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活動報告技術戦略部

CEATEC 2019 国際シンポジウム
「プラットフォームビジネスと競争政策」開催報告

2019年10月16日(水)に幕張メッセ国際会議場においてCEATEC 2019 国際シンポジウム「プラットフォームビジネスと競争政策」を公正取引委員会と当協会の共催で開催いたしました。
当協会内において法務知財関連課題を所管する法務・知的財産部会では、Society 5.0の実現に向け、法的環境整備を通して貢献すべく活動を進めておりますが、この一環での開催となります。
プラットフォームビジネスは、人々の生活を豊かにするとともに経済成長を促し、グローバルに展開してきました。一方、独占等が生じやすく、消費者や事業者の不利益、イノベーションの阻害につながるおそれがあるため、プラットフォームビジネスやデータに対する競争政策が国際的に重要となってきています。本シンポジウムでは、日米欧の競争政策担当部局等の幹部や有識者をお招きし、プラットフォームビジネスに関する競争政策の在り方等について議論いたしました。

会場の様子(聴講者約200名) 会場の様子(聴講者約200名)

講演概要

■挨拶:公正取引委員会 杉本 和行 委員長

新規参入者等による新たなチャレンジが阻害されていないか、濫用的な行為によってイノベーションが抑圧されていないかという点に目を光らせることが、競争政策の役割であると考えている。このような役割を担っている競争政策を取り巻く大きな関心の一つに、プラットフォーマ等デジタル分野の競争環境の整備をどのように進めていくかという課題がある。
デジタル・プラットフォーマによる寡占・独占がイノベーションによって確保されるものである限りにおいては、競争当局としても問題とすべきではないと考えられる。しかし、デジタル・プラットフォーマが自らの支配的地位を濫用し、消費者や取引先事業者に不当な不利益を課すことにより、公正な競争を歪めたり、自らの競争者となる可能性のある新規参入者を不当に排除したりするなど自由な競争を妨げる行為が見られる場合には、競争政策上看過できない。

■挨拶:当協会 遠藤 信博 会長

近年のデジタル・プラットフォーマの登場・成長等、デジタルエコノミーの発展により、事業者のビジネスや競争環境は近年大きく変化している。各国競争当局は、デジタルエコノミーの発展に対する対応を最優先課題の一つとして取り上げている。
デジタルエコノミーの発展に伴い、国境を越えるデータフリーフローの重要性が益々高まっている。これは、ベンダのみならず、ユーザである消費者にとっても同様である。プラットフォームビジネスに関する独占禁止法の適用が国ごとに異なると、グローバルビジネスを手掛ける企業にとっては事業の推進に影響が大きく、競争の促進が阻害され、ひいては人々の豊かな生活の実現にも影響が出てくることが懸念される。日米欧の競争当局が一堂に会する本シンポジウムを有効に活用し、競争法執行に係る国際協力の強化と法適用に係る国際的な収斂を期待する。

■講演:欧州委員会競争総局 Kris Dekeyser政策・戦略局長

プラットフォーマによって独占されているデジタルエコノミーは、欧州委員会競争総局(以下、「DGCOMP」と記載)にとって最優先課題である。DGCOMPは、デジタルエコノミーにおいて、データの取扱いおよびプラットフォーマによるスタートアップ企業の買収に注目している。
本年4月に「デジタル時代の競争政策」と題する報告書が公表された。同報告書では、デジタル・プラットフォームの主な特徴として、①規模の経済性、②ネットワーク効果、③データの役割、④先行者利益を挙げている。
また、同報告書では、現行の欧州競争法は、フレキシブルであるため、デジタルエコノミーにも対応可能であるとしつつも、概念、原則および方法論を更に洗練させることを要すると指摘している。また、市場画定より競争阻害性に重きを置くべきと指摘している。デジタル時代では、競争当局による執行の遅れが、従来の市場よりも長期間にわたって競争を阻害することになる。そのため、競争当局は、問題が大きくなった後に行動を起こすのではなく、早めに措置することが重要であると指摘している。
同報告書では、データのアクセス確保に係る法制の必要性についても指摘している。さらに、デジタル時代における競争政策が果たす役割の重要性を肯定しているが、他の法体制との一体的役割も有効としている。

■講演:米国連邦取引委員会 Daniel Francis競争局長補

米国連邦取引委員会(以下「FTC」と記載)は、デジタルエコノミーに対応するために、テクノロジー・タスクフォースという専門部署を設けた。当該部署は、既に完了した企業結合、届出基準を下回る企業結合、排除行為や共謀行為といった、デジタル企業が関わるあらゆる反競争的行為への対処を目的としている。
政策的な課題としては、プラットフォーム内の競争やプラットフォーム間の競争を如何に評価すべきかといった問題がある。また、データによるイノベーションが重要であるところ、データが競争上どのような役割を果たしているのかを検討する必要がある。さらに、プラットフォームによる多面的な事業活動において、どのように市場画定をすべきかどうかという論点もある。
今後、FTCはテクノロジー・タスクフォースを中心として積極的に執行活動に取り組む。また、公聴会(21世紀における競争および消費者保護に関するヒアリング)の結果を何らかの形で近いうちに公表することになる。加えて、デジタル企業が競争に与えている影響を把握するために市場調査を実施する可能性がある。

