IEC TC91 上海会議報告
(TC91: Electronics Assembly Technology)
2019年10月21日~25日の期間、中国の上海で、IEC TC91(電子実装技術)の会議が開催されました。会議では、多くのIEC規格案に関して活発な議論が行われました。その中から、いくつかのトピックについてご紹介致します。
IEC上海会議のオブシェ
IEC TC91国際幹事の岡本氏
(日立製作所)が、IECトーマス・エジソン賞を受賞
SMB議長のDr.R.Sporer氏と岡本国際幹事
10月21日、SMB(Standardization Management Board:標準管理評議会)会議にて、TC91岡本国際幹事(日立製作所)が、長年に亘るTC91国際幹事としての活動が評価され、IECトーマス・エジソン賞を受賞しました。同賞の2019年の受賞者は4名で、日本からは岡本国際幹事のみでした。
IECトーマス・エジソン賞は、TC/SC、CABおよびその下部組織の各委員会の効率的な運営を通じてもたらされた、最近の顕著な成果、献身的サービスや顕著な貢献を挙げた個人に対する表彰として2010年に設立されました。日本人の受賞は岡本国際幹事で11人目です。
WG1トピック
IEC 61760-3
(Standard method for the specification of components for throughhole reflow (THR) soldering)の改正
挿入部品のリードを表面実装プロセスではんだ付けを行うスルーホールリフロー実装規格を、昨年JEITA規格ET-7505として策定しIEC 61760-3 Ed3として改正を行っています。上海会議では、基板表面に印刷したはんだをスルーホールに充填する工法、部品端子の突き出し量や、スルーホールに対する部品の位置許容差の規定、用語の定義などを議論しました。また会議前には、各国からCDに対して多くのコメントをいただき、国際会議での活発な議論から、本規格への関心の高さが伺えました。
WG3トピック
IEC 61189-5-301
(Soldering paste using fine solder powders)の制定
電子機器の小型化が進展する中で、ファインピッチ化や微細バンプ化の要求が増しています。しかし、φ10μm程度以下の粒径の細かいはんだ粉を用いたソルダペーストの印刷性やリフロー性などの評価試験方法は標準化されていませんでした。そのため、これに対応した試験方法をNP提案し、今回承認されました。この提案は日本溶接協会 はんだ微細接合部会で高機能JIS開発テーマとして実施され、JIS Z 3285として規格化されたものをベースにIECへの展開を図ったものです。
電気・電子部品のウィスカ試験ガイドのTR提案
WG3でTRを説明する坂本氏
日本提案により2007年に制定されたIEC 60068-2-82 "Whisker test methods for electronic and electric components"の改正が2019年5月に実施されました。この規格内容が複雑であり、試験をより効率良く行う目的で、JEITA規格の「錫ウィスカ抑制鉛フリー材料選定ガイダンス(ET-7305)」をベースとしたTRをIEC化することとなりました。上海会議では、このドラフトが日本より提案されました。
WG6トピック
部品内蔵基板の三次元データフォーマットに関する国際標準が発行
部品内蔵技術の国際標準化第2段として、2019年9月16日にIEC 62878-2-5が発行されました。福岡県のクラスター事業で開発されたFUJIKOという三次元データフォーマットをベースに、部品内蔵基板特有のキャビティ構造やVia接続構造などを表現できるよう、三次元の接続情報や座標情報、三次元形状や接続点を記述できるものです。これにより、今後の電子機器産業分野での日本の高機能プリント基板技術の国際市場促進が期待されます。
次回のIEC TC91会議
TC91メンバーとの
記念撮影
2020年春のIEC TC91のWG会議は、6月1日(月)から4日(木)までの期間で東京・国分寺の(株)日立製作所 中央研究所のNEXPERIENCEルーム等の会議室で開催されます。最新の実装技術の標準化にご興味がある方は是非、標準化戦略室までお問い合わせをお待ちしております。