタのEV参入等が相次ぎました。電動車の本格普及に向けた環境は急速に整いつつあります。18年の世界販売は201万台(前年比64.8%増)で、過去最高の数字となりました。
各社が価格を維持して航続距離を延ばす戦略を取る中、テスラはオンラインでのアップデートなどCASE全方位にわたる多面的な取り組みを進めました。車種別売上ではModel 3が他社製品を大きく引き離していますが、従来車種(Model S、X)の販売に食い込んだ面もあり、営業収益は創業以来の赤字を抜け出せていない状況です。

ADAS関連部品の取引構造とその変貌

ADASは既に自動車における付加価値の源泉となっています。技術的にはセンシング(画像認識デバイス)とECU(AI半導体)が重要で、トヨタ系(デンソー、アイシン精機等)、総合電機系(日立、三菱、パナソニック等)、独メガ・サプライヤー(ボッシュ、コンチネンタル等)が大きな地位を占めます。多くのカテゴリで首位企業が5割以上、上位3社で8~9割を占める寡占市場です。
日本車に対するセンサとECUの供給において2004年と15年のシェアを比較すると、いずれにおいても独メガ・サプライヤーが伸び、また、企業の集約もあって寡占化が進みました。1995年と2015年で各種部品の供給状況を比較すると、独メガ・サプライヤーと総合電機系の参入領域が拡大し、プレゼンスを高めています。
背景として、トヨタでは、グループ内でシステムをバラ買いし自社でインテグレーションする調達を続けてきたため、独メガ・サプライヤーに比べECUを軸にシステムで提案する経験がグループ内で不足している可能性が考えられます。

日独メガ・サプライヤーの覇権競争

独メガ・サプライヤーは、日産、ホンダ、さらに中堅各社とADAS関連部品の取引を拡大、既にECUで25%、センサ類では35%を占め、日本の自動車部品市場において確固たる地位を築いています。川上からは米国AI半導体企業(Intel+Mobileye、NVIDIA)によるグループ形成も進んでおり、覇権競争の行方は予断を許しません。
こうした中、アイシン精機、アドヴィックス、ジェイテクト、デンソーの4社は、自動運転向け統合ECUソフト開発の合弁会社を設立しました。ボッシュ等がM&Aで他社の技術を内部化するのに対し、こうした分権型アプローチがどこまで機能するか、注目してゆきたいと思います。

講演後は活発な質疑応答が続き、また、終了後の交流会ではさらに踏み込んだ情報交換も行われ、大変有意義な機会となりました。