■講演:Microsoft Dick Rinkema アジア地域競争法・政策担当部長

競争への影響を検討するに当たって、データの種類を見ることが重要である。プラットフォームは、データの所有者でもあり、コントローラーでもある。Volunteered data(自発的に提供されるデータ)は、ユーザ自身のデータであるが、規制により移転が可能である。一方で、Observed data(監視データ)は、プラットフォームが運用される中で収集されるデータであり、プラットフォームの収益化のために、プラットフォーム自身により保持されるものである。
競争に影響を与える要因として、デジタル・プラットフォームでは、データを誰にでも収集・共有できるか、プラットフォームのマルチホームが許容されるか、データの収集・蓄積に関して透明性が高いかといった観点が挙げられる。また、伝統的なプラットフォームに関しては、データに関して相互運用性が高いか、オープンスタンダードが存在するかといった観点が挙げられる。
デジタル・プラットフォームに関しては、何らかの規制が必要である。プラットフォームに対する信頼性を確保することが、ユーザが安心して利用するために不可欠だからである。効果的な規制の存在が、信頼性を確保することに繋がる。

■講演:NERAエコノミックコンサルティング 石垣 浩晶 東京事務所代表

プラットフォームの存在自体が新たなビジネスチャンスの創出につながり、ユーザもより良質で新規性のあるサービスを享受できるという意味で社会的な価値向上に貢献している。
プラットフォームが良質なサービスを提供するためには情報が必要になってくる。その際に、何を検索したか、どこに行ったのか、何を購入したか等の個人情報の問題が生じる。個人情報保護の観点では、プラットフォーマによる個人情報の想定外利用やサイバーセキュリティの問題が発生してきている。したがって、国内においては独占禁止法や個人情報保護法でどのように対処するのかといった議論が生じている。市場シェアが大きいデジタル・プラットフォームが必ずしも競争阻害的というわけではない。
プラットフォーマがスタートアップ企業を買収することは、独占禁止法上の懸念が発生し得る。一方でスタートアップ企業のみでは、自らのサービスを市場に提供することができないが、大規模プレーヤに買収してもらい、その中でサービスを使ってもらうことでより、高い価値を提供できることもある。
プラットフォーマの行動自体が新たな価値創出を目指し、低廉で良質なサービスを提供する反面、競争者の排除や消費者に不利益を与えるといった競争制限的効果もあるため、このバランスをどのように判断し、競争政策を考えていくのかということが非常に難しい問題となっている。

■講演:公正取引委員会 菅久 修一 経済取引局長

イノベーションを阻害することなく、競争制限行為を排除し、デジタル・プラットフォーマの利用者の利益を確保し、経済の持続的な成長を実現することが公正取引委員会を含む各国・地域の競争当局が目指しているところである。
デジタル・プラットフォーマを巡る議論・検討は、本年6月に閣議決定された成長戦略を受けて、内閣官房に設置された「デジタル市場競争本部」において引き続き進められる。ここでは、主要な課題の一つとして、デジタル市場に特有に生じる取引慣行等の透明性と公正性確保のための法制である「デジタル・プラットフォーマ取引透明化法」(仮称)について、2020年の通常国会への提出を目指して、検討を進めることが予定されている。また、その他、個人情報保護法の見直しやデジタル広告市場の競争評価などについても検討が進められる。
公正取引委員会では、デジタル・プラットフォーマに関して、主として以下の4つの取り組みを進めている。第一は、独占禁止法に違反する行為に対して厳正かつ迅速に対応するということ。第二に、デジタル・プラットフォーマの取引慣行等に関する実態調査を行っている。第三に、消費者との関係における優越的地位の濫用規制の適用を検討している。第四は、データやイノベーションを考慮した企業結合審査について検討している。

最後に

日本が目指しているSociety 5.0の世界では、あらゆるものがインターネットを通して繋がり、データを共有することで、多くの人が積極的に価値創造に参画できる社会を目指しています。今後はデータから価値を生み出し新たなビジネスモデルが形成されてゆくことが予想されます。このような状況の中、プラットフォームビジネスに関する競争政策の在り方について、日米欧3極で議論できたことは非常に有意義であったと考えております。法務・知的財産部会では、今後もSociety 5.0の実現に向け、法的環境整備を通して貢献すべく活動を進めて参ります。