Activity
活動報告技術戦略部

三次元CAD情報標準化セミナー 実施報告

2019年12月3日(火)に川崎市産業振興会館(神奈川県川崎市幸区)で、三次元CAD情報標準化専門委員会(以下、専門委員会)主催の三次元CAD情報標準化セミナーが開催されました。設計情報である3DAモデル(三次元製品情報付加モデル)および、3DAモデルを元にものづくりの各工程での情報と連携するDTPD(デジタル製品技術文書情報)で、国際標準の現状と展望に関する基調講演、注目を集めている普通幾何公差指示に関するJEITA ET-5102規格改正(予定)の紹介、3DAモデルの板金部品活用DTPDの活動報告が紹介されました。今回は3DAモデルとDTPDのツールと利用技術を講演と展示で紹介し、実際の製品開発へ適用が可能であることを紹介しました。参加者には製品開発プロセスの分断を3DAモデルとDTPDの利活用で解決するためのヒントになったと思います。報告の概要をご紹介します。

専門委員会が目指すDTPDの未来と国際標準

設計情報伝達の今昔 紙図面と3次元CAD

設計情報伝達の今昔を振り返ると、紙図面の時代、三面図は直感的な形状把握には向いておらず、スキルのある人間が目視して判断をしていました。また、製造に必要なほぼ全ての情報が書かれていましたが、正確には設計者の暗黙知が必要でした。3次元CADの時代、3次元CADにより直感的な形状理解が可能になりました。しかし、情報の保存先が分断されていて、データの冗長性と齟齬が問題になっています。また、形状以外の情報は基本的に図面と同じ記法で、モデル化されていません。暗黙の共有知が必要なことは変わらず、同じ図面の解釈が企業間・業界間で異なることもあります。そのために、製品開発プロセスは分断しており、製品開発プロセスの分断点では、設計者は設計情報を分断後の工程に合うように作り直しています。専門委員会では、製品データを3DAモデルに進化させて、製品開発プロセス全体で3DAモデルを使うDTPDのコンセプトを打ち出しています。

ものづくりプロセスを横串にして国際標準の隙間を埋めるユニークな活動

【国際標準と専門委員会の活動】

専門委員会の活動は、3DAモデルに関して、幾何公差を中心とする正確な指示の普及と普通公差による効率化を実現するためのJEITA規格ET-5102の開発と発行、後工程への正確で効率的な情報伝達を実現する金型工程連携ガイドラインと板金部品ガイドラインの開発と発行、幾何公差の測定と評価方法を共有するための測定ガイドラインと幾何公差検証・測定例集の開発と発行、製品開発全体で3DAモデルとDTPDの取り扱いを示した3D正運用ガイドラインの開発と発行となっています。経済産業省エネルギー等国際標準開発「デジタルものづくり推進のためのデータ基盤に関する国際標準化」事業、ISO TC10(製図)、ISO TC213(幾何公差)、ISO TC184/SC4(産業データ)へ参画し標準化活動を展開しています。幅広く産業団体やCADベンダと連携し、標準の実用化も推進しています。特に、JEITA規格ET-5102に代表されるMBE(Model Based Enterprise)などの活動が認められ、ASME(米国機械学会)MBE(Model-based enterprise)委員会のリエゾン団体となっています。1つの産業団体が横串でものづくりプロセス全体を担当することで、一貫性を持ち、全体最適を推進できます。3次元表示と3次元フォーマットの国際標準が埋められていない、日本独自の領域もカバーしています。3D製品データ表現の標準化を推進して、1D CAEに代表される設計要求、Smart Manufacturing/Digital twinに代表される高度な製造や保守、人工知能・機械学習・深層学習などの高度な情報科学技術とも連携して、今後のデータ流通標準化に貢献していきます。

JEITA ET-5102規格改正(予定)の背景と概要

【JEITA ET-5102規格(普通幾何公差)/3DA Model 】

ISO TC213「寸法と製品の幾何特性仕様および検証技術委員会」やASME MBE “Model Based Enterprise”の規格開発において製品定義の完全性確保には、実用的な普通公差による3DAモデル作成が重要になっています。以下のような利点を設計・製造に生かしたいからです。①図面内容が容易に読み取れ、情報伝達が効果的になります。②普通公差と照らして、どこが個々に公差指示が必要か分かります。③個々に公差が指示された箇所が機能的に重要なところとなり、そこに設計も、生産側も、注意を集中します。④どこが普通公差でよいかが分かります。すなわち、通常の工程能力に任せることができ、検査不要になります。⑤普通公差が確保できる工程能力を有するか否かで、部品の受/発注ができます。そのような中で、JEITA ET-5102規格(特に普通幾何公差)が今、注目されています。

【JEITA ET-5102規格(普通幾何公差)/Interpretation (Third angle projection method)】

JEITA ET-5102規格(普通幾何公差)は、現在のISO/JISの普通幾何公差に対して、解釈が容易となり、幾何公差指示で重要な位置公差に対しても明確な規定とし、実用性を高めたものになっています。ISO開発やASME規格の製図規格研究から得られた知見を盛り込み、よりわかりやすく、より明確に、製品品質を向上させるための新たな要件を盛込み、現在、規格改正に取り組んでいます。公差決定寸法に関して、公差値の立方体に形体全体が入るかどうかを、8象限で考えることを追記して、公差値の判定方法の説明がわかりやすくなります。一括公差指示と個別公差指示の関係性に関して、一括公差指示の適用部品において個別公差指示を行うと、どのような解釈になるかを明確にします。第1次データム系のデータム形体へは個別指示を行うことを推奨します。ただし、指示していないときは一括公差指示を適用します。複数データム系を用いる場合は、その関係性に対して個別指示を行います。専門委員会では、JEITA ET-5102規格改正の原稿案を作成しており、来年度の発行を目指しています。

3DAモデルの板金部品活用での可能性と実効性

活用・実証分科会では、設計/生産/検査までをトータルで考慮した、効率的な業務プロセスを検討しています。ツール視点でなく、3DAモデル+DTPDという業務プロセス視点から活動しています。すなわち、各領域の3DAモデル活用要件を定義/属性化することで、設計~生産準備・生産~部品検査・品質保証を含むトータルで業務が効率化できます。3DAモデルのモデリング要件では、現物と3DAモデルが持つ情報との同一性の考え方が重要です。現物と3DAモデル形状が同一でない場合は、どの様に理解、解釈すべきかを3DAモデルの中で指示する必要があり、そのルールを定めました。例えば、製品設計と金型設計のコンカレントエンジニアリングにおける金型要件盛込みランクや、一般こう配面の抜きこう配形状と指示方法およびこう配基準による解釈の定義、公差指示など板金加工で活用出来る条件も加味して決定するなどです。3DAモデルのPMI要件では、形体に連携したPMI設定や属性の設定/整備を検討しました。例えば、関係する面に対してPMIを設定してCATへの変換率を現行の20%から80%以上に改善しました。注釈にて指示を行う要件は、どの形体に指示されているのか不明確で、人が解釈する必要があります。指示内容が形体に指示する場合とそうではない場合を整理して指示方法を定義して規格化を行いました。ソフトウェア間の連携により処理の自動化などの可能性もでてきました。指示対象を 3DAモデルと実物で違いがある形体と考えて、PMIと属性の指示方法を標準化して、 PMI(ヒューマンリーダブル)と、属性(マシンリーダブル)の両立を図ります。これらに因って獲得できる圧倒的な効率化と品質保証の可能性と実効性を、板金部品を事例として紹介しました。JEITA普通幾何公差を採用することで、図面記載工数と説明工数が半減します。3次元CADでのPMI作成方法を改善し、幾何公差指示がCATツールへ繋がることで、検査表作成の自動化して、工数をゼロにすることできます。CATツールがJEITA規格ET-5102(普通幾何公差)を採用して測定結果判定に組み込むことで普通幾何公差適用部の検査・照合を自動化して、工数をゼロにすることができます。DTPDに繋がる業務プロセスは、現状の設計情報伝達(2D図+3D形状)に比べて圧倒的に効率化できますが、各社に持ち帰って実業務で効果を得るためには、社内と取引先を含むルール(業務プロセス)を改定していく必要があります。また、業界として、各社が効果を出している業務プロセスを標準化することで、関連する業務ツールの開発に繋がり、取引先展開にも繋がります。

DTPDと各種ITツールの事例紹介

今から8年前のCAD機能評価では、当時の3次元CADでは3DAモデル作成の機能が不十分でした。欧米のMBD(Model-based definition)/MBE(Model-based enterprise)適用推進を背景に、現在の3次元CADは格段に機能向上し、プロセス全体への展開・定着にフォーカスが移りつつあります。今回は設計から品質管理まで、それぞれの工程のITツールベンダー(会員企業)から、3DAモデルとDTPDの対応状況と今後の期待を講演と展示デモンストレーションで紹介しました。

Creo ParametricのDTPD対応機能とこれから

Creo ParametricRは、3DAの機能を備えています。3Dモデルに、寸法、幾何公差、表面粗さ、熔接記号などのアノテーションを作成できます。サイズ公差の上限値/中間値/下限値形状が作成できます。後工程で活用しやすい、図面のようなビュー方向にアノテーションを作成できます。3DAモデルからすぐに簡易図面出力が可能です。STEP AP242E1に対応しています。Creo GD&T Advisor ExtensionRを使うことで、幾何公差を、正しく簡単に作成できます。Creo Tolerance Analysis ExtensionRを使うことで、部品、アセンブリの公差と一軸方向の寸法のすばやい解析ができます。Creo ParametricRは、DTPDの機能も備えています。「制御特性」を使って、PTCの製造プロセス管理向けソリューション「Windchill MPMLinkR」において、製造で必要な情報伝達ができ製造プロセス計画へ活用可能です。CAMオプションを使うことで、設計モデルに入れた製造情報を、Creo ParametricRのCAMでパス作成にそのまま利用することができます。

設計と製造を正しくつなぐ3D単独図のすすめ

SOLIDWORKSRのMBD機能により、デジタルものづくりを変革させます。現行の設計と製造・加工での設計情報連携(PMI を手書き修正して設計情報を不連続なものにするなど)を改善するためには、PMIが定義された3D単独図の活用が必要不可欠です。3D単独図には、3面図や詳細図、断面図などを有し、3Dモデルに、製造・加工可能なPMI が付加されている、3Dモデルで設計から製造まで一気通貫を可能とするなどの要件を持ちます。SOLIDWORKSRでは、データムを設定し、寸法や幾何公差などのアノテーションを自動作成し、製造・加工に必要情報を、3D-PDFR・eDrawingsR・STEP AP242(セマンティックPMI)により情報共有します。専門委員会が提唱するDTPDへの脱却およびDTPDの作り込みにはセマンティックPMI が必要です。現行のSOLIDWORSKSRは、すでにそのセマンティックPMI情報からダイレクトにツールパスの作成、組立指示書や検査表の作成、3D単独図の共有などを可能とします。その3D単独図は、現在の情報連携を抜本的に変革させる基盤となりうるツールであり、SOLIDWORKSRは、それを実現させます。

DTPDと公差解析・現状と今後の展望

公差解析周りでのDTPDとして、3Dモデルに幾何公差を付与するGD&T Advisorと、3Dモデルを用いて公差解析を行うCETOL 6σTMがあります。ツールはMBD/MBEの広まりとともに機能も充実してきています。例えば、アドバイザー機能での3DAモデル作成中に公差過不足をチェックする、3Dでの動きを考慮して「現実のばらつき」を算出することなどです。公差解析の運用プロセスを考えると、①公差設計を行い、3DAモデルとして付与(主に幾何公差)、②必要な公差情報を用いて公差解析、③寄与率の高い部位の精度をインライン/オフライン計測、④品質情報の蓄積、管理のようになります。これに対して、公差情報を入力情報として使用できる、精度管理を行うべき箇所を抽出する、品質問題の未然予防、過去情報の次機種への応用などができます。DTPDの実務での適用に向けては、教育体系や教育コンテンツの拡充、環境整備への投資と気軽に使えるツール実現の開発側の努力、ユースケースなどを参考に各社の状況に合わせた姿を個々が描く力など、周りを取り巻く環境も変えていくことも必要です。

DTPDと金型設計・製作

CADmeisterRは、日本のものづくり(金型設計と加工)の伝統と職人の技を実現するデジタル・マイスター・ツールです。CADmeisterRを使って、専門委員会の金型工程連携ガイドラインに記載されている金型要件と金型要件および金型設計加工のモデル区分に合わせて、3DAモデル(製品設計)から金型設計・金型加工(シミュレーション)までのDTPDを試行しました。3DAモデルとして、金型要件定義モデル(PM3)は注記・表題欄に仕様が記載されていること、金型要件を要件ごとにビュー定義してPMIで記述をしており視認性が良好でした。成形性検査では形状データを直接利用して幾何的な検査を行います。図面の代替になります。金型製作用製品モデル(TM1)の設計では、簡略表記された形状作り込みで自動化ができれば省力化が図れます。セマンティックPMIと表記のガイドライン化により、計測検査モデルとしても活用可能となります。DTPDの試行において3DAモデル(製品設計)からDTPD(金型設計・加工)までのデータ連携が明確になったことから、3DAモデルおよび各工程の付帯情報(NC,計測,組図)を可視化し、計測、検査、確認等検図機能を提供して3D正を実現し、DTPDをベースとした製造DXを支援とした3DAviewmeister Rの開発を進める予定です。

DTPDのダウンストリーム「計測:品質保証」運用の実例

3DAモデルを下流「検査」工程へ利用するためには、「従来寸法(距離・角度)」を「幾何公差」へシフトすること、セマンティックQIF規格による「ヒューマンリーダブル」から「マシンリーダブル」へのシフト、「教育」と「文化」の改革(Trust Digital Journey)です。3DAモデルに、距離寸法や角度寸法が存在すると、測定ソフトウェアでの再定義が必要になります。QIF(Quality Information Framework)規格は、3次元CADモデルベースで、品質保証(測定)のために必要な情報をインターネットのデータ交換技術として普及している [XML] 方式で定義するファイル形式(MBD規格)であり、米のDMSC(Dimensional Metrology Standards Consortium)により作成され、ANSI(米国国家規格協会)から発行されています。デジタルものづくりの設計~製造~検査までをセマンティックに繋げる実運用に適用できる有力候補です。3DAモデルを一気通貫で使うことにより、測定に関する準備の効率化、CMMパス生成作業の高速化、測定項目などデジタルデータ再利用より人的ミスを軽減、検査レポート作成の自動化、3Dビュアーによる測定結果の見える化(公差%偏差カラーマップ等)、製造工程へのフィードバック(加工補正やSPC)、一例として作業効率の80%向上などのメリットがあります。KOTEM EVOLVE DesignR(幾何公差設計支援ソフトウェア)/SmartProfileR ver.6(幾何公差測定ソフトウェア)に、3DモデルにJEITA規格ET-5102(普通幾何公差)を効率的に適用する新機能を実現しました。

3DAモデルとDTPDへのAI技術の応用

DTPDと各種ITツールの事例紹介の展示ブース

3DAモデルとDTPDへAI技術を応用し、大幅な作業効率と知的作業へ技術者をシフトできる。そのための技術として、DiCA(AI図面チェックソリューション)、OpTA on AzureR(ものづくり企業自らのAI開発・運用を実現するプラットフォーム)、TeXA intelligenceR(AIを品質改善や新製品開発へ活用)を紹介しました